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黄色い壁 ーたどりつく者ー
トンネルのようになっている
黄色い壁の向こうに
あなたの家の扉が見える
遠いね
遠いよ
遠いな
見えているのにね
遠いね
遠いよ
遠いな
男が1人横道に逸れていく
あなたにたどりつかない
永遠にたどりつかない者
黄色い壁はわたしの横を
囲んでいる
あなたの家に向かうわたしの横を
囲んでいる
日向に立つあなたの家へと導く
なぜ?
なぜあなたは日向にいるの?
黄色い壁の作る日陰の中
あなたを目指すわたし
誰から見ても
あなたは人より優れているでしょう
でもね、わたしはあなたが嫌い
たぶん、その笑顔が本物じゃないから
こっちを、向かないで
あなたは人より正しいのでしょう
でもね、そう思っているのは
たぶん、あなただけだから
少し、待っていて
黄色い壁が導いてくれる
あなたの家に向かうわたしを
真っ直ぐに導いてくれる
(昨夜研いで、鞄に忍ばせたナイフで)
黄色い壁が導いてくれる
あなたの家に向かうわたしを
真っ直ぐに導いてくれる
(ぼろ切れのように、引き裂いてあげる)
トンネルのようになっている
黄色い壁の向こうに
あなたの家の扉が見える
近いね
近いよ
近いな
トンネルの出口まで
近いね
近いよ
近いな
ドアノブに手が届いた
そうだね
そうだよ
そうだな
あなたは
偽りの笑顔を、浮かべる
そうだね
そうだよ
そうだな
(鞄の中で柄を、握って)
わたしもまた
偽りの笑顔を、浮かべる
そうだね
そうだよ
そうだな
(醜いね、醜いよ、醜いな)
黄色い壁が、
あざ笑う、
この干からびた、
死神の飼う窮鼠の如き愚かな者と、
ーと、ある、
晩秋の。