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2020上半期 購入本 良かった9選
数年前からエクセルで家計簿をつけるようになって、関数なども覚え少しずづ使いやすくバージョンアップして、昨年あたりからようやく一つの形になった。
一年を通して支出品目ごとに金額を比べられるようにしているんだけれど、毎年ダントツで多いのが図書費。2020年上半期で使った額を発表しても仕方ないので、買って満足度の高かったもの9冊を紹介したい。
以下、大体購入した順番。
野口光の、ダーニングでリペアメイク
イギリス発祥のお直し、ダーニングのお手本の本。
要は、繕い物。靴下でもセーターでもTシャツでもなんでも直して使いたいあなたにピッタリ。
靴下に空いた穴を直す時、縫い目が盛り上がって肌に当たるのが不快だ、という人いませんか。そういう人にこそ、ダーニングをお勧めします。
小学校の家庭科で、手縫いの授業ってまだあるのかな。
自分で使うかどうかわからない布巾を縫うよりも、靴下の穴を楽しく埋める方法を教えた方が、その後の生活に役立つと思うんだけどいかがでしょう。
ちょっと偏った視点で言うと、この本の素晴らしいところは、ミネ・ペルホネンの洋服をお直ししているところ。
手芸本というより、ミナ・ペルホネン協力による野口さんの作品集という感じで、それが1400円なら実質ゼロ円。
ゴッホ展2019-2020 図録
昨年末から、今年の春にかけて、上野と兵庫で行われたゴッホ展の図録。
展覧会自体は終了してしまったけれど、図録はまだ各ネットショップで購入可能なので、行けなかった人、購入を迷って買わなかった人はぜひ。
キャンパスを思わせる表紙の装幀が素晴らしい。
今回の展示は、ハーグやクレラー・ミュラーの所蔵品を中心としたゴッホの初期作に注目したものだった。なので、展示全体のトーンはちょっと暗めだけど、ゴッホのデッサンの力強さと細やかさが堪能できるものだった。
夜景やヒマワリ、糸杉と言った植物、パリやアルルの町、浮世絵を倣った華やかな色彩の印象が強いゴッホだけれど、むせるような土のにおいがする初期作の方が、私は好きだ。
今回の展示で一番心を惹かれたのは、ハーグ所蔵の「鳥の巣のある静物(1885)」。 鳥の巣の、枝の一本一本が少し盛り上がるように描かれていたのに感動した。
名書簡であるゴッホとテオのやり取りも、抜粋ではあるけれ同時期製作の作品とともに図録に掲載されているので、読みごたえも抜群だ。
去年の雪
江國香織さんの今年の新刊。
まだ噛みしめている途中なので、感想はいつかどこかで。
ザリガニの鳴くところ
もうあらゆるところで語られているので、触れることはないもないのだけれど、2019年にアメリカで一番売れた本が、2020年日本で一番売れた翻訳書になればいい。
コロナと差別に揺れた2020年に、奇しくもふさわしい一冊になってしまったのではないか。
ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険
日経新聞土曜版の書評ページにあった書評記事を読んだその日に、偶然、近所の図書館で借りることが出来た。けれど、あまりに面白くて、借り本ですますのはもったいなく、改めて買い求めたという経緯がある。
著者のコーリー・スタンパーは元・ウェブスター辞書の編纂者。原書観光当時はまだ現役だったという。語学書より親しみやすい、エッセーと呼ぶには重量感のある、何と呼んでいいか難しい一冊だと思う。
日々進化していく現代の言葉に対峙している人が、日本以外にもいるんだなぁ、と、言葉があるなら当たり前のことをしみじみと感じてしまう。日本語の、ら抜き言葉とかさ入れ言葉とか若者言葉とか、そういうものに興味がある人にお勧めします。
そして、翻訳をしているメンバーの豪華さがヤバい。
妻が椎茸だったころ
以前記事にしたアンソロジーに収録されていたことで知った一冊。
早々にこちらの短編集も買い求めた。
表題作の「妻が椎茸だったころ」がとても好き。私の偏愛の例にもれず、お料理のシーンがある、台所が舞台の短編である。
「ハクビシンを飼う」もよかった。柔らかすぎるベッドマットの上では心地よく寝ることが出来ても上手に立てない、という感じの、安心と不安が入り混じる読後感だった。
昼の家 夜の家
こちらも紹介済み。 いくつかの物語が入り混じる形式は、江國香織さんの「去年の雪」にも似ている。偶然? 無意識であったけれど、私の中で群像劇というものがちょっとブームなのかもしれない。
先の記事では触れていないが、作中で語られる聖女クマ―ニスの物語が、とても印象深い。そこだけ取り出しでも一作とできる濃厚さで、頭の中をぐるぐるしている。
マルチ・ポテンシャライト 好きなことを次々と仕事にして、一生食っていく方法
アフターコロナ、ウィズコロナ、という言葉でこれからの社会、経済の在り方の変化が語られ始めている。まだ、世界的にも収束のめどが立たない中で、立ち止まれない辛さがあるが、流されたくない意地もある。
この混乱で忘れかけてたけれど、本当なら今年は5Gも実装されるはずだったんだよね。それだけでも、世界は変わるはずだった。
職人という生き方が好きな人は多い。だから、職人のように一つを極める人を称賛する機会も多い。アレもコレも出来る人は器用貧乏とか、便利屋と呼ばれて割を食うこともしばしば。でも、これからは、そんな人もしっかり重宝されるようになるといい。
文藝別冊 志村ふくみ 一色を、一生をかけて追い求め
なんて言いつつ、私も職人が好きである。
志村ふくみさんの文章というか、言葉は、織り上げる反物と同様に色鮮やかで柔らかく美しい。志村ふくみさんの作品は、幾度かだけ見たことがあるけれど、淡い色のものも力強くて、草木の生命力って、ここまで伝わるんだな、と感動したのを覚えている。
ちくま文庫に、志村ふくみさんと石牟礼道子さんの対談と往復書簡を収めた『遺言』があり、書店で手に取ったそのまま、その場で一気読みしてしまったことがある。(もちろん、その後購入して帰った)
一つのものと、ずっと対話を続けてきた人だからなのだろうか。志村さんの言葉は、ずっと聞き続けていたいように思うのだ。
本ムックの中では、ドナルド・キーンさんとの源氏物語についての対話が面白かった。
※
切りよく10選としたいところだったけれど、あと一冊がどうも決め切らないので、ここまで。
終わりのない積読との格闘は続く。