1on1の質を高めるセルフコーチングとは?得られる効果とやり方を解説します!![マネージャーにもメンバーにも]
こんにちは!シンギュレイトの杉山百恵です。
毎週○時間……毎月○時間……あなたの貴重な時間が、形だけの1on1で消費されていませんか?
― 何となく上司・部下と話す時間
― 特に進展のない、いつものルーティン
もし、あなたが今の1on1に少しでも疑問を感じているとしたら、"セルフコーチング"を取り入れてみませんか?
本連載は、マネージャー、メンバー、立場に関わらず、1on1をより良い時間にしたいと願うすべてのビジネスパーソンに向けて、セルフコーチングの基本から実践的な活用法をお届けしていきます。
第1回目は、セルフコーチングとは何か?5つの効果と1on1の質を高めるやり方について、分かりやすく解説します。
セルフコーチングとは?ありたい自分になる内省の技術
セルフコーチングとは、「ありたい自分」を実現するために、自らに問いかけ、内省を深めながら、より良い方向へ導く技術です。思考・感情・行動のズレを修正し、一致させることを目指します。
従来の「コーチング」は、コーチと呼ばれる専門家の指導のもとで行われるのに対し、セルフコーチングは、自分自身で感情と思考を整理し、行動を促していく点が特徴です。
まるで、自分自身をコーチングするかのように、目標設定、行動計画、進捗管理、問題解決などを主体的に行います。
セルフコーチングの5つの効果
セルフコーチングでは、思考・感情・行動のズレを修正・一致させることを目指す過程で、下記のような5つの効果が期待できます。
1. 自己肯定感の向上
自分自身を認め、受け入れることで、自己肯定感が高まり、自己成長を促進します。周囲と比較して落ち込むのではなく、今の自分を認め、未来へ向かって努力できるようになります。
2. ストレス軽減、心の安定
自分の気持ちに正直になり、行動と一致させることで、ストレスを軽減し、心の安定へと繋がります。周囲に流されて無理をするのではなく、自分の本心に従って行動できるため、精神的な負担を減らすことができます。
3. 迷いの減少、行動力アップ
思考、感情、行動が一致することで、迷いが減り、行動に移しやすくなります。これまで「やらなきゃ」と思いつつ、重い腰が上がらなかったタスクも、目的に向かって本当に必要なタスクなのか判断することで、取捨選択がしやすくなります。
4. パフォーマンス向上、目標達成
感情と思考が一致すると、集中力とモチベーションが高まり、パフォーマンスが向上、目標達成へと近づきます。心から望む目標を設定すると、迷いなく行動ができるため、成果に繋がりやすくなります。
5. コミュニケーション能力の向上
自分自身の感情を理解し、意志を相手に伝えることができます。また、相手の立場に立って物事を考えることで、より円滑なコミュニケーションを図れるようになります。
セルフコーチングのやり方・注意点
セルフコーチングのやり方は、日々のルーティンとして実践できる「基礎編」と、目標達成に向けて定期的に行う「応用編」の2つの段階に分けられます
【基礎編】毎日の習慣で、心の土壌を豊かにする
まずは、セルフコーチングの土台となる、心の土壌を豊かにする習慣を身につけることが大切です。自己肯定感・自己効力感を育み、自信が持てるようになります。行うことは3つです。
自分を褒める:ないもの・できていないことにフォーカスせず、あるもの・できることに意識を向け、自分を積極的に褒めます。小さな成功体験を積み重ねます。
感情に蓋をしない:心から湧きあがった気持ちを、ノートに書き出す(ジャーナリング)・絵を描くなどして、可視化してみましょう。ポジティブな感情もネガティブな感情も、ありのままの状態を素直に感じます。
捉え方を変えてみる:ネガティブに感じてしまう出来事も、視点を変えれば、新たな発見や学びに繋がります。「~するにはどうすればいいだろう?」と、前向きな問いかけに変換してみましょう。
基礎編で注意してほしいことは、「自己否定しない」「自分に嘘をつかない」「小さな心の声を蔑ろにしない」です。
上記の3つを行うことで、心が安定した状態をつくることができます。そうなれば、自分と向き合う時間が、セルフケアにもなります。
【応用編】目標達成へ! 行動計画を立て、未来を創造する
応用編は、基礎編と並行することで、より効果を発揮します。ノートやメモアプリを使用し、下記の手順で思考を整理しましょう。
目標設定:「どんな自分でありたいのか」「どんなチームを作りたいのか」など、理想の状態を具体的な目標や価値観・理念を設定します。
現状分析:現状における課題や問題点を明確化します。
行動計画:目標達成のために、具体的な行動計画を立てます。
