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なぜPTSD当事者へ非難が絶えないのか

ご訪問ありがとうございます。

今回は最近耳目を集めているニュースから。
PTSDとは何なのか、そしてなぜ当事者が非難を浴びるような事態になるのか、思ったことを書いてみたいと思います。

PTSD当事者に投げかけられる心無い言葉

まず最近世間を騒がせているニュースについて。

前提として核心部分がよくわかっておらず、実際に何が起こったのか、誰が被害者なのか、詳細は分かっておりません

ただ事実として元フジテレビアナウンサーの渡邊渚さんが、自身でPTSDに罹患されたことを公表されています。

SNS上では彼女に対して共感・応援する声がある一方で、心無い言葉が数多く投げかけられています。

その中でも特に多いのが、「PTSDからこんなに早く回復するはずがない」「本当にPTSDなの?」というものです。

そもそもPTSDとは

PTSD:Post Traumatic Stress Diorder、和訳すると心的外傷後ストレス障害と呼ばれています。

心的外傷とは、交通事故や災害、テロや戦争、暴力や性暴力などを目の当たりにしたり直接経験したりすることを言います。

主な症状は、
・そのことがフラッシュバックする
・常に神経が張り詰めているような過覚醒状態
・そういった状況や場所を回避する
・「誰も信用できない」など周囲に対して否定的な信念を抱き、そのことで孤立したり情緒が欠けてしまう認知の陰性変化

おもに4つの症状が挙げられます(比較的覚えやすい)。

PTSDからの早期回復は十分にあり得る

「PTSDからこんなに早く回復するはずがない」という言葉に対して、結論から言うと「数か月で回復することもあり得る」と言えます。

PTSDが長引くか否か回復するか否かは、
トラウマの内容と、受け手側のリソース、主にこの2点が決めると言えます。

まずトラウマの内容について。一般的にトラウマには、単回性トラウマという概念と、複雑性PTSDという概念があります。

単回性トラウマは文字通り、1回のみのトラウマ、交通事故や性的被害、愛する人の突然の死などです。

対して複雑性PTSDは長年にわたって繰り返し被害を受けてきたもの。

例えば、実父などから繰り返し(性的)暴力を受けてきた方が、その後多重人格障害になってしまったり、過覚醒状態で常に神経が張り詰め眠れなくなったり、中には幻覚を見てしまうような方もいます。

当然複雑性PTSDは単回性のPTSDに比べて治りにくく、影響は長期に及びます。

対して単回性のトラウマであれば、適切な治療を受けて早期に改善する方も多いと言われています。

早期回復のためのリソースとは

もう一つ、PTSDの予後を左右する因子として、受け手側のリソースがあります。

resource、つまり個人がストレスや困難に立ち向かうために備えている資源を指します。

リソースには内的リソースと外的リソースとがあります。

内的リソースとは、その人が持つレジリエンス、つまり困難を乗り越える強さであったり、問題解決能力や価値観・信念が挙がります。

外的リソースは、家族や友人のサポート、金銭的な余裕などを言います。

まとめると、外傷体験の内容や受け手側のリソース、それら次第でPTSDからの早期の回復(つまり社会復帰やそれに準じた状態)ということも十分にあり得ます

一方で「早期回復」「PTSDが治った」というのを鵜呑みにしてはいけない部分もあります。渡邊渚さんの場合にしても、必ずしもクリアカットにPTSDの症状がなくなったとは限りません。

詳細は控えますが(そもそも私は知りえませんが)、彼女の言動や活動を見ていると、先ほど述べたような4つの症状が見え隠れしているようにも思えます。

「相手を許せない」「相手を見返してやろう」という思いから生まれる言動も、たとえそれがどんな言動であろうと「未だに外傷体験の影響を受けている」と個人的には思います(ex.毒親を見返してやろうと思った末に自分で決断した言動も、実は毒親の影響を受けている)。

PTSDへの理解が広まらないのはなぜか?

「PTSDからそんなに早期に回復するはずがない」
「回復をアピールして写真集を出すなんて承認欲求が強すぎる」、「PTSDは誤診なのでは」

こういった言葉が投げかけられたり、(私からするとPTSDに対する)誤解が生じているのは何故なのか。

その一因に、これだけ世間を騒がせているニュースにも関わらず、PTSDの専門家のコメントがまるで出てこないことも挙げられると思います。

現状、渡邊渚さん一人が矢面に立ち、PTSDというものがどういったものなのかを説いて回り、同じような被害に遭っている方の励みになりたいと奮闘し、結果非難やセカンドレイプとも言える被害を受けているのです。

PTSDの専門家が声を上げない理由には、扱う内容が極めて秘匿性が高いなど、色々な理由があるのかもしれませんが、

結果的にPTSDに対する理解が一般の方に浸透していない現状が露呈してしまっているように思えます。

おわりに

今回は、PTSDとはどういったものなのか、そしてPTSDを取り巻く現状と、なぜ当事者が非難を浴びてしまうのか、という視点で書かせていただきました。

PTSDへの理解が少しでも広まり、当事者やその家族がいわれのない批判を受けることが少なくなればと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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