古典名作:フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス(3)
前回
本編
手紙 3
マーガレット・サヴィルへ(イングランド)
7月7日、17—年
親愛なる姉へ、
急いで数行を書いています。私は無事で、航海は順調に進んでいることをお伝えします。この手紙は、アルハンゲリスクから帰国途中の商船によってイングランドに届くでしょう。私は、幸運にもこの船より早く祖国を見ることができないかもしれませんが、数年後に戻る可能性もあります。しかし、私は元気です。乗組員たちは勇敢で、目的に向かってしっかりと進んでいます。私たちが進む先の危険を示す浮かぶ氷の板も、彼らを怯ませる様子はありません。私たちはすでに非常に高緯度に到達していますが、今は夏の真っ最中で、イングランドほど暖かくはありませんが、南風が私たちを目指す岸へと素早く運んでくれ、その予想外の暖かさが心地よいです。
これまでのところ、手紙に書くような出来事はありません。強風が1、2回、マストが折れたことはありましたが、それは経験豊富な航海者にとっては記録に残すほどの事故ではありません。これ以上の悪いことが起こらないのであれば、私は満足です。
さようなら、親愛なるマーガレット。私自身のためにも、あなたのためにも、軽率に危険に挑むことはしません。冷静に、忍耐強く、そして慎重であり続けます。
イングランドの友人たちによろしくお伝えください。
心から愛を込めて
R・W
解説
『フランケンシュタイン』の「手紙3」は、物語の重要な序章の一部であり、ロバート・ウォルトンが姉のサヴィル夫人に宛てた手紙です。この手紙では、ウォルトンが北極探検の航海を進めている様子と、その中での心境が描かれています。
まず、この手紙の冒頭で、ウォルトンは航海が順調に進んでいることを姉に報告しています。彼は無事であり、乗組員たちも勇敢で目的に向かってしっかりと進んでいると伝えています。これまでのところ、特に大きな問題や危険は発生しておらず、ウォルトンは冷静さを保ちながら探検を続けています。彼は、氷の塊が浮かんでいるのを目にしつつも、乗組員たちがそれに怯むことなく前進していると述べ、冒険に対する彼らの強い決意を強調しています。
ウォルトンはこの手紙の中で、自然の厳しさにも触れています。彼らが進んでいるのは非常に高緯度の地域であり、夏であってもイングランドほど暖かくはありません。しかし、南風が彼らを目指す場所へと素早く運んでくれることや、予想外の暖かさを感じられることを心地よく思っています。これにより、探検の困難さが少し和らぎ、彼の冒険への情熱がさらに高まっている様子が伝わってきます。
次に、この手紙の重要な要素として、ウォルトンの冷静さと慎重さが挙げられます。彼は姉に対して、自分が軽率に危険に飛び込むことはないと約束し、冷静で忍耐強く、慎重に行動することを誓っています。この言葉から、ウォルトンはただ無謀に冒険を追い求める人物ではなく、リーダーとしての責任感を持って行動していることがわかります。彼は自分自身の安全だけでなく、姉や友人たちに対する思いやりも忘れていません。彼の探検はただの個人的な挑戦ではなく、大切な人々に対する責任感に支えられているのです。
また、手紙の中でウォルトンが「これまでのところ、書くべき出来事はない」と述べている部分からは、航海が順調であり、特に大きな問題が起きていないことがわかります。マストが折れた程度の事故はあったものの、それは経験豊富な航海者にとっては日常的な出来事であり、特に記録に残すほどのものではないと冷静に捉えています。これ以上悪いことが起こらなければ満足だという言葉には、彼が現在の状況に安堵している様子が表れています。
「手紙3」は、ウォルトンの航海が順調に進んでいることを示すとともに、彼の冷静な性格や探検に対する慎重な姿勢を強調しています。彼は決して無謀な冒険者ではなく、状況を客観的に見つめ、適切に判断できるリーダーとして描かれています。この手紙を通じて、ウォルトンの人柄や探検に対する姿勢が深く掘り下げられ、後に物語が進むにつれて、彼がどのような判断を下し、どのように物語に関わっていくのかが読者に期待されます。
さらに、ウォルトンが姉に対して愛情を込めて手紙を書いている様子からは、彼が家族との絆を大切にしていることも感じられます。探検の最中でも、彼は姉やイングランドの友人たちに思いを寄せ、無事を伝えるために手紙を書いているのです。この点でも、ウォルトンはただの冒険者ではなく、人間味溢れる人物として描かれており、彼の人間性が物語全体において重要な役割を果たすことが予感されます。
「手紙3」は、物語の進行を支える重要な部分であり、ウォルトンの冒険の順調さと彼の内面の強さ、慎重さを描いた場面です。彼がどのような状況でも冷静さを保ち、家族や友人たちに思いを寄せながら探検に挑んでいることが、この手紙を通じて明確に示されています。物語の序章として、読者に彼の人柄を深く理解させる重要なシーンです。
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