「このまちには何もない」と言う子どもたち
学生時代からの研究テーマ「地域への愛着」。
どのような要素があれば、学校教育の実践の中で子供達に「地域への愛着」が育めるのか考えていました。
教育現場で働く中で、「自分のまちは何もない」「地域の良さはない」という子供達をたくさん見てきました。どうすればこの子たちに、「地域を好き」と素直に言ってもらえるようになるのか。
ようやく実感として見つけた必要な要素がありました。
一つは「地域での経験」です。総合的な学習の時間でよく行われる地域を知るための地域学習などが、それにあたります。地域の産業に社会見学に行ったり、出前授業を行ってもらったりします。
このような経験は、大体の学校で設定されていると思います。十分な地域での経験が前提として必要です。
もちろんこのような活動だけでは、地域への愛着は育まれません。
もう一つが、「多様な地域の人とのつながり」です。総合的な学習の時間が充実している学校や十分に地域の良さを体験活動を通して行っている学校の子供ですら、「自分のまちには何もない」と言っていました。そこに足りなかったのは、「人とのつながり」だと思いました。
大型ショッピングモールやチェーン店など、お金を出せば手に入るものがある都会が「何でもあるまち」だとすれば、確かに田舎と呼ばれる地域は「何もないまち」でしょう。
ただ、「豊かさ」というのはお金だけではないはずです。
地域で頑張っているたくさんの大人と関わることで、つながりが生まれます。よい人間関係が人間の幸せ度に影響を与え、結果的に「このまちにいてよかった」「地域の人みたいになりたい」「地域のために何かしたい」と前向きな気持ちが醸成されるのではないでしょうか。
だからこそ、学校と地域がつながり、協働していくことが必要です。
教員として、このような経験、つながりを、体験格差のでない全員が受けることができる学校という場で作っていきたいと思っています。