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覚醒剤と自殺

 一般的に、覚醒剤を使う目的は快楽のためと思われがちです。しかし、「覚醒剤とうつ病」でも書いたように、実際には精神的な不安を紛らわせるために使っている人もかなり多いです。後者の人々にとって、薬物と同時に生きる上でもう一つ大きなテーマとなるのが「自殺」。
 ポン吉は自助グループに繫がっていますが、実感として薬物依存症の仲間には若くして亡くなる人が多いと感じています。原因は、①オーバードーズ、②事故(リアム・ペインの事例などを含む)、③自殺、です。ポン吉の実感としては①<②<③の順で数が増えていく印象です。今回はとくに覚醒剤と自殺の関係について書いてみたいと思います。

■薬物依存症と自殺

 前提として、多くの臨床研究の結果、薬物依存症(医学用語では「物質使用障害」)は、自殺既遂者が自殺の直前に罹患していた精神障害として、うつ病についで多く見られるということが知られています。
 さらに、国立精神・神経医療研究センターの研究班の調査によると、薬物依存症者はアルコール依存症者に比べて、自殺企図や自殺念慮の経験者が有意に多かったそうです。また論文では、薬物依存症における危険因子は年齢・性別・うつ病の有無(男性は若い方が危険)と結論付けられています。

■自殺企図の経緯

 ポン吉自身もうつ病(双極性障害)持ちで、かつ覚醒剤の依存症を患っています。そして自殺企図の経験者でもあります。「覚醒剤とうつ病」でも書きましたが、ポン吉が最後に覚醒剤を再使用した原因はうつ病の悪化でした。不眠や食欲不振から始まり、何をしても楽しくない、この世から消えてしまいたい、自分がいない方が世の中はうまく回るはずだ、そんな気持ちでいっぱいでした。
 ポン吉は、たとえどんな背景があっても、違法薬物を使うことは許されないと考えています。ですが、死がすぐ手の届く距離にある状態の人間にとって、法律と命どちらが大事なのかと問われれば、後者と答えてしまう人も中にはいるでしょう。1日数十回も「死のうか」「生きるべきか」と逡巡している人間にとって、残念ながら法律の問題は遠く霞んで見えてしまうのです。目の前のうつからラクになるために、ポン吉は死に物狂いで覚醒剤を摂取しました。
 その結果は劇的なものでした。鉛のようだった体が軽くなり、頭の中もクリアになる。現実の悩みもいっとき忘れます。
 そして同時にこうも思いました。「今なら死ねる」。覚醒剤を摂取することで衝動性が増し、自己破壊的行動への抑制が解除される感覚でした。普段は勇気がなくてためらっていた自殺を、使っているときは実行する気力が湧いてくるのです。気付けばAmazonで縊首用の紐を検索し、注文していました。幸いにも、紐が届いたときには自殺衝動は少し収まっていましたが、いま振り返ると、あそこで踏みとどまったのはたまたまだったと思います。もしあのとき手元に適当な紐があったならば、きっともうポン吉はこの世に居なかったでしょう。

■覚醒剤と自殺

 ポン吉の周囲のアディクト仲間には、市販薬・処方薬の人が少なく、覚醒剤経験者が多いです。彼らの話を聞いて見ると、やはりうつ病持ちのアディクトは一度は自殺を考えたことがある人が多いようです。
 うつ病による希死念慮に加え、覚醒剤の使用による衝動性の組み合わせ、これがまさに「一直線に死へと繫がる危険なレール」なのだと思います。

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