「心を上手に操作する方法」評 -優しさあふれる危険な本
著者は相当いいやつだ。エンターテイナーの鏡なのだろう。本の随所に、優しさがあふれている。読後感が気持ちいい。胸いっぱい。
とはいえ、内容はかなり危険!催眠、ウソを発見、心理操作など、すぐに使えそうなハウツーがかなり紹介されている。チャルディーニの名著「影響力の武器」についても16章のうち3章100頁にわたって噛み砕いて解説している。ここだけでも面白いが、私がとくに面白いなと思ったのは、表情のところだ。
個人的に、笑顔について、昔から悩んだり試したり、研究した。いじめられっ子だった私は、その現状を打開するために、笑顔という武器を使って、のし上がった(笑)。そう、「笑顔が素敵ですね」とよく言われるまで、自己流ながらトレーニングと研究を繰り返してきた。つくり笑顔には自信がある(笑)
とはいえ、良いことばかりでもない。無理な笑顔がストレスの原因のひとつになることは、今でもある。感情のコントロールという視点では、上手くいくとは限らないのだ。年齢とともに頬の筋肉が下がってきている自覚もあり、つくり笑顔も辛くなってきた。感度の高い人には人には見破られるようにもなってきた。
バレることは気にしていない。むしろ、つくり笑顔を無理してすることも減っている。でも「笑顔の研究」は面白いテーマかもね。本書けるかも(笑)営業マンとして笑顔はひとつの武器になり得る。理解を深め、トレーニングを積めば、良い成果をもたらすかもしれない。今度考えてみよう。
笑顔についての気付きをあらためて与えてくれたことに加えて、もう一つの収穫。相手の表情から、嘘を含めて考えていることを見抜くということに、もう一度興味をもたらしてくれたこと。なるほど、たしかに悲しい表情をつくることは難しい。笑顔や怒った表情は比較的簡単。もちろん、仕草や態度の話も出てくる。
「影響力の武器」の噛み砕いた、また本人の体験談を交えた著述も秀逸だった。よく考えられていて、かつ素性が良い、良過ぎる。私は素性がズルくて卑屈な方なので、トルステンさんの人の良さに、癒された。同じ本を読んでも、感じ方がこんなに違うのか!文面から伝わってくるのよ、暖かみが。
私も、人を喜ばせることができたらいいなと、卑屈ながら考えて生きている。トルステンさんには足元にも及ばないが、エンターテイナーの端くれとして、やることはたくさんある。催眠のところは「何じゃこりゃ」と思っていたが、意外な良書だった。読み終えて、胸いっぱい、뿌듯한 週末のはじまりに読了。
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