先生『なぜ、生徒はわかってくれないのだろうか?』生徒『なぜ、先生はわかろうとしないのだろうか?』〜大人脳と子ども脳の違いと教育〜
若い先生の悩みを聞いていると、先生自身の経験や自分の考え方がいつも中心になっているように思えることが多い。子どもの立場で考えることが不足しているように感じる。
退職直前の教師から、『若い先生へ伝えたいこと』
「子ども脳」の特徴を理解すると、子どもとのコミュニケーションが激変する‼️
教師はどれくらい「大人脳」と「子ども脳」の違いを意識して指導しているのだろうか?
「大人脳」と「子ども脳」の違いと、脳の変化期である「思春期」
大人脳と子ども脳は、機能が違う。ミッションが違うのだ。
👧子ども脳は「世の中のありよう」を「感じる」ために機能している。いわば入力装置。
👨大人脳は、効率よく成果を出すために機能している。こちらは、出力装置。
脳の変化期である中学生は、人生の他のどの3年とも違う3年間を過ごす。それが思春期、中学生たちの脳の真実なのである。
今回は、人工知能研究者「黒川伊保子」さんの著書『思春期のトリセツ』、YouTubeを参考にしています。
子ども脳は「感性まるごと」記憶する
子どもたちの脳は、何かを記憶する時、五感から入ってきた感性情報を付帯して保持する「感性記憶」である。感性情報は、これ以降の人生の発想力の源になる。
こういう感性は、体験でしか手に入らない。そして、こういう感性こそが、「他者にはできない、その人だけの何か」を創り出していくのである。12歳までの脳は、感性記憶力の全盛期である。
子ども脳の欠点
感性記憶は、発想のための持ちネタにはいいが、「とっさの判断を的確にこなす」には向いていない。また、一つ一つの記憶の違いが鮮明すぎて抽象化しにくく、まとまったデータ群になりにくいので、網羅検索がしにくいという難点もある。
日々の暮らしをちゃっちゃとこなさなければならない大人たちの脳が、感性記憶だけで構成されていては心もとない。子ども脳は大人脳へと変容を遂げる必要があるのだ。
大人脳は「とっさの勘」が働く
大人脳の特徴は、「差分記憶」である。大人脳は、まずは、とっさに類似記憶を取り出して、状況判断を試みる。そして、すばやく「類似事象との差分」を見抜いて、その差分だけを記憶していくのである。不測の事態に遭遇しながら生きていく大人たちに、絶対不可欠なセンスである。合理的で要領も良くなる。
大人脳は決めつけが激しい
脳は年齢を重ねるごとに、決めつけが激しくなっていく。40代にもなれば、「ああ、これって〇〇だね」というセリフが俄然増えてくる。
脳なんて、「これって〇〇じゃん」って言ってしまった瞬間に、デリケートな感性情報を切り落としてしまう。年齢を重ねると、どうしたって、無邪気に喜べることが減ってくる。
若者は、大人の決めつけやウンチクにうんざりする!
大人脳の「決めつけ」は、30代になると顕著になってくる。やがて50の声を聞くようになると、「差分」を語りたくなるウンチク期に突入する。
つまり、思春期の子を持つ親たちや教師は決めつけ期からウンチク期のはざまにあって、思春期の脳とは、相性が最悪と言っていい。
入力期にある若者たちの脳は、「体験」をそのまま味わう能力が高く、今の「体験」にひたすら集中したい。そんな脳に「それって、〇〇だよな」と決めつけるのは最悪だ。せっかくの「一期一会の体験」が、「よくある、つまんないことの一つ」に分類されてしまう。形骸的な、記号論的な言葉でくくられることにより。
さらに、「ここが違うんだよね。一流って言うのは・・・」みたいなウンチクは、集中力を妨げる、不快な雑音に過ぎないのである。
本当に「大人はわかっていない」のである
子ども脳は、大人には見えない多くの感性情報を感知している。このため、大人が「〇〇だ」と決めつけた途端に、大人に見えていないものに気づいて、絶望するのである。
「大人はわかっていない」世界中の子どもたちが口にするこの言葉の意味を、誰もが大人になると忘れてしまう。脳は変化してしまうと、元の脳のことをすっかり忘れてしまう。
思春期の脳は、誤作動する‼️
脳の変化は、まずハードウェアの方からやってくる。12歳を過ぎると、自然に抽象概念が扱えるようになる。しかし、脳の中の大半の記憶は、子ども脳である。
つまり、ハードウェアはバージョンアップしたものの、ソフトウェアがまだ旧バージョン、ファイルの大半がハードウェアと整合性が悪い、という状態なのだ。
当然、脳は誤作動する。
脳の機能に着目して、生徒たちとの人間関係を見直すことにより、悩みを解決するヒントに気づくことができるのではないでしょうか。
また、年齢差のある教師集団がうまく機能していない時は、教師の脳の機能の違いが原因になっている可能性もあります。