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【ピヲピヲ文庫連載ミステリー】『7組のクセツヨな招待客』~第14話~

 『夢鳥の幽館』のキッチンで繰り広げられた料理対決の終了時刻となり、招待客たちは一列になってキッチンを出て、高い天井と豪華なシャンデリアが目を引く大広間へと戻ってきた。大広間の楕円形のテーブルには美しいテーブルクロスが掛けられていた。
 一同が席につくと、召使が静かに料理を運び入れ始めた。招待客たちの作った料理が次々とテーブルに並び、その華やかな光景に皆の表情が明るくなった。
「さあ、皆さまがお作りに素晴らしいお料理を一緒に楽しみましょう」と、洋館の主である鳥尾吊士(とりお つるし)は微笑みながら、一同に向かって言った。
 招待客たちは全員、それぞれのチームが作り上げた料理がテーブルに並べられるのを待ちながら、ディナーと料理対決の結果発表に備えた。召使が、手慣れた手付きで、それぞれの料理を皿やカップに盛って、招待客たちの座席に運んでゆく。
 やがて、テーブルの用意が整った。
 正面に立つ鳥尾の横に置かれたテーブルには、招待客たちから見えるように、各チームが作った料理が横一列に並べてある。
 そして、皆の座席にも、それぞれのチームが作った料理が1人分ずつ配られた。
 鳥尾は「では、各チームごとに順番にお作りになった料理の内容を軽く発表していただきましょう。まずは、武さんとミヤビさんのチームにお願いできますかな」と、1組目のカップルに発表を促した。

 ミヤビのチームが発表を開始した。彼らが作ったのは、香ばしいローストチキンである。外側はパリッと焼かれ、内部はジューシーで旨味がたっぷり詰まっている。ガーリックとハーブの香りが漂い、食欲をそそる一品だ。ミヤビが丁寧に盛り付けた新鮮な野菜の彩りも加わり、見た目も鮮やかである。鳥尾が2人の料理に称賛の言葉を贈った後、各チームが順に料理を発表していった。
 真由美のチームが特製のプッタネスカを披露した。パスタは完璧なアルデンテに仕上がり、トマトの酸味、アンチョビの塩気、ケッパーの風味、そしてブラックオリーブの旨味が絶妙に絡み合っていた。にんにくと鷹の爪がほのかに香り、全体的にバランスのとれた濃厚な香りが広がる。
 鳥尾は、その見事なプレゼンテーションに感嘆し、「このプッタネスカは見た目からして素晴らしい。色合いと盛り付けが完璧で、視覚的にも非常に食欲をそそります!」と称賛した。
 スミレ、リナ、ナオミ、梓の4人チームは、オリジナリティ溢れる特製デザートプレートを披露した。プレートには、抹茶とホワイトチョコレートのムース、紫芋のモンブランタルト、ゆずとジンジャーのパブロバ、黒ごまとココナッツのパンナコッタが並び、それぞれのデザートが見事に調和していた。
 抹茶とホワイトチョコレートのムースは、抹茶の風味とホワイトチョコレートの甘さが絶妙に融合したような見た目で、金箔が施された豪華な仕上がりだ。紫芋のモンブランタルトは、サクサクのタルト生地に紫芋クリームがたっぷりと使われ、自然な甘さが引き立っている。ゆずとジンジャーのパブロバは、ふわふわのメレンゲに爽やかなゆずクリームとスパイシーなジンジャーがアクセントとして効いており、黒ごまとココナッツのパンナコッタは、濃厚な黒ごまとクリーミーなココナッツミルクの組み合わせが楽しめる一品だ。
 それぞれのデザートは、見た目も華やかで個性的な味わいが楽しめるように工夫されていた。招待客たちはその多彩なデザートプレートに目を奪われ、期待に胸を膨らませた。
 鳥尾は、「このデザートプレートはまさに芸術作品のようです。それぞれのデザートが完璧なバランスで調和している!」と感嘆し、スミレはこの料理対決の勝利を確信したかのような誇らしげな表情を浮かべた。
  続いて、健太のチームが発表した料理は、特製の「ガーリックハーブチキン」だ。焼き上げられたチキンはジューシーで、ガーリックとハーブの風味が絶妙にマッチしている。鳥尾は、「このガーリックハーブチキンはまさに完璧な仕上がりです。特製のソースが肉の旨味を引き立て、肉のジューシーさとソースのバランスが絶妙です!」と評価した。
 最後に、立己麗子のチームは、洗練されたトリュフ風味の牛テール煮込みスープを作り上げた。澄んだ琥珀色のスープは、濃厚で奥深い味わいが口の中に広がり、一口ごとに異なる層の味が楽しめる。スープにはじっくりと煮込まれた牛肉の旨味が溶け込み、トリュフの豊かな香りがアクセントを添えている。エレガントな盛り付けが印象的だった。
 鳥尾は、その見事なスープの香りを嗅いで、感嘆の声を上げた。「このスープは、見た目も美しく、香りからして既に味わい深さが伝わってきます。トリュフの香りがアクセントになっていて、一口ごとに楽しみが増しそうですね」と称賛した。

 料理対決の審査が始まる前に、鳥尾が参加者たちに投票のルールを説明するために立ち上がった。
「皆さん、素晴らしい料理を作っていただき、ありがとうございます。これから審査を行いますが、公平に評価するために、各人が他のチームに1票ずつ投票するルールを設けました。自分たちのチームには投票できませんので、他のチームの料理をよく味わって、公正な判断をしてください。それでは、これより投票を開始します」
 招待客たちは、まずは料理を楽しむことはそっちのけで、他のチームの料理を真剣な顔付きで試食し、公正に評価するために慎重に頭を悩ませ始めた。鳥尾も、満足気な顔で、それぞれのチームが作った料理を味っている。真剣な表情で料理を味わう招待客たちの姿に、審査の難しさが窺えた。
 やがて、鳥尾の提案に従い、招待客たちは召使から投票用紙を1枚ずつ手渡され、他のチームに1票ずつ投票することにした。各々が悩みながらも、他のチームの料理の素晴らしさを認め、投票を行っていった。
 こうして、招待客たちは一連の料理を味わい、公平に評価するために全力を尽くした。投票の結果が集計されるのを待つ間、一同は和やかな雰囲気の中でディナーを楽しみ、互いの料理の努力を称賛し合った。
 ディナーのひとときが続く中、緊張感が漂い始めた。参加者たちはそれぞれの料理を楽しみながらも、誰が最終的な勝者になるのか気になっていた。中でも、スミレは料理を楽しむ気持ちにもなれず、一刻も早く、鳥尾が料理対決の勝者として自分たちのチームをコールしてくれないものかと、気が気でなかった。

 いよいよ、鳥尾が立ち上がり、静かに口を開いた。
「皆さん、投票の結果が集計されました。これから結果の発表に移りたいと思います」
 招待客たちはその言葉に耳を傾け、心の準備をした。鳥尾の声が一層大きく響き渡り、大広間全体にひときわ大きな緊張が走った。
「それでは、発表いたします……」と鳥尾は続けた。
「皆さま、すべてのチームの努力が素晴らしい料理に結実しました。いずれのチームも見事な成果を上げましたが、最も評価された料理は……」
 期待と不安が入り混じる中、参加者たちは次の言葉をただ静かに待った……。

(🐦つづく🐦)


(※ よろしければ、皆さまも優勝チームを予想などしてみてください。なお、料理対決の勝者は謎解きではないので、作中に確定的なヒントが有る訳ではなく、単なる勘となりますが🐦🐦)

前話

※ 本連載の「あらすじと登場キャラクター紹介」はこちら


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