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介護職のコミュニケーション(伝える<捉える)

コミュニケーションに悩む人は多い

先日、こんな相談をいただきました。

コミュニケーション力を高めるためにはどうすれば良いのか。

自分では努力をしているが、中々ひとにうまく伝わらない。
自分は相手の気持ちを理解していると思っていたがそうではなかった。
・そんなつもりはなかったが、相手を悲しませる、または怒らせてしまう。
理解してもらおうと説明するが、相手に伝わらない。

こんな風に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

コミュニケーションは言い換えれば人との付き合い方、向き合い方になるかと思います。 人との付き合い方、向き合い方の良し悪しは私たちの人生に大きく影響します。

人の世だからこそ、どこに行こうが”他者”の存在があります。
それは物体として存在するという意味でもあり、私たちの内面(心の内)という精神や思考の中に存在するという意味でもです。
そもそも私たちが今認識しているこの世界は”人の世”です。
人の世であるからこそ、人に悩み、人に疲れ、人に苦しめられる。
人である以上、この苦悩からは逃れることができません。
しかし、これを逆に考えた時、
人は人であるからこそ、人と喜び、人と楽しみ(愉しみ)、人と悲しみや苦労を共にし、そんな人の世(社会との繋がり)だからこその幸せがあるのではないでしょうか。

今回は普段に使える介護職のコミュニケーション技術というテーマでお伝えします。

コミュニケーションが私たちの人生に与える影響

はじめに、コミュニケーションが私たちの人生に与える影響について考えることからはじめようと思います。

コミュニケーションが円滑に行えるかどうかは、私たちが生きる中で非常に重要な要素になってくるのではないでしょうか。
その理由としましては、以前「介護の仕事」という記事の中でもご紹介させていただきました、マズローの欲求5段階説からもおわかりいただけるものと思います。マズローの欲求5段階説は人間に備わる欲求を現したものです。
マズローの欲求5段階説の中では“社会的欲求”や“承認欲求”が存在します。
これらには”他者の存在”が必要です。他者の存在を私たちがどのように認識するか、そして社会の中で自らの位置を確認する際には、他者との関わり⇒コミュニケーションが必要です。上記より、欲求を満たす際にはコミュニケーションというのは避けては通れないということになります。

コミュニケーション(他者との関り)により自分の人生や生き方を左右されたくないと思う方もいらっしゃると思いますが、そういった方でも、コミュニケーションがうまくいくか否かで考えると、コミュニケーションがうまくとれることの方が、人の世であるこの社会の波を乗り切り、人生をより有意義なものに変化させることができるのではないでしょうか。

介護の知識は人が生きる上での様々な場面に応用できる

今回は介護職が実践するコミュニケーションについてお伝えしていきたいとお伝えしましたが、なぜ介護職が実践するコミュニケーションなのか。
それは、介護は人の【生きる・活きる 】を支援さていただく仕事であるからこそ、人の人生に活用出来る多くの知識や技術、そして思考が存在します。
多くの方が、介護に対して「高齢者」や「認知症」、「動作に支援が必要な人」を先行してイメージするのではないでしょうか。介護を初めて間もない方や、介護職の中でもこのようなイメージを持たれる方は少なくありません。
これは間違っていないように見えますが、完全に合っていると言えません。
私たちがサービスを行う方々は“人”です。
だからこそ、介護職の知識や技術、思考は介護職がケアを実践する上でなく、介護職以外の方、そして介護を受けられる方以外の“全ての人”に実用性のある内容が数多くあります。

コミュニケーション力は介護職の必須能力の一つ

コミュニケーションは介護職としてケアを実践する中でも非常に重要なものです。
その答えは"人を知る"ことができなければ、介護は出来ないからです。
介護は一方通行の行為ではありません。
支援を必要とされる方がどのような支援を必要とされているのかを”知り”そのうえで行うものです。
支援の結果がどのようものになったのか、支援させていただいた結果に関しての”思いを知り”改めてケアを見直し、再度ケアを実践します。極端に説明を省き、簡単にお伝えするのであれば、このサイクルを繰り返し、その方の生活の質向上に向けてケアを実践するのが本来の介護です。利用者本位の視点で介護は実践されるのです。
ここまで見ていただいたように、利用者本位のケアは、支援を必要とする方に対して、何度も”知る”を繰り返します。

ではどうやって”知る”のか、その主な方法は支援を必要としているその方とのコミュニケーションです。

介護は記録物やデータ、多職員からの情報を取りながら”知る”のではないか?

確かに、その方を"知る"為には記録やデータ、他職員の情報を把握しなければなりません。 少し脱線しますが、誤解のないようにご説明させていただきます。

勿論、数量的な理解としてその方の記録やデータ、他職員の情報からその方を”知る”ことは必要です。
感覚のみに頼る場当たり的な介護は、専門性のある介護とは言えません。
介護福祉士の行動規範の中でも『自らの価値観に偏ることなく・・』という一文があります。
客観的なデータとなる各種記録や情報は、自らの価値観の範囲を超える判断材料として有効です。この専門性(ここでは根拠に基づくケアとして解釈していただければと思います)がなければ、家族や知り合いなどの、いわゆる専門職ではない一般の方が行う介護と大差のないものとなります。
上記より、根拠に基づくケア、専門性のある質の高い介護を実践するのであれば、この記録やデータ、他職員の情報により、その方を”知る”ことは必須です。ですが、この理解が極端なものになると、介護職としての"知ること"に誤解を生みます。記録やデータ、多職員からの情報に偏りケアを実践するのであれば、それはある意味「記録・データ、多職員本位のケア」になってしまいます。

介護福祉士の倫理綱領にも記載があるように、私たちが行うべくは利用者本位のケア。
この利用者本位を知るためには、その方の思いを知る必要があるのです。
その方の思いを知るには、その方の言葉や表情、仕草など、その方に直接触れる「コミュニケーション」が必要です。

そしてこれはただ単にコミュニケーションを図れば良いということではありません。私たち介護職が行うコミュニケーションは”相手の思いを引き出すコミュニケーション”でなければなりません。これらを行い、支援を必要とする方を”知る”のです。

相手を"知る"ために介護職が実践しているコミュニケーションの方法

ここからは、具体的に相手を"知る"ために介護職が実践している、コミュニケーション力を高める方法についてお伝えします。

それは“相手の方を中心とした、相手の思いに寄り添ったコミュニケーションを徹底する”ということです。

先ほども少し触れましたが、ケアのプロセスは「利用者本位」これが原則です。
この内容を実践するための専門知識として「パーソン・センタード・ケア」「介護過程」などがあります。これらの専門知識に関しても今後お伝えしたいと考えておりますが、今回はこれらの専門知識でも重要な入り口であり、介護職ではない方にもわかる表現でお伝えします。

相手に何を伝えるかではなく、相手の何を捉えるか

大半の方はコミュニケーションの際に“何を伝えるか”を準備するのではないでしょうか。
介護職が実践するコミュニケーションでは、何を伝えるかではなく、何を捉えるかということをコミュニケーションの思考の出発点(準備)にしています。

“何を伝えるか=自分の思い”<“何を捉えるか=相手の思い”

コミュニケーションエラー、ミスコミュニケーションの大半は、認識と実際のずれによるものが大半です。「わかったつもりだったが実際は違った」というような場面です。この“わかったつもりを減少”させると、相手の真のニーズ(求めていること)に近づき、コミュニケーションが円滑になります。

結論

長々記事にさせていただきましたが、まとめると非常にシンプルです。
“何を伝えるか(自分の思い)”ではなく“何を捉えるか(相手の思い)”という思考の準備をすることでコミュニケーション力は向上する。
という私の考えをお伝えさせていただきました。

コミュニケーションは技術

コミュニケーションの講師の先生方は「コミュニケーションは技術」だと話をされていました。コミュニケーションが得意でなかった私は大きな勇気をいただいたことを覚えています。私自身も公認心理師の資格取得を通して、様々な知識や技術を学び、先生方が話をされていた「コミュニケーションは技術」であるということが改めてわかりました。
技術であるなら、それは当然高めることができるということです。

コミュニケーションそれ自体が【糧と原動力】

私は介護職として15年以上働いています。
ご利用者、ご家族、職員、地域の方々、たくさんの方々と接してきました。
たくさんの人と関わる中で多くの喜びや楽しさ、嬉しさをいただきました。
反面、思いを汲みとることが出来ないことや、求められた内容にお応えすることが出来ず、相手の方を怒らせてしまったり、悲しませてしまったり、その時には自分自身も辛く悲しい気持ちになったり、悔しい思いをしました。
今振り返ると、このコミュニケーションそれ自体、全てがいまの私の糧、原動力になっていると感じます。うまくいかないコミュニケーションからは自分を内省、反省する機会をいただき、良いコミュニケーションが出来た時には私を前進させてくれる、大きな原動力をいただいております。
勿論、このnoteの場で皆様と繋がること、このように思考を文章にさせていただくことも様々な糧、原動力をいただいております。心からのお礼を申し上げます。

最後に改めて「皆様にとってコミュニケーションはどのようなものでしょうか」

今回、タイトル画面に使用させていただきました画像ですが、ご覧になる方の見方により複数の捉え方ができる絵です。以下の画像も同じく、複数の捉え方ができます。

あなたにはどのように見えましたか?

人を変えることは難しいですが、自分が変わることは今この瞬間から出来ます。

一緒に挑戦してみませんか?

拙い文章ではありますが、介護職として活躍されている方、介護にご興味のある方、コミュニケーション力にご興味のある方など、ご覧いただいた皆様の“何か”になれれば幸いです。

ここまで長々とお時間をいただき、お付き合いいただきありがとうございました。


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