行動記録:行動に移せたこと、移せなかったこと、その時の感情などを記録します。
振り返り:行動記録を基に、良かった点、改善点などを振り返ります。
応用編のサイクルは、まず、1週間から始めてみて、慣れてきたら3ヶ月、1年というスパンで振り返りを行いましょう。
注意点としては、目標設定で自分の軸となる価値観・理念が見つかっても、他者への強要はNGです。価値観・理念の押しつけはハラスメントのリスクを孕んでいます。あくまで、自分を動かすための指針としてください。
1on1の質を高めるセルフコーチング
セルフコーチングは、1on1やマネジメントの質を高めるうえで役立ちます。1on1をするメンター(マネージャー)だけでなく、メンティー(メンバー)にもおすすめです。それぞれの立場における効果を紹介します。
メンター(マネージャー)にとっての効果
1on1が、単なる進捗確認や業務指示の場になっていませんか?1on1は、メンバーの話を聞き、価値観などを理解し、成長に導く場です。しかし、忙しさからメンバーの話を聞けず、業務の話をしてしまったり、教えてしまったりすることがあると思います。ですが、それでは状況は変わりません。
そんなとき、「メンバーに対して、どのような気持ちで向き合っていますか?」と、自分に問いかけてみてください。この問いに答える手段として有効なのが、セルフコーチングです。
セルフコーチングを通して、自分自身の価値観や行動パターンを深く理解しましょう。そうすれば、先程の問いに対する自分なりの答えを出せます。
メンバーへの向き合い方が定まれば、メンバーに対する向き合い方も変わります。なんとなく「育成しないとな」という状態から、「〇〇に向けて育成・マネジメントしよう」という意志をもって向き合えるようになるのです。
また、自分軸を持つことで、自信を持ってマネジメントを行えるようになるでしょう。自分を知ることが、メンバーの成長サポートにもつながるのです。
メンティー(メンバー)にとっての効果
業務報告で終わる機械的なやりとりや、マネージャーの意見を聞くだけの一方通行なコミュニケーション……1on1を、なんとなく受け答えするだけの時間にしていませんか?
1on1は、あなたのキャリアの可能性を広げ、在りたい自分に近づくために、メンターであるマネージャーが行ってくれる貴重な時間です。しかし、先に記載したように、業務進捗の話だけ、マネージャーからの一方的に話を聞くだけ、といった1on1になってはいないでしょうか?このような1on1をメンバーの立場から変えませんか?
メンバーの立場からより良い時間にしていくために、セルフコーチングは武器になります。セルフコーチングによって、自分の価値観を理解することで、マネージャーに、自分のことを正しく伝えられるようになるためです。
例えば、「1年後、どんな仕事に挑戦していたいですか?」と、自問自答してみましょう。過去の経験や成功体験を振り返りながら、あなたのキャリアプランを具体的に描くことで、
ができるようになりますよ。マネージャーはあなたのキャリアのすべてを把握しているわけではありません。マネージャーに理解してもらうためには、自分のことを深く理解し、棚卸しをする必要があるのです。
セルフコーチングを通して自己理解を深め、開示することで、マネージャーはあなたの価値観や考えをより良く知り、さらには新たな一面をも知ることができるでしょう。その結果マネージャーは、あなたに適したマネジメントを考えられるのです。
1on1を「評価」してもらう場から、「可能性を共創する」対等なコミュニケーションの場に変えていきましょう。
まとめ
セルフコーチングは、特別な人のためのスキルではありません。誰でも、今日から実践できる、自分自身を成長させるための方法です。自分自身に問いかけてみませんか?
「どんな自分でいたいんだろう?」
内面とじっくり対話するうちに、あなたの中にある想いや価値観が、次第に明確になっていくのを感じるはずです。
それは決して「自分さえよければいい」という自己中心的な考え方ではありません。むしろ、自分自身と深く向き合い、「心の声」に耳を傾けることで、周囲の人たちへの理解や共感も深まり、関わりの中で力を発揮できる環境を築けるようになります。
そうやって培われた自己対話力は、1on1の質を上げる土台です。セルフコーチングは、1on1をするメンター側にも、1on1を受けるメンティー側にも役立つのです。
是非、セルフコーチングを取り入れ、1on1でより深い対話と相互理解をしてみてください。きっと、個人と組織の成長を促す、豊かなコミュニケーションを生み出すことができるでしょう。
今後の連載では、セルフコーチングのより具体的な実践方法や考え方をお伝えしていきます。ぜひ、フォローやスキ、お願いします!