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毒にも薬にもならぬのもいいけども

昨今のドラマって、毒にも薬にもならぬものが多いなと思う…一方で、とても攻めた内容の、トレンディードラマ時代には決して生まれ得ぬ骨太の作品が発表されることもあるので、目が離せません。

何度でも取り上げますが、「逃げるは恥だが役に立つ」というドラマは、一見よくあるラブコメのように思いきや、日常に潜むワナや呪いを解く鍵を与えてくれる良質な作品のファーストペンギンだった、ように思います。

「一見よくあるラブコメ」感が強過ぎて、わたし、リアル視聴しそびれましたもの。
話題になって、その年末か年始に一挙放送されて初めて見たのですもの。

大枠としては、互いの利害一致の為に生活を共にした男女が徐々に惹かれ合う…という、ラブコメの王道とも言える流れであるのに、働くということ、年齢を重ねること、そして結婚について、これほどまでに心から腹落ちするドラマは、ついぞ存在しませんでした(わたしの知る限りは)。

ただ、それまで雇用関係を結んでいたからこそ発生していた家事代行の給金が、婚姻関係を結ぶと当然の如く不払いになることについて主人公であるみくりが「それは…好きの搾取です!」と叫んだことが「あざとい」「性格悪い」などと批判されたことも記憶に新しく、ああ、そういう風に思う人もいるのだなと、いや、王道ラブコメファンにとってはこちらの方が多数派かもしれないなと感じ入ったものです。

紆余曲折を経てせっかく結ばれようとしているのに、余計とも言える雑音を自ら発するというのは確かに、今までの「聞き分けのよい」「かわいい」「前向きな」ヒロインは選ばない行為ですからね。

このような、視聴者からの批判を限りなく排除していった結果が、よくある「毒にも薬にもならぬ」ラブコメなのでしょう。

ドラマに限らず、小説も映画も、そしてnoteも「これ、今さら見せられて、わたしは何を感じればいいの?」という当たり障りのない、何の発見も学びもない、優しい、緩やかな、平和な、ぼんやりした、ふんわりした、主張のない、棘もない、どこかで見聞きしたような、可もなく不可もないものが散見されます(失礼)。

しかもそういうものが割とウケがいいというか、案外多くの支持を得ているのですよね。

まぁ、分かりますけれども。

ただでさえ刺激的な毎日を生きているのだから、物語くらいは優しい世界を見たいじゃないの、という気持ちは。
わたしもそんなnote書いてますし。

でもわたしは、作り手の生傷が見え隠れするような、作者の矜持や鋭い視線を感じる、激烈な毒が強い薬効をも併せ持つような、一か八かドラマも見たい。

そういうものが、排除されずに残る世界であってほしいと願います。

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