図書館本43冊目 『転がる珠玉のように』 ブレイディみかこ

ブレイディみかこさんの本は、図書館で見つけると迷わず借ります。

この本は、「婦人公論」2021年4月13日号~2024年3月号、他、に連載されたエッセーを収録したものです。
(一篇が4ページ程度のエッセー58篇と「あとがきにかえて」)

通勤電車で、一度に数篇サクサクと読めるので、電車に乗るのが楽しみでした。(仕事に行くのが楽しみになった訳ではありませんが…)

思いっきりコロナとかぶっている時期のエッセーは、英国でのロックダウン生活など、ニュースでは知っていたことがリアルに感じられ、あの頃の記憶が蘇りました。(コロナは、ほぼ全世界共通の経験、記憶になるのでしょうが、国によってかなり違ったものになるでしょうね。他国での話は興味深いです。)

3度目のコロナ感染で、ブレインフォグを経験されたり、病身の「連合い」が、コロナ感染で重篤な状態になるなど、深刻な状況についても書かれていますが、息子さんの学校の先生方との、ちょっと楽しいオンライン保護者面談や、福岡県在住の「おじいちゃん(親父さん)」と、英国在住の「孫(息子さん)」のオンラインでのやりとりの様子なども織り交ぜられており、読んでいる側が辛くなり過ぎることはありませんでした。

58篇もの、これぞ「珠玉」のエッセーはどれも興味深く、私の「これこれ、みかこさんのこういうのを読むのが好きっ!」が満載です。

心に留めておきたいと思った話のひとつは、

” 状況を前向きに捉えて自分を納得させているうち、その状況を前向きに捉えられない人々の声を抑えつける側に回っていることがある ”
というもの。
私も気を付けねば、と思いました。

他には、「迷惑」「コスパ」「タイパ」についてのエッセーもグサッと来ました。

日本では、「不都合への耐性が低いのではないか」
「迷惑にしても、費用にしても、時間にしても、人が生きている以上は ” かかる ” ものであり ” かける ” もの」それをかけないようにするのは「生の倹約」「ケチ」である、と。

”  労働者が時々ストライキを起こし、それによる不都合を「まあ、しゃーねえな」と人々が受け入れる。そんな社会の方がケチ(stingy)の反意語である寛容(generous)に近づくようにわたしには思われる  ”


深く感じ入る話が多いですが、日本語の音声入力を使ってみたらこんなことになったとか、息子さんがチャットGPTで母のことを質問したら自信たっぷりに嘘を並べ立ててきたとか、声出して笑っちゃう話も出てきます。

そして、「あとがきにかえて」には泣かされました。
(そこは家で読んで正解)

このようなエッセーが連載されていた「婦人公論」って、読んだことはないのですが、とても好感が持てますね。(この先、読むことがあるかどうかわかりませんが…)


#読書感想文

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