[ショートショート] 『ヲ』と語る夕べ
《このショートショートを読むと、今より一段階、頭が悪くなるリスクがあります。「頭が良過ぎてお困りの方」または「ここまで来たらとことん極めたい」方のみ、お読みください》
[第一幕:自宅前にて]
仕事も終わり、明日からお盆休みか。。。
ハミングバードは連休前の仕事納めで疲れた頭と羽を休めるため、そしてエアコンで少々冷え過ぎた体をいくぶん温めるため、ベランダに出た。
そして、ベランダから自宅前の通りを見下ろし、ギョッとした。
誰かが、じ~っとハミングの方を見つめているではないか。
、、、何か怖い、、、誰だろう?
ハミングを恨む誰かが、復讐を企て、自宅まで乗り込んできたのか?
それとも、変質者の類か??
どちらにしても怖そうなので、目を逸らそうとしたのだが、刹那、ハミングは、、、「んっ? 何か見覚えがある」と感じた。
ハミングは勇気を出して、通りから自分を見つめ続ける「その誰か」を凝視した。
、、、?!
、、、それは、、、カタカナの『ヲ』だった。。。
『ヲ』は、ハミングと目が合うと軽く会釈した。
ハミングは家の中に引き返すこともできたのだが、何となく『ヲ』に会釈を返してしまった。
『ヲ』は、何となくハミングと話をしたそうな様子である。
、、、仕方がない。。。
ハミングは暑さに多少辟易しながらも、玄関のドアを開けて、パタパタ~ッと外に飛び出た。
『ヲ』は、すでにベランダの下から家の玄関脇に移動しており、ハミングと目が合うと、今度はさっきより深く礼をした。
「あのー、、、」
「あっ、すいません! いきなり家まで押し掛けてしまって。あっ、いえ、少しお話しできたらと思いまして。お忙しいようでしたら、これですぐ帰りますし」
『ヲ』は、ハミングが声を出すのと同時に、食い気味で興奮気味に話し始めた。
「ハミングバードさんですよね? 私、ハミングさんのファンなんです、、、あっ、すいません、勝手にハミングさんなんて呼んじゃって、、、」
「あー、いえ、別にみんなそう呼んでますから。ハミングバードって長いですし」
「あっ、じゃあ、ハミングさん! アハハハハ。何か照れますね。そうそう、あの『トマトと卵の中華炒め』の固定記事、面白いですよね! モンキーマジックさんも登場されて、、、あとは、この前の亡者の、、、天上界の人が、、、ドーン!なんて、、、」
「あのー、失礼ですが、、、」
「あっ、すいませんベラベラと。あの今朝のつぶやき、アレ拝見したんですけど。ありがとうございました! 何か私のこと書いてくれてる💕って、何か、、、その、、、嬉しくて。。。」
「、、、あー、、、おぉ~っ! ハイハイ、今朝のつぶやきね。そうですね。『ヲ』さんも色々寂しい思いをされているのかなとか思って。。。あっ!何か私、結構失礼なこと言ってますよね? ごめんなさい」
「いえいえ、いいんです。だって、、、ホントのことですから。。。みんな私のこと、あまり必要としてないみたいなんですよね、、、それにしても、あの鳴き方、可愛いですね ♡」
「えっ? あー、あの『ピヲピヲ』ってやつですか?」
「そうです。『ピヲピヲ』って! 凄いカワイイと思いました! 、、、あれ、流行りますかね? あれが流行ったら、みんなnoteで『ピヲピヲ!』って、私のこと使ってくれると思うんですけど、、、」
「う~ん、、、まあ、、、流行るとも、、、流行らないとも、、、私は何とも申しませんが、、、ところで、『ヲ』さんって、カタカナなのに『ヒラガナ』で話されるのですね」
「ヒラガナで『話す』?、、、どういう意味ですか?」
「あー、いえ、こちらの話で、、、」
「でも、あれですよ。私の話し方って、ちょっと気を使ってるんです。読んでる人に分かりやすいように」
「よ、読んでる人? 何の話ですか? ここには我々2人しかいないようですが、、、」
「あー、いえ、こちらの話です。何か、説明的なことばかり言ってすみません」
「あのー、私、ほかのカタカナたちと同じように愛してほしいとは望んでいません。。。私、、、こんなですから。。。ただ、、、私にも、、、ごく一部でいいんです。ファンというか、私を愛してくれる人たちがいてくれたらなーなんて」
「(『ヲ』さんも闇が深そうだな)あの、すぐ近くに公園がありますから、あちらで少し話しますか?」
「えっ? ホントですか? 光栄です!」
(やれやれ。この暑いのに、よりによって『ヲ』さんの身の上相談か。。。)
[第二幕(1):ハミング、知恵を出す]
「、、、やっぱり思うんですけど、、、私のフォロワーさんも言っておられたんですが、『ヲ』さんって、同じカタカナの『ヨ』と間違われやすいと思うんですよ。少しインパクトを出していってはどうかと」
「そうなんですよ。でも、『ヨ』兄さんの方が、私なんかより全然、、、それにしても、ハミングさんは素敵なフォロワーさんたちがたくさんいて、羨ましいです。。。」
「、、、あっ! こういうのどうですか? 『ヲ』さんもフォロワーさんではないですが、ほかのカタカナとどんどんコラボしていくとか! 何か『ヲ』さんがいないと成り立たないバズワード作りましょうよ! ピヲピヲもいいんですけど」
「コラボ?、、、私が、、、ですか?」
「そうですねー、、、たとえば、、、あっ、そうだ! 『ア行』とか『カ行』とかって、もうギルドが出来上がっている感じじゃないですか。でも、『ワ行』って、ワイウエ、、、って『ア行』とかぶってる感があるので、取り敢えず『ワ』さんと組んで、、、あとついでに、ご近所の『ン』さんも誘ってみましょうよ!」
「『ワ』さんと『ン』さん、、、ですか?」
「そうそう、たとえば、、、『ワヲ~ン』とかどうですか?」
「、、、ハミングさん、何ですか、ソレ?」
「あっ、いえ、ワヲ~ンって、あの、、、犬🐶? ピヲピヲがいけるんだったら、犬もありかなーとか」
「あっ、、、あー、犬ですよね、確かに。ワヲ~ンって、、、いいですね。それ、、、流行りますかね?」
「えっ? まあ、、、流行るとも、、、流行らないとも、、、私は何とも申しませんが、、、」
「やっぱり動物ネタがいいんですかね?」
「、、、いいか?と聞かれますと、、、あー、まだありますよ。ほかのフォロワーさんに教えていただいたんですが、『ヰ』さんと『ヱ』さんって、面識あります?」
「えっ? まあ、旧字体の先輩方ですけど」
「あの人たちも、最近は使われる機会も少ないでしょうから、いっそのことチームでも組んで、、、グローバル化の世の中ですから、『ヲ~ヰヱ~!』とかどうですか?」
「、、、ハミングさん、何ですか、ソレ?」
「、、、『ヲ』さん、、、ご自身が『字』でおられるのに、案外、言葉遊びに鈍感ですね。。。『ヲ~ヰヱ~!』って『Oh ~ Yeah!』ですよ、英語の、、、」
「、、、あっ!『ヲ~ヰヱ~!』、『Oh ~ Yeah!』、カッコいいですね! それって、、、」
「流行るとも、、、流行らないとも、、、私は何とも申しませんが、、、」
[第二幕(2):『ヲ』さん、知恵を出す]
「ハミングさん、コラボの話を聞いて、、、実は私もアイデアを思い付いたんですが、聞いてもらえますか?」
「おっ! それは、ぜひ聞かせてください」
「鏡文字って、ありますよね?」
「鏡文字って、あの左右を逆に、、、というか、反転させた文字のことですよね?」
「そうなんです。さっきのハミングさんのグローバル化の話ですけど、鏡文字で英語の『F』さんとコラボとかどうでしょうか? 国際的で憧れちゃうんですけど ♡」
「ほぉほぉ、、、なるほど、、、英語の『F』をコロン!と左右引っ繰り返すと、、、確かに『ヲ』さんに似てますね! うんうん、いけると思いますよ! ちょっと、『F』さん呼んじゃいましょうか?」
「いけますかね? 『F』さんとデュオかぁ~。ウフフフフ」
「あっ! それで、『F』の画数って三画じゃないですか? だから二画の『ヲ』さんの方が書きやすいというか、親しみやすいというか、、、デコボコデュオみたいな感じで、人気出るかもしれませんね。」
「、、、私も、、、三画なんですけど、、、」
、、、えっ?!
「『ヲ』さん、、、二画じゃ、、、ないんですか?」
「ハミングさん、私のこと書いてみてもらえますか?」
「えっ? こうでしょ? そして、、、」
「ホラホラ、今、カタカタの『フ』みたいに書いて、その後『一』を書きましたよね? 違うんです。 最初にカタカナの『ニ』みたいに2本線を引っ張って、、、そうそう、それから最後に『ノ』みたいに横に付け足すんです。」
「『二』を書いて『ノ』、、、確かに三画だ! 『フ』『一』じゃないんですね!、、、勉強になりました! 、、、何かすいませんでした。。。」
「、、、いえ、いいんです。。。誰も私のことなんか書いてくれませんし。。。ピヲピヲ ToT」
「分かりました。 泣かないでください。もう、いっそのこと、名前の挙がった『F』さん、『ノ』さん、『フ』さん、『ニ』さん、みんな呼んでチーム組んじゃいましょう!」
「でも、私なんかのために、、、」
「いいんですよ。私も『ヲ』さんには、何だかんだでお世話になってますから。私のアカウントに呼びますね! まずは、チーム結成にあたって、みんなで団結式でも開きましょう!」
、、、こうして、ハミングは『F』さん、『ノ』さん、『フ』さん、『ニ』さんに連絡を取った。。。
[最終幕:『ヲ』さんとチーム]
ハミングと『ヲ』さんのいる公園に、『F』さん、『ノ』さん、『フ』さん、『ニ』さんが駆け付けた。
「皆さん、急なお声掛けにもかかわらず、お集りいただき、ありがとうございました!」
F「まあ、ちょうどお盆休みですし。アルファベットは、そんなに忙しい時期でもないですから。これがクリスマスとかだと、こうもいかないんですが。あっ! 私には、Merry Christmasは関係ないですな! ワッシャッシャッシャッ!」
ハミング「『F』さんって、結構陽気なんですね。あっ、Funnyの『F』さんって感じですね! そして、カタカナの皆さんもありがとうございます。」
フ「最初に呼ばれたときは、何の騒ぎかと『フ』に落ちませんでしたが、取り合えず、楽しそうなことがありそうだと思って来てみました」
二「私が協力して『ヲ』さんの人気度アップに貢献できるのであれば、ハミングさんも肩の『ニ』が下りるかなぁーと、鳥助けに来ましたよ」
ノ「note(ノート)は、いわば私、『ノ』の庭のような場所ですから。別名『ノ』の音なんて言いましてね。ちょっと、苦しいですかね ^^;」
ハミ&ヲ「ちょっと絡み辛いけど、何て優しい文字たちなんだぁ~ ToT」
ハミ「先にお伝えしたとおり、皆さんでチームを組んでいただきたいのです。そして、団結式と称して、、、実は、『ヲ』さんは『ヨ』さんと間違われたりで、すっかり自信をなくしてしまって、、、まずは、皆さんから『ヲ』さんに対し、激励のエールを送ってあげてもらないでしょうか?」
F「ワッシャッシャッ! お安いご用です。では、まず私がFirst(最初)で良いですかな?」
ハミ「もちろんです。お願いします。」
F「えぇ~、では、、、」
ハミ「皆さん、Fさんの後に続いて、順番でお願いしますね。私は黙って見守ってますから。」
(いよいよ始まる『F』、『ノ』、『フ』、『ニ』の激励エール)
F「Fanを増やそう、愉快な『F』さん!」
ヲ「いいですね ToT 私もFanを増やしたい、、、って、いやいや、『F』さんになっちゃってるじゃないですか!」
ノ「ノリツッコミもいけるぞ『ヲ』さん!」
ハミ「おっ! これは『ノ』さん、うまくフォローしましたね ^^」
フ「、、、えぇーと、、、ファンを増やそう、愉快な『フ』さん!」
ヲ「、、、いや、何で、同じボケするんですか?」
ハミ「『フ』さん、ポンコツですか? ポンコツなのか? アナタは??!」
ニ『二度のボケにもかかわらず、ツッコミキレキレ、愉快な『ヲ』さん!』
ヲ「、、、あっ、いえ、、、そ、そうですかね ^^;」
ハミ「『ニ』さん、あなたは何て優秀なんだ ToT ちょっと自分だけ長い気もしますが。みんなで『ニ』さんを胴上げでもしましょうか!」
ニ「あのー、私は他の各位に比べ、バラバラになりやすいので、胴上げは普通にお断りします。」
ハミ「ピヲピヲ ToT」
ハミング「いや! でも皆さん、お見事でした! さすが、長年『文字』をやっておられる! 良いチームが誕生して良かったです。この調子で、バズワードを作っていってください ToT このハミングも応援していますぞ!」
ヲ「何か、、、今日は私のために、、、ハミングさん、そして『文字の皆さん』も、本当にありがとうございました ToT これからは、チームメンバーの一員として頑張りますので、今後ともよろしくお願いします!」