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【パンのため、のみに"働くに"あらず】ノーベル経済学賞から考える「働く意義」

こんにちは!シンギュレイトnote編集部です。

突然ですが、あなたにとって「働く意義」とは何ですか?

お金のため、生活のため、家族を養うため、遊ぶため、社会に貢献するため、ステータスを得るため......働く意義は人によって様々でしょう。同じ組織にいる人でも、働く意義は異なっていることが当たり前かもしれません。

そんな中で、あなたは一緒に働くメンバーの働く意義を知っていますでしょうか?

メンバーの”働く意義”を知ることで、イノベーションに欠かせない「あるもの」をメンバーから引き出すことができます。

今回は、2023年のノーベル経済学賞を通して、”働く意義”について考える鹿内のコラムです。

京都大学などの研究機関の教員・研究員として、ヒトの脳(認知神経科学)の基礎研究に第一線で従事。その後、大手人材企業でピープルアナリティクスの事業開発に取り組む中、株式会社シンギュレイトを設立。”信頼”をキーワードに、人と人との新しい関係・関係性を作り、新結合(イノベーション)を増やすことを目指す。ピープルアナリティクスの技術、学術研究などの知見を活用し、イノベーティブな組織づくりを支援している。1on1での話し方・聴き方を可視化する1on1サポーター「Ando-san」、イノベーティブな組織への変革を促す組織診断「イノベーション・サーベイ」を提供中。情報量規準が好き、漫画好き、サッカー好き。
話し手:鹿内 学,博士(理学)シンギュレイト 代表

女性の職業参加の変遷

今回は2023年のノーベル経済学賞から「働くことの意義の重要性」を考えます。

まずは簡単に2023年のノーベル経済学賞についてご説明しましょう。今回受賞したのは、ハーバード大学の教授であるクラウディア・ゴールディン教授の研究です。その内容は、「男女の賃金格差の要因や労働市場における女性の役割などを研究」というもの。

ゴールディン教授の研究では、アメリカの200年分の労働市場のデータから「男女間の格差是正において何が重要なのか?」を分析しました。そして、「女性の労働参加の変化は、3つの進化的な段階を経て、1つの大きな革命的段階に至った」と考察しています*1。

これまで女性の就業率は、経済発展に伴って上昇すると考えられていました。しかし、主要産業が農業から工業に移り変わるなかで、既婚女性が仕事と家庭の両立が困難になり、女性の就業率は低下。そして、経済のサービス化が進んだ結果、革命的段階に至り、再び女性の就業率が増加する構造を明らかにしたのが今回の研究です。

*1:Goldin, Claudia. “The quiet revolution that transformed women’s employment, education, and family.” American economic review 96.2 (2006): 1-21.

アイデンティティが働く意義になる

労働参加の「進化」と「革命」を分けるなかで、ゴールディン教授はいくつか指標を挙げています。そのうちの1つが「アイデンティティ」です。

生活上必要だから家事をしている、という状態から、意志を持って職業を選択し、その職業にプライドを持っている状態に”ある”こと。これこそが、「仕事がアイデンティティになった」状態です。具体的には、高い評価や経済的な満足度を求めるようになりました。実際に女性の職業は、教師や秘書などだけでなく、医師や経営者など多様化しています。

「アイデンティティ」はさしずめ、「人はパンのため、のみに”働くに”あらず」と言ったところでしょうか。シンギュレイト主催の1on1セミナー『Ando-san レクチャー』でも、「信頼関係ができたら『働くことの意義・価値観・倫理観』まで踏み込んでみては?」と提案しています。

では、働くことの意義を見いだせると、どんないいことがあるのでしょうか?それは、「主体性」です。メンバーの内から、主体性を引き出すことができるのです。組織で働く一人ひとりが主体性を発揮できれば、生産性が上がることはもちろんのこと、これまでにないイノベーションを生み出すこともできるでしょう。

メンバーの主体性を引き出したいとき、「何のために働くのか?」をメンバーに問いかけてみてはいかがでしょうか?個人のアイデンティティにつながる答えが返ってきて、その人の「働く意義」が見えてくるかもしれません。


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