IBDだって世界にはばたける
私の元患者さんがバンクーバーにワーホリに来ている。
奇跡のようだと思った。
だって、10年前彼は重い病気だったのだから。
ルイくんがUC(Ulcerative Colitis 潰瘍性大腸炎)を発症したのは彼が高校生の時。私は彼を直接担当していなかったが、採血や点滴の交換のときなど話をする機会があった。よく見る名前だな、また入院してるんだ・・・と思ったものだ。
IBD(潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患Inflammatory Bowel Diseaseの略称)は治療法が確立していない原因不明の自己免疫疾患だ。軽症の人も多いが、重症の人は入退院を繰り返して長期入院となることもある。
ルイくんは重症だった。ステロイドやバイオ(免疫抑制の生物製剤)などいろんな薬を試したけれど効果はかんばしくなかったようだ。最終的に彼は大腸全摘手術を受けて寛解となった。
十代の若者が大腸を全部摘出する。大腸がなくても人は生きていけるとはいえ、自分の臓器の一部を永久に失ってしまう・・・極めて重い決断だ。
この病気が罪深いのは、育ち盛りの10代〜20代での発症が多いことだ。身体的、社会的に成長する大切な時期に、長期入院しなければならなかったり、絶食などの厳しい食事制限があったりする。人生の一番輝かしい青春時代を、突然の便意や痛み、感染症と戦いながら過ごさなければならない。
入院のために学校に行けなかったり、受験勉強ができなかったりするので
進路変更を余儀なくされる患者もいる。野球少年だったルイくんも、その一人だ。
そんな大病を患ったルイくんが、カナダで働きながらIBDの人たちを助けたい!支えになりたい!と、勉強しながらさまざまな活動をやっている。病気が治ったからそれで終わり、病気のことはわーすれた!というわけではなかった。
彼はいつもニコニコしているが、病気による心の傷は計り知れないものがあったのだろう。
元患者だったからこそできること、彼はその思いが強い。確かに、いくら看護師が患者に寄り添っていると思っていても、患者サイドからは本音が言えないこともあるだろう。特に、難病なので世間にあまり知られていないから家族や友人にも理解されにくいことも多い。
そんなルイくんのコミュニティを紹介↓
海外で生活するだけでも大変なことだと思うのに、そんなにいっぱいいろんなことをやって体調は大丈夫か?と私は心配になる。でも、若さがあるから色々できるのだろう。
ルイくんのワーホリはもうすぐ終わってしまうが、これからも体を大切に、世界ではばたいてほしい。