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#230【虎に翼語り】第1週(2) 物語における「母の不在」という「異界への入り口」

今日もお読みくださってありがとうございます!
今日のタイトル画像も、明治大学博物館で開催中の「虎に翼展」で展示されていた伊藤沙莉さん(たぶん直筆)の寅子イラスト。
引き続き、第2回について書きます。

↓ 公式サイトはこちら。人物相関図なども! ↓


第1週 The 1st stage "vs Mother Haru"

第2話 「スンッ」という問題提起と母の不在

講釈を垂れる?蘊蓄をひけらかす?

藤森……じゃなかった太一郎氏との見合いは破談。
太一郎氏は「きみィ、まさか私に講釈を垂れてるのか。分をわきまえなさい、女のくせにナマイキな。」「また口答えですか」とご立腹。

母はるは寅子に「見合い相手にくだらない蘊蓄をひけらかして!」と怒ります。

「私に講釈を垂れてる」に「ひけらかす」!
おおおおおお、そういうこと何回も言われたことある!
親にも元恋人にも言われた!

驚いた寅子の「ひけらかしてなんか!私はただ太一郎さんと社会情勢についてお話しできるのがうれしくて」という台詞が、頷きすぎて首がもげるほどわかる。
本気でうれしいと思って話してたし、怒られて本気でびっくりするんですよね、講釈を垂れたつもりも蘊蓄をひけらかすつもりも微塵もないんですよ。
もし今日でもこんなこと言う人が、いたら、それは言った側の内面の問題(古い価値観とかマンスプレイニングとか)だと思います。

この回からは、戦略家・花江ちゃん(森田望智)が兄嫁として大活躍。お姉さんぶった乙女な花江ちゃん、かんわゆー。
そして兄は相変わらずいいキャラである。

「スンッ」

そして序盤の名表現「スンッ」が出てきます。
わたしはリアタイ始めたのが6月ごろだったので、「スンッ」は今回が初めましてでした。
母はるや花江の母や花江が結婚式の段取りなどすべてを取り仕切ってるのに、何もしていない夫たちがすべて自分たちの手柄のような顔をしており、女たちは表立った場では急に無口になって控えめになる、この女たちのようすを表した言葉でした。

階段下という聖域

また、優三さんと寅子の関係性の素晴らしさよ……。
優三さんは最初から寅子にとってよき話し相手だったのね。
猪爪家におけるマイノリティ同士。
破談続きで"よき娘"であれない寅子にとって、居候の優三さんは唯一、遮らずに本音を聞いてくれる存在。(良き娘の呪いと言えば『アナと雪の女王』でも主題歌に書かれていましたね、普遍的テーマ。)

また優三さんにとっても、男系でも奥様でもない寅子は気の置けない存在だったことでしょう。のちにいい夫婦になるの超納得!
玄関入ってすぐの上り階段に寅子が腰かけ、階段下の居候部屋の優三さんとあれこれと本音で話す絵面は、見ているだけで居心地がよくてすぐに好きになってしまいました。

「母の不在」は異界への入り口

そこで事態を大きく展開させるのが「母の不在」というイレギュラーな事件です。
母はるが丸亀の親戚に不幸があってしばらく帰省することになります。

長新太の名作児童書『つみつみニャー』でも、母の不在から主人公と父親の奇想天外な物語が始まります。

物語において「母」という「日常を象徴する装置」の不在は、日常から逸脱した展開の契機となるのです(河合隼雄の受け売り)。

俺たちのルフィが女の諦観を語る

このとき印象的なのは花江ちゃんの実家の女中の稲さん(田中真弓)。
なんと俺たちのルフィが女中さんに!!!

母の不在中のおさんどんは寅子。
花江と稲さんに手伝ってもらいながらお勝手に立ちます。

結婚だけが女の幸せだとはどうしても思えないでいた寅子