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リヒャルト・シュトラウス作品30 交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」解説

リヒャルト・シュトラウスの印象

リヒャルト・シュトラウスはとても大好きな作曲家。最初にまともにライブで聴いた曲がティルだったり、管楽器アンサンブルの曲をたくさん書いていてめっちゃ良い曲だったり、ドンファンが単純に好きだったりで、大好き。

ただあまり作曲家本人についてこれまで深掘りすることはなく、ナチとのきな臭い関係や、時代遅れ感や、その他いろいろな理由で敬遠していた。あの不機嫌そうな晩年の顔だけが印象的な作曲家、ぐらいの感じと、シンフォニー偏重趣味からすると「交響詩ってなんか軽いよねーやっぱりホンモノはシンフォニーだよね🎵」というような根拠がそこはかとなく薄い理由ぐらいの話。

そう、リヒャルトの曲の素晴らしさと出来栄えが良すぎるのだ。何よりも、美しく、ロマンティックだ。確固たる調性に基づき、破綻することがない。奇を衒ったリズムやハーモニーもない。そう、全てがちゃんとしているのだ。20世紀半ばまで生きた作曲家なのに!

そういう意味では、ラフマニノフやプッチーニに似ているとも言える。各々20世紀になっても生きたし、調整音楽に立脚しつつ、素晴らしい曲を書いた。同じように、リヒャルトも、多くの名曲を書いた。オペラも、素晴らしいものが沢山遺されているらしい。私は薔薇の騎士くらいしか観たことない。これから、観てみようと思う。

さて、本題の「ツァラトゥストラはかく語りき」。この曲の冒頭ほど有名なクラシック曲、ことオーケストラ曲では運命と一二を争うくらい有名ではないか。惜しむらくは、冒頭「だけ」が有名なこと。「ニーチェ」も知ってるし「ツァラ」も知ってるけど、最後まで聴かれる機会が極端に少ないのでは、と思う。

そんな中、この曲をやってしまうアマオケ無謀枠代表の我々関西シティフィルのパンフレットの解説を書くことになった。このクソ忙しい中、である。良い機会なので、リヒャルトの伝記も、ニーチェも全部読んでやれ!と思い、田代櫂さんの伝記を読み終えた。

リヒャルトの印象がガラリと変わった。
本を読む前は、何とも不機嫌そうな、感じの悪い方で、指揮する動画とかも観たことがあるが、やる気のない感じの偉そうな雰囲気を持つジジィ。
読んだ後、クセの強い奥様のかかあ天下の元で、黙々と職人のように作曲を量産し、良い台本に曲をつけることに関しては誰よりも長けている、素朴なちょっとお茶目で仕事好きで人付き合いの悪いオッチャン、という印象に大きく変わった。

ナチとの下りも溜飲を下げるものであったし、また多くの書簡に現れる人間性からは、何ともいえないホッコリ感が感じられ、人柄がグッと身近になった。やはり、世の中には知らないことが多過ぎる。私は、リヒャルト・シュトラウスを誤解していた。

ニーチェの言葉

ニーチェはその昔、大学時代にカッコつけて「ツァラトゥストラ」を読もうと本ぐらいは手に入れて、読み始めた気はする。もちろんカッコつけてるだけなので、最後までは読めてない。それでも、その痛烈さというか、強さのようなものだけは少なからず残っている。

今回は満を辞して、最後まで読了しようとした。今現在読み終えていないので、今回の解説には間に合わない。とはいえ、解説を書くにあたり最初立てた壮大な計画をバッサリ捨てるわけにはいかない。だから、曲に寄せて、曲にある表題部だけ、読み切ることにした。

言い訳がましいが、「ニーチェの言葉」という本は読んだ。これはこれで、読みやすくまとめられていて、面白かった。「人間的な、あまりに人間的な」というニーチェの別の著書が読みたくなった。ニーチェの言葉の片鱗に、触れられた気がする。

とここまで去年書いて、下記文章で首記解説を書いた。まだ「ツァラトゥストラはかく語りき」は読み切っていない。ニーチェへの興味は燻ったまま、リヒャルトもそう。さてこれは久しぶりに有料記事にしてみる。

良ければ是非、ご購入下さい。演奏会にお越しいただいたお客様からは、アンケートで「解説がよかった」とお褒めの言葉をいただきました!ありがとうございます。

(参考図書)
音楽之友社スコア 交響詩「ツァラトゥストラはこう語った」/小鍛冶邦隆

春秋社 リヒャルト・シュトラウス 鳴り響く落日/田代櫂

岩波書店 ニーチェ/三島憲一

河出文庫 ツァラトゥストラはかく語りき/ニーチェ(佐々木中訳)

神崎正英さんのサイト:The web KANZAKI music & knowledge sharing


(以下、関西シティフィル第75回定期演奏会解説本文)

「ああ、この曲ね!知ってるわ〜」
リヒャルト・シュトラウスのことは知らなくても、この冒頭は誰でもご存知のはず。本日演奏する交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」作品30(以降ツァラ)の冒頭のテーマであり、曲中何度も登場します。

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