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コンフォートゾーンとは?成長の3段階とパフォーマンスを高める3つの行動[セルフコーチングするうえで知っておきたいこと②]

こんにちは!シンギュレイトの杉山百恵です。

新しいことに挑戦はしたいけど、習慣を変えることへの抵抗感や不安でなかなか踏み出せない…。そのようなご経験が誰しもあるのではないでしょうか?

実は、それはとても自然な感情です。人は「コンフォートゾーン」と呼ばれる安全な場所に留まりたがるもの。でも、もしその一歩を踏み出せたら?

この記事では、コンフォートゾーンとパフォーマンスの関係や変化を阻む心理的要因、コンフォートゾーンを広げる具体的行動を解説します。新たな可能性の発見のヒントがここにありますよ。コンフォートゾーンについて理解し、セルフコーチングに活用していきましょう。

執筆者:杉山 百恵

コンフォートゾーンとは?

コンフォートゾーンとは、快適で安全・安心な領域のことです。物理的な空間だけでなく、心理的な空間にも存在します。慣れ親しんだ環境や行動、人間関係の中で感じる安心感や安全性を指します。

コンフォートゾーンの具体例

スポーツにおけるコンフォートゾーン
スポーツにおけるコンフォートゾーンとは、選手が心理的に安定し、高いパフォーマンスを発揮しやすい状態を指します。特にホームゲームでは、慣れ親しんだ環境やサポーターの応援などがプラスに作用し、選手は実力を発揮しやすい傾向にあります。

一方、アウェイゲームでは、異質な環境やプレッシャー、遠征による疲労など、様々な要因が選手の心理状態に影響を与え、コンフォートゾーンから外れてしまうことがあります。これにより、集中力の低下やパフォーマンスの変動を引き起こし、試合結果に大きく影響を与える可能性があります。

ビジネスにおけるコンフォートゾーン
ビジネスにおけるコンフォートゾーンとは、個人が心理的に安定し、予測可能な状況や業務に身を置くことで、ストレスを感じることなく仕事を進められる状態を指します。

長年同じ部署で同じような業務をこなし続けることは、まさにコンフォートゾーンの中にいる典型的な例です。 慣れた仕事は効率的に進められ、安定した成果を出せるというメリットがあります。

一方で、人事異動や新しいプロジェクトへの参加など、これまでと大きく異なる環境は、コンフォートゾーンの外側に身を置いていると言えます。新しい部署、新しい役割、新しい人間関係など、未知の要素が多く、適応するために一定のストレスを伴います。

コンフォートゾーンとパフォーマンスの関係

セルフコーチング連載第2回の記事では、セルフイメージがコンフォートゾーン、そして最終的にパフォーマンスへ影響を与えるとお伝えさせていただきました。

図表1

図表1は、無意識による心の動きを表した図です。この図からもわかるように、コンフォートゾーンはパフォーマンスに直結します。慣れた環境や役割などでは、高い生産性とパフォーマンスが発揮できるでしょう。それは、慣れた環境が安心・安全な場所だからです。

しかし、コンフォートゾーンから一歩外に出ると、緊張や不安、プレッシャーなどのストレスを感じます。みなさんも、新しい職場で働くときに感じたことがあるでしょう。ストレスを感じると、思考を司る脳(前頭葉)の活動が過剰になり、思考力や集中力が低下するため、本来の実力を発揮できない可能性があるのです。

ただ、コンフォートゾーンの外に出ることは悪いことではありません。逆に言うと、コンフォートゾーンに居続けることも良いことではないのです。

コンフォートゾーンに留まるデメリット

コンフォートゾーンは、時に変化や成長を阻む壁となります。コンフォートゾーンに居続けることは、心地よいことです。ですが、心地よいからこそ、現状維持バイアスや損失回避といった心理的な要因が働いてしまいます。

  • 現状維持バイアス:人は現状を変えることに抵抗を感じ、現状維持を好む傾向があります。変化に伴うリスクや労力を避けようとする心理が働きます。

  • 損失回避:得ることよりも失うことを恐れる心理です。コンフォートゾーンの外に出ることで、何かを失うかもしれないという不安が行動を阻害します。

これら2つの心理的要因が、新しい挑戦への壁となってしまうのです。

では、どのゾーンを目指せばいいのでしょうか?次章では、コンフォートゾーンの外に広がる領域を紹介します。

コンフォートゾーンの外に広がる領域

私たちが、成長や目標達成のために現状の変化を求めたとき、コンフォートゾーンの中にいることが必ずしもいいこととは限りません。その外へと足を踏み出さなければならないのです。では、コンフォートゾーンの外側にはどのような領域が広がっているのでしょうか?

ミシガン大学ビジネススクール教授ノエル・M・ティシー氏は、人間が成長するときに身を置く環境を3つに分類しました。コンフォートゾーン・ストレッチゾーン・パニックゾーンです。本章では、コンフォートゾーンの外に広がる2つの領域を紹介します。

ストレッチゾーン

コンフォートゾーンのすぐ外側に広がるのがストレッチゾーンです。この領域は、適度な挑戦とプレッシャーが存在し、現状の能力では少し背伸びが必要な状態です。慣れ親しんだやり方ではうまくいかないため、新しいスキルや知識の習得、今までとは異なるアプローチを試みる必要が出てきます。

ストレッチゾーンにいることは、時に不安やストレスを伴いますが、乗り越えることで大きな成長につながります。新しい経験を通して能力が向上し、自信がつき、コンフォートゾーンが拡大していく好循環が生まれます。

例えば、人前で話すのが苦手な人が、少人数のプレゼンテーションに挑戦してみる、新しい部署に異動してこれまでとは違う業務に挑戦してみる、などはストレッチゾーンでの活動と言えるでしょう。

適度な挑戦は、モチベーションを高め、創造性を刺激し、潜在能力を引き出す効果があります。

さらに、ストレッチゾーンの成長過程を細分化すると3つの領域に分けられます。

フィアーゾーン
コンフォートゾーンから一歩踏み出した時に感じる、不安や抵抗感が強い領域です。未知の領域への挑戦に対する恐怖や不安、自信のなさなどが特徴で、周囲の意見に影響を受けやすく、コンフォートゾーンに戻ろうとする傾向があります。しかし、この領域は一時的なものであり、恐れずに乗り越えることでラーニングゾーンへと進むことができます。

ラーニングゾーン
新たな挑戦や学習を通じて、スキルや知識を習得できる領域です。適度なストレスと挑戦が存在し、それが成長を促進します。新しい学びや経験を通してコンフォートゾーンが拡大していく段階であり、課題はありますが、経験を通してそれを乗り越える力も身につきます。

グロースゾーン
大きな成長や変化を遂げられる領域です。新たな挑戦を乗り越え、達成感や自信が得られます。明確な目的意識を持ち、主体的に行動できるのが特徴です。失敗やリスクを恐れず、自らの限界に挑戦する力と高いレジリエンス(回復力)があります。

パニックゾーン

ストレッチゾーンを超えてさらに外側に広がるのがパニックゾーンです。この領域は、過剰なプレッシャーと不安に支配され、能力をはるかに超えた挑戦に直面する状態です。

パニックゾーンでは、極度のストレスにより、本来持っている能力を発揮することが難しくなります。思考力が低下し、冷静な判断ができず、ネガティブな感情に押しつぶされてしまう可能性があります。新しいことを学ぶどころか、自信を失い、自己肯定感が低下し、燃え尽き症候群に陥ってしまう危険性も高まります。

例えば、十分な準備期間もなく、専門知識も全くない状態で大規模なプロジェクトのリーダーに任命される、などはパニックゾーンと言えるでしょう。

パニックゾーンに陥ることは、成長につながるどころか、心身に悪影響を及ぼす可能性があります。大切なのは、自分の能力と現状を客観的に把握し、どの程度の挑戦が適切なのかを見極めることです。

コンフォートゾーンを広げるメリット

コンフォートゾーンから踏み出すことは、一時的に不安や困難を伴います。しかし、それを乗り越えた先にこそ、大きな学びと成長が待っているのです。ここでは、コンフォートゾーンから踏み出し、広げることで得られる5つのメリットを紹介します。

自信につながる
コンフォートゾーンを踏み出し、困難な課題を乗り越え、目標を達成することで、自分に対する期待感と自信が育まれます。「自分にもできる」という成功体験は、自己肯定感を高め、更なる挑戦への原動力となるでしょう。

視野の拡大
新たな挑戦は、これまで得られなかった貴重な経験と学びをもたらし、視野を広げます。異なる環境や人との出会い、予期せぬ事態への対応など、すべてが成長の糧となります。

適応力が高まる
コンフォートゾーンから出ることは、新しい変化への対応にほかなりません。変化への対応を繰り返すことで、環境変化への適応力が高まります。変化を恐れず、柔軟に受け入れることで、どんな状況にも対応できる強さを身につけることができます。

パフォーマンスの向上
コンフォートゾーンの外で得た経験や学びは、実践的なスキルへと昇華され、仕事やプライベートなど、あらゆる場面でより良いパフォーマンスを発揮できるでしょう。

イノベーションの促進
コンフォートゾーンを踏み出すことで得た新たな視点や発想は、イノベーションの原動力となります。現状に甘んじることなく、常に新しい可能性を探求することで、革新的なアイデアが生まれる土壌を育むことができます。

コンフォートゾーンを広げる具体的な3つの行動

5つのメリットを享受するためには、意識的にコンフォートゾーンから踏み出ていかなければなりません。本章では、コンフォートゾーンを広げる具体的な3つの行動をご紹介します。

1. いつもと違う選択をする

これは、最も手軽に始められる方法の一つです。これまでの自分では選択しないことをあえて選択してみてください。変化のふり幅が小さい選択から始めてみましょう。

例えば、いつもと違うランチメニューを選んでみる、行ったことのない場所へ出かけてみる、いつもは選ばない色の服を着てみる、興味はあるけど何となく敬遠していたジャンルの本を読んでみる、など。

ほんの些細な変化でも、新しい刺激や発見につながり、コンフォートゾーン拡大の第一歩となります。

新しい選択肢を選ぶ際に感じるわずかな抵抗感こそが、あなたがコンフォートゾーンから一歩踏み出している証です。この小さな一歩の積み重ねが、やがて大きな変化へと繋がるでしょう。

2. 環境・人間関係・時間の使い方を変えてみる

より積極的に変化を取り入れたい場合は、環境、人間関係、時間の使い方を意図的に変えてみるのが効果的です。

新しいコミュニティに参加してみる、朝のルーティンを散歩や瞑想に変えてみる、週末の過ごし方を変えてみる、といった行動が考えられます。

新しい環境や人との出会いは、新たな視点や価値観に触れる貴重な機会となり、自身のコンフォートゾーンを広げるきっかけとなるでしょう。

3. アファメーション(肯定的な自己暗示)

アフォメーションとは、自分の理想やポジティブな未来、目標を達成した状態を思い描き、肯定的な自己暗示をすることです。

アファメーションは、自己肯定感を高め、行動への抵抗感を減らす効果があります。「私はできる」「私は挑戦を楽しめる」「私は変化を受け入れられる」といった肯定的な言葉を、朝起きた時や夜寝る前などに心の中で、あるいは声に出して繰り返し言い聞かせてみましょう。

肯定的な自己暗示をすることで、潜在意識に働きかけ、自己暗示の臨場感が高まります。その臨場感に引っ張られることで、コンフォートゾーンから踏み出しやすくなります。

これらの行動を効果的に実践するためのポイントは、目標に対して行動を細分化することです。そして小さく行動できるところから始めて、変化に慣れていくことです。

大きな変化をいきなり目指すのではなく、「一日一善」といった小さな目標を設定し、自分との約束を守ることで、自信を育み、更なる挑戦へと繋げていきましょう。

まとめ:コンフォートゾーンを広げ、自己の可能性を見出そう!

本記事では、コンフォートゾーンについて、パフォーマンスへの影響、コンフォートゾーンに留まるデメリット、コンフォートゾーンを踏み出すメリット、そしてコンフォートゾーンを広げる具体的な行動について解説しました。

コンフォートゾーンに留まることは、一時的な安心感を得られる一方で、成長の機会を逃す可能性があります。コンフォートゾーンから踏み出すことは、新たな挑戦や学習の機会を提供してくれます。その過程で、自信や適応力が育まれ、視野も広がります。結果として、パフォーマンスの向上やイノベーションの創出にもつながるのです。

まずは小さな行動から始め、成功体験を積み重ねることで、自信を育み、さらなる挑戦へと踏み出すことができます。アファメーションなどを活用し、積極的に変化を取り入れることで、コンフォートゾーンを広げ、自己の可能性を見出していきましょう。

考察:コンフォートゾーンの理解は、1on1やマネジメントにどう活きるか?

最後に、今回の内容が1on1やマネジメントにどう役に立つのか考察していきます。

コンフォートゾーンの理解は、マネジメントや1on1においてメンバーの成長をサポートすることに寄与すると考えています。

マネージャーは、メンバーを育成する役割を担っています。育成とは、メンバーをコンフォートゾーンの外に導き、そしてコンフォートゾーンを広げていくこととも言えるでしょう。そうであれば、コンフォートゾーンの理解、そして広げる方法を学ぶことは、メンバーの育成に役立ちます。

例えば、1on1では、メンバーのコンフォートゾーン、つまり「現状で無理なくできる範囲」を丁寧にヒアリングしてみましょう。得意な業務、不安に感じる業務などを把握することで、コンフォートゾーンから踏み出す適切な目標を考えることができます。

目標達成までの過程(ストレッチゾーン)にストレスはつきものです。ストレスを軽減するためには、周囲のフィードバックやサポートを通じて自律性を尊重することが望ましいです。成功体験だけでなく、失敗から得た学びも共有することで、更なる成長に繋がるでしょう。

また、イノベーションが求められるいま、チーム全体がコンフォートゾーンを広げ、新しい挑戦に意欲的に取り組むことが求められています。メンバーが自由に発言し、失敗を恐れずにチャレンジできる雰囲気は、創造性や革新性を育み、チーム全体のパフォーマンス向上に繋がる可能性を秘めています。

このように、メンバーが安心して挑戦できる環境を整備することは、個々の成長促進だけでなく、組織全体の活性化にも繋がる要素と言えるでしょう。


今後の連載では、セルフコーチングのより具体的な実践方法や考え方をお伝えしていきます。ぜひ、フォローやスキ、お願いします!