あんな言い方、するんじゃなかった
大人になると日常生活であまり怒られなくなるので、久しぶりにこっぴどく注意されたら結構しょんぼりした、という話を書きました。
同じ内容を伝えるにしても、何もそんな言い方をしなくてもいいのに、と思いました。
でも、わたしもまた「そんな言い方」をしたことがあるのを思い出したので、今日はそんな話を書こうと思います。
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以前、エステの体験コースを予約するコールセンターで勤めていた頃のことです。
当時は、未成年者が体験予約をする場合、保護者の同意が必要でした(今は知らない)。
でも、親御さんに電話口に出て貰うのが恥ずかしい、もしくは面倒だと思ったのでしょう。
同年代の友だちに保護者の振りをしてもらおうとする若人が後を絶ちませんでした。
「はぁい、代わりましたー。母親ですぅ。」
…いや、嘘でしょ。
こちらは毎日毎日同じような会話を繰り返しているオペレーターです。
声と口調で大体の察しはつきます。
ただ、相手は弊社のエステに興味を持って下さったお客様(になるかもしれないお若い方)。
思ったまま「嘘でしょ」とは言えません。
「ご予約者様のお母さまでいらっしゃいますか」
「いくつか簡単な質問をさせていただきます」
「恐れ入りますが、お母さまの生年月日を
ご教示願えますでしょうか」
「昭和何年でしょうか」
「失礼ですが、ご年齢はおいくつですか」
「干支は…」
などと、詰め寄るのです。
(手元に用意してある「年齢・干支早見表」と引き比べつつ)
大体のお若い方々は質問に答えられず
「…ごめんなさい、母親じゃないです」とか
「あの…もういいです」とか
「…(ガチャ)」とか
諦めるのですが、たまにしぶとく何度もチャレンジしてくる未成年者もいました。
彼らは恐らく18~19歳(=当時は未成年)。
わたしだって25歳くらいでしたから、そこまで歳は離れていません。
大人の、プロのオペレーターとしてお客様に接する以上、出来る限り穏やかな口調を保つよう心掛けてはいても、心中はOGから見た後輩の現役生のように思える彼らに対して「オイこら調子乗ってんじゃねーぞ、分かってんだよ」くらいのことを思っているわけです。
そういう気持ちというのは、いくら慇懃な言葉遣いをしても漏れ出てしまうもの。
「自称お母さん」をあの手この手で追い詰めて追い込んで、ようやく「…もういいです」という敗北宣言を聞いたときのわたしは「化けの皮を剥がしてやった!」と、さぞ卑しい顔をしていたことでしょう。
「同じ内容を伝えるにしても、そんな言い方をしなくてもいいのに」という言い方を、わたしもまた、確かにしていました。
こちらは同じ説明を今までに2億回繰り返して、いい加減うんざりしていても、相手は初めてのエステに心ときめいているかもしれないという想像力が足りていませんでした。
もっと落ち着いて冷静に、未成年者が保護者の同意なく予約をし、後で万が一何かトラブルが起きたときのお互いのリスクについて伝える方法はいくらでもあった筈です。
あの頃のお若い方々も、今は30を越えた頃合いでしょうか。
悪いことしたな、と思い起こす今日この頃です。