無理に笑わない、ということ
笑っているキャラクターが苦手です。
なんでかな。
無理してる感じがするから、でしょうか。
昔々、就職活動をしているとき、面接に呼ばれてその旅行会社を訪れたのです。
今思えば、人見知りで人との接触を極力減らして生活したいという望みを持っているわたしが何故旅行会社?という話ですが、その頃は「わたしは接客が得意」と認識していたのであり、実際「元気で明るく積極的な人」に擬態することは今も気合を入れれば出来るわけですが、なにせ擬態なので、界王拳くらい体力を使ってヘトヘトになります。
だから今はなるべく本来の姿である「対面や電話で依頼されたことをメールやチャットで返す陰気なおばさん」として生きています。
楽。やっぱりずっと界王拳なんてしてられないわ。仙豆をくれ。
で、若き日のわたしは面接に臨んだのですよ。もう懸命に張り切って。
その旅行会社は、面接をするのに別室を用意したりはしない主義のようで、同じフロアで現職の皆さまが働いている脇のちょっとしたスペースに、大学生のわたしは通されました。
その段階で結構面食らっていたのですが(だって社会人がオフィスで働いてるの、ドラマ以外で初めて見たし)わたしがフロアに足を踏み入れた途端、そこで働いている人たちが一斉に立ち上がって「こんにちは!」ととびきりの笑顔で迎えてくれたとき「あ、無理だ」と思いました。
具体的に何を話したのかは覚えていませんが、たぶん通り一遍のことを言い「御社が第一志望です」といけしゃあしゃあとホラを吹き(それだけ覚えているのは「嘘をついている」という罪悪感からでしょうか)「ここは無いな」と思いながら帰路につきました。
翌日、不採用通知が届きました。
うん。
ねるとんで言うと完全にカップル不成立だったわけで、ねるとんで言わなくても双方から見てNGだったわけですね。
人間関係において「双方NG」の場合は何も問題が起きません。
お互い興味無いわけですから、ただひっそりと遠ざかっていくだけです。
問題なのは、AがBを好きなのに、BはAを嫌い、みたいな場合ですよね。更に厄介なのはBはAを嫌いだけど、立場上「近づくんじゃねえ、それ以上近付いたら東京湾沈めんぞコラ」と言えないから「もう、やめてくださいよー」と笑顔で言うに留めていることから、AはBが自分のことが嫌いであることに気付けず、それどころか「イケる」などと思いこんでサシ飲みに誘ったりしてしまうパターンですよね。
だから「東京湾沈めんぞコラ」まで言えなくても、せめて「わたし、ドン引きしてますよ」という表情くらいはしていっていい、というか「無理に笑う」ということをやめていく、感じたそのままの表情でいることが、お互いの為に結局よいことなのかもしれない、と思うのです。
しかしあの旅行会社の面接官は「この学生、無理して笑ってんな。バレてるよ。」と思ってたんだろうな。