その感覚を超えてその場にいる
なんということだろう。はじめてのことかもしれない。
わたしは、とある本に出会った。
「これ、上・下あってちょっと長いんだけど、文字も少し大きめで読みやすかったから読んでみる?それにおもしろかった〜」
彼女の眉と目尻が下がり、本当におもしろかったんだということが伝わってくる。
そういわれて借りた本がある。
タイトルを見ても表紙を見てもあまりピンとこなかったのだが、おすすめされたなら読んでみたいと単純な気持ちで手に取った。
まさかそれがヒントになるとも知らずに。
読みはじめてすぐ、
「う〜ん、あんまり好みじゃないかも?」的なことを思った気がする。
入り込めないかも、と思いつつ、数ページをめくったあたりで気づけばわたしは物語に吸い込まれたかのように読んでいた。
どんどんおもしろくなる。夢中になり、むさぼるように上を読み終え、すぐに下を手にする。
なんなんだ?この本。
読んでる途中で本を閉じると、なにか麻薬のような中毒性のあるような、読みはじめると物語の世界にどっぷりハマり、現実世界に戻ったとき、いまわたしはどこにいる?ここはどこ?とハッとなってしまう。
本を読んでる、というよりは、映画を観ているような実際にその場にいるような錯覚を起こす。
だからハッ!となって、ここはどこ?わたしはだれ?的な、まるで記憶障害にでもなったかのような気分になるのだ。
近いイメージとしては、映画の「ネバーエンディングストーリー」である。
古い映画だが、子どものころ好きで何度も観た映画だ。映画で流れる音楽も、いまでも覚えている。
まさにそんな感じ。主人公の男の子が、読んでいる本の物語に入っていってその世界のできごとを実際に体験していく。そんな感覚に近い。
たしかに読みはじめは文字を目で追っている。だが次第に映画を観てるように映像が脳内で生みだされ、その感覚を超えてその場にいるのだ。
だからハッ!なった瞬間、わたしはどこにいるのだ?の感覚になる。
頭の中なのか、はたまた本当にその場にいたのではないか?と一瞬でも迷うぐらい、ありありとリアルにその映像が鮮明によみがえるのだ。
後半になると音まで聞こえてるような実際に風や嵐に巻き込まれて、足を前に一歩踏みだすのも難しいような、体が硬直するような体感覚さえ味わう。
下も読み終えてすぐわたしは胸の奥がカーッと熱くなり、我慢できず思わず泣いてしまっていた。
あたたかい気持ちが胸いっぱいに広がり、止められなかった。
感情のまま泣いていると、徐々に落ち着き冷静になって思った。
なんということだろう。はじめてのことかもしれない、と。本を読んで泣いたことがあっただろうか?
ここまでありありと体感した気になる本って、読んだことあっただろうか?
もしかすると記憶にないぐらいずっと昔にあったのかもしれない。でも、ここ十数年ではない。物語を読んでココロ動かされ、胸がどうしようもなく熱くなり泣いたことなんて。
そして昨日の記事を思い出す。
まさにシンクロしてるではないか!
読み手のココロを動かしたいと思った。わたしはこの本を読んでココロを動かされた。不思議、というよりは、きっと自分でそれを引き寄せたのだ。
この本をヒントに、これからわたしの記事が変わっていくのかもしれない。たぶん。笑