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江部航平
2024年5月26日 19:21
あなたは頭痛を訴えて仕事を休んだ。ひとまずの鎮痛薬で和らぐはずの痛みも引かず、あなたは寝台の上で熱を上げていた。念のため病院に行ったら? と提案してみたけれど、病院はいやだ、医者は嫌いだ、と子どもみたいなことをわめいて聞かない。シーツに皺が寄って、ずれた掛け布団が寝台からずれ落ちている。そんなこと言ってたら治るものも治らないわよ、変な病気だったらどうするの? と言ったらあなたは「もう寝る」とうず
2024年5月26日 13:36
実家では臆面もなく放屁できて、それでひと笑い起こせたり、近所の田んぼの中にある墓石がぽつんと建っている景色とか、その周辺の田んぼに波打つ泥の轍とか、雨風に晒されたせいで褪せた〈川で遊ぶと危ないよ〉の看板とか、七年前から変わらない風情に現在の自分の抱えたしがらみや鬱屈を二重写しにして眺めてみた。その映像は今でも変わらない風景の中に溶け込めず、圧迫するような形のない焦りがちくちくと内臓をつつき回す。
2024年5月5日 10:22
酩酊を崩す音に意識が連れ戻される。はやし立てられるように、まどろみの意識は携帯のアラームに揺れた。部屋に差し込む光の色は、0.2グラムの青を含んだ透明な空気に満たされていて、その光の源を目で追おうとして半開きになったカーテンに目がいく。寝起きの頭で寝返りを打った。 背中の重さに押しつぶされるように、一対の羽がシーツと背中に挟まれて存在感を示す。他のこびとはこんなこと気にしないでも良いんだろうな