失感情症って多分こういうこと〜ASDとの関連も〜
ご訪問ありがとうございます。
今回は「失感情症」について書いてみたいと思います。
私自身もよく分かっていないのかもしれませんが、
その分読者の皆さまと同じ目線に立ってお伝えできればと思います。
失感情症〜アレキシサイミアとは〜
失感情症、別名「アレキシサイミア」のほうが馴染みがあるかもしれません。
実に10人に1人はこの失感情症と呼ばれる状態とも言われており、決して他人事ではありません。
まず失感情症を分かりにくくしているのが、
その名称にあります。文字通りに解釈すると、
感情を失う、となりますがこれが大間違いです。
失感情症は、
自分の感情に気づいたり認知することが苦手で、
そのため自分の感情を言葉で表現することが苦手、
なことを指します。
ですので、決して感情を失っているわけでも感情が無いわけでもなく、
繰り返しになりますが失感情症とは自分の感情に
気づくことができていないことを指します。
自分の感情に気づく、という当たり前のようなことが、実は当たり前のことではないのです。
ある出来事に対して囚われすぎると、そのことに対して内省したり意味付けしたりすることができず、
自分の感情に気づいたり表現したりすることができないのです。
教授が指摘したアレキシサイミア
私が精神科医として駆け出しの頃、とある摂食障害(拒食症)の子を担当しました。
その子は普段はニコニコとしていて、学校でも運動部のマネージャーをしているような子だったのですが、拒食症が原因で入院になってしまいました。
もう随分前の話にはなるのですが、この子に対して
教授が指摘した一言を今でもよく覚えています。
「この子はアレキシサイミアだよ」
その当時の私にはあまりピンと来ませんでしたが、今振り返ると家庭や学校で自分の感情に気づくことができず、それを表現することもできず、
心の中に溜まった感情が、拒食症という形で表出されていたのだと思います。
ASDとアレキシサイミア
こちらも女子学生のケース。たびたび学校内外で
問題行動を起こしているような子なのですが、
外来に来てもそっぽを向き、一言二言ボソッと話すのみ。これでは文字どおり話にならないと思い、
次の外来日までに日記をつけてきてもらうようお願いしました。
すると次の外来で見させてもらった日記には、
その日にあった出来事や自身の感じたことを
紙一杯にビッシリと書き記してきたのです。
「話している自分が他人からどう思われているのか気になる」といった思春期ならではの悩みなどが
たくさん吐露されており、
普段ほとんど話さないような子が、ここまで色々なことを考えていたのかと、とても驚かされました。
この子にはASD特性があるのですが、
ASDの方も決して感情に乏しいわけではなく、
それを正確に把握したり表現することができずに
モヤモヤと溜め込んでいるのです。
またASDの方の場合、アレキシサイミアだけが原因ではなく、
社交不安や感覚過敏など様々な要素が絡み合っている(相互に作用している)ものと思われます。
感情の種類と自身の感情を把握する
人間の感情には、喜びや悲しみ、驚きや怒りなどの
6-8つ(諸説あり)の基本感情に加えて、
それらの強弱、さらには組み合わせ(喜び+驚き=感動など)によって数十種類にも及びます。
プルチックの感情の輪という概念が分かりやすいので、ご興味のある方は調べてみて下さい。
今回ご紹介した摂食障害やASDだけでなく、
アレキシサイミアが頭痛や胃腸症状、喘息といった体の症状や、
なんとなく怠いといった症状さえも、もしかするとアレキシサイミアが原因かもしれません。
自分自身の内面を見直し、その時その時に感じている感情を表現してみることが大事なことかもしれません。
「私は大丈夫」と思っているような方でも、
案外自身の感情に気づけていなかったりします。
最後までお読みいただきありがとうございました。