夢の話②
夢を見た。
幸せな夢だったから、いつまでも見続けていたかったのに、いいところで目が覚めた。
夢の中で私は、お見合いをしていた。
大して若そうでもない私と、今よりも少し若い母と、大して若くもない男性と、その母親らしい人が、障子の引き戸のある個室の炬燵を囲んで座っていた。
「やっぱり、いい年になって独り身で、具合が悪くなった時に助けてくれる人がいないと心寂しいじゃないの。やっぱりお相手は医師に限るわよ」と高揚して大声で話す母。
お相手は、日焼けをした顔で、胡麻塩頭の少しカーリーヘアで、黒と蛍光緑の横縞のセーターを着て微笑んでいる。
私は「うん、そうだね、そうかもしれないね」と素直にうなずいている。
(どうやら、その男性の外見が好みらしい私)
その後も母はべらべらと何かをまくしたて、不意に帰路のシーンに移る。
これは夢なのか、私の頭が作り上げたショートムービーなのか?
「ねぇ、どうなの?よさそうな人じゃない?あなたも今まで一人で好きに生きてきたのだから、そろそろ仕事を辞めて日本に戻ってきたら?」と母は私に話しかける。
「う、うん私もすごく気に入った。あの人なら、と思った。でも日本に帰るとなると、家のこともあるし、また仕事を見つけて・・・・・・」とこの期に及んで二の足を踏む私。
夜道は暗く、まるで小津映画にでも出てきそうな古々しい街灯に蛾が舞っている雪道を私たちは歩いている。
私は、男性の微笑みを反芻し、幸せを感じている。
「これだ、これがきっと真の幸せなんだ。日本に帰ろう、そしてあの人と結婚しよう」と思う。
もう一度、その男性との会話シーンを思い出した時、激しい雨の音で目が覚めた。
「何だ、夢だったのか、やっぱりな、そんな、この年になって、お見合いするとは思えないし、冬に日本に帰る機会などないし、なんとなく全てが古々しかったな。でもあんな気持ちを抱くことなんてずっとなかったから、良い夢だったな。やっぱり相手は医師がいいのかな(笑)でもあのセーターの色はちょっとないよな(笑)」と半分夢に浸りつつ、先日のポールダンスでおかしくしたらしい頸椎と背骨の調整で整体に行くんだった、吐き気と眩暈で調子が悪いからこんな夢を見たのか、という結論を導いてしまった。
あぁ、なんという哀れな現実。
でもこんな素敵な夢を見られるなら、またポールダンスで具合が悪くなっても、もうがっかりはしないかもしれない。
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