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【グロい話】真冬の真紅 [後編]

《前編の冒頭でお伝えしたとおり、本記事は、私がその昔、父から聞いた実話をベースにしています。この話はグロテスクであり、読むと気分が悪くなるかもしれません。ホラーやミステリーの創作に携われる方で、グロテスク描写の参考にしたいという方だけ、お読みいただければと思います。》

前回同様、私の自画像ヲ挟みます。
引き返される方は、今の内に『ヲ出口』からどうぞ。

[後編:親の話]

父は電話越しに、私と「横たわる金髪女性の頭」のエピソードを軽く茶化した後、「いや~、すまんすまん」と軽く謝りながら、「……ただ、オレもそういった気持ちは分かるぞ。子供の頃、アレを見たときは、さすがに飯食えなかったからなぁ……」と、自分の子供の頃の体験を私に話し始めた……。

父は子供の頃に一時期、東北で暮らしていた。
東北の寒い冬の日のことである。
まだ小学生だった父のクラスメートの1人が、こんな話を持って来た。
「あっちの○○の山の方で、人が列車に跳ねられたらしいぞ。死体がそのまま線路に放置されてるらしいから、駐在さんが来て片付けちゃう前に、みんなで、その死体を見に行こうぜ!」
父を含め、その場にいた子供たち全員が、すぐに賛成したらしい。
ただでさえ好奇心旺盛な年頃の男の子たち、それに加え、その当時はスマホやテレビゲームなどのコンテンツも身近でなく、田舎の子供たちも暇を持て余していたのだと思う。

それにしても、この話、何かに似ていないだろうか……?

そう、映画『スタンド・バイ・ミー』そのまんまである。
私もその当時、生きていないので詳しいことは分からないが、昔は日本の田舎でも、警察が察知する前に子どもたちが鉄道事故の死体の話を聞き付けるようなことが頻繁にあったのだろうか。
父の話では、場所も東北の田舎(山の中)、季節も真冬であり、当時は駐在員による山の中の死体の処理も、さほどスピーディーに行われなかったという事情もあったらしい。

ところで(いつものように)話が逸れるが、スティーブン・キング原作としては珍しく、『スタンド・バイ・ミー』はホラー小説ではなく、青春小説とカテゴライズされる。
ただし、原作の方ではしっかり、中盤あたり(だったと思うが)にホラー色の強いエピソードが挿入されていて、普通に怖かったたように思う(映画ではカットされている)。
原作を読んだのが中学生だか高校生の頃なので、ホラーなエピソードの記憶が曖昧だが、誰か読んだ人が居られるようであれば「確かにホラーエピソードあった」とか「あのエピソードは怖かった」とか賛同してほしい。

↓  もう1つ、これに物凄く似た話がある。

世代を超え、親子揃って似たようなことをやっている……。

※※※※※

男の子たち一同は、東北の凍て付く寒さの山道を雪をかき分け、死体が放置されているという線路目指して歩いた。

国際電話で父からこの話を聞いていたため、道中のことはあまり詳しく聞かなかった。
『スタンド・バイ・ミー』では、毟ろ死体があると言われる場所(ネタバレにならぬよう配慮。死体が見付かったのか否かは伏せる)に行き着くまでの道中のエピソードがメインであった。
父含む男の子たちも、道中で深い友情を確認し合うような場面があったのかもしれないが、残念ながら、父が死んでしまった今となっては知る由もない。

そういうわけで、父たち『東北版スタンド・バイ・ミー』のメンバーの道中の冒険はさて置き……ついに一同は……真冬の東北の山の中、死体が放置されているという場所に辿り着いた……。

果たして、死体は見付かったのか……?


…………。

それは、そこにあった。


父含む男の子たち一同は、真冬の山道から斜め上空を見た。
一面の銀世界を背景にして、父たちの頭上に架けられた1本の鉄道橋
その鉄道橋に近付くまでもなかったようである。
辺り一帯に敷き詰められた冬の「白」とはあまりにも対照的な鮮やかな色が、父たちの目に飛び込んで来た。

そこには……電車に跳ねられたのであろう死体が、斜め上方の鉄道橋に横たわり、その「頭」が橋の縁からはみ出していた。
場所は東北の山奥、季節は真冬である。
死体の頭からドクドクと流れ出た夥しい量の「血」は、地上に流れ落ちる前に空中で凝固していた。
そして、その「血」は……橋の縁からはみ出した死体のグシャグシャに潰れた頭の先から1本の巨大な真紅の氷柱(つらら)となって、ダラ~ンと空中に垂れ下がったいたそうな……。

(完)

(注): 本作は実話をベースとしていますが、ルポや社会記事のように客観的事実を報道する目的ではなく、父から子である私に語られた「昔話」を伝承するため、「語り」の内容をできる限り忠実に再現しています。従って、敢えて「ご遺体」などと編集せず、「死体」と表記していることをご了承ください。

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