救える命/防げる自殺〜後悔しないためにも声かけを
こんにちは、精神科医のはぐりんです。
この話題に触れる際、どういった形でお伝えするのがいいのかとても悩みましたが、少しでも自殺で亡くなる方が減ってほしいとの思いで書くことにしました。
ただセンシティブな内容にはなりますので、今現在精神科治療を受けられていて調子の悪い方は、閲覧をお控えください。
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日本における自殺の問題、特に若年者の自殺率は深刻です。他国と比べても日本は高い水準で推移しています。その他細かな統計データについてはインターネット等にも出ているので今回は触れません。
自殺予防に関して、私たち医療者が希死念慮を疑った際には、はっきりとその有無を聞いた方が良い、と言われています。「死んでしまいたいと思っていませんか?」「変な気を起こしそうになったり、困ったことがあったらいつでも相談してくださいね」といった具合にはっきりと希死念慮について触れ、その有無を確認します。
一般の方の場合は関係上そこまで直接的には聞けないにしても、もし自分の身の回りで自殺を思わせるような言葉や行動が見られた場合にのみ、「ひょっとして死んじゃいたいなんて思っていない?」と怖がらずに声を掛けてあげてください。そしてもしそうであれば地域の保健所なり精神科病院へつなげてほしいです。(福岡県南筑後保健福祉環境事務所、ゲートキーパー養成テキストより引用)
また希死念慮を抱いている方は決して死にたいばかりではなく、死にたいほどつらい状態にあるので、何か辛いことに対するサインが出ていた場合、寄り添って直接悩みを聞いてあげてください。
私も約10年精神科医として働いていますが、これまでに担当していた患者さんで残念ながら自殺で亡くなられた方は何人かいます。ある日突然海に飛び込まれた統合失調症の方、やはり高所から転落されたガン末期状態の方、自宅で縊首されたうつ病の方、ASDの不安焦燥状態の方、自殺ではないのですが訪問しても受診を執拗に拒みそのまま餓死された方(統合失調症)もいました。
振り返ってみると、うつ病、統合失調症、体の病気の悩みを抱えている方なので、一般的に自殺する可能性が高いと言われている方たちです。あとここに挙がっていない疾患で多いのはアルコールや薬物依存症の方です。
中々予測できず防ぎきれないというのが実際ですが、そうもばかりも言っていられません。他に今日強調したい防ぐことができる自殺としては、薬の副作用による自殺です。
特に抗うつ薬と抗精神病薬(統合失調症の薬)、この2種類の薬の副作用にアカシジア(静座不能、内的不穏)や不安・焦燥状態(賦活症候群)があります。
ソワソワして落ち着かず、その場に居られないほどのキツさがあり、そのまま高所から飛び降りたという方もいます。この場合、薬の副作用が原因なので、薬をやめれば症状は落ち着くのです。
おわりに、今回一番お伝えしたかったことは、何かおかしいなと思ったら声をかけてほしいということです。90%の方は自殺時点で何らかの精神疾患に罹っている(うつ病や適応障害など)と言われています。裏を返せばなんらかのサインが出ているということ。些細なことでもいいので、周囲の人に関して何か気づいたことがあったら声をかけてあげてほしいです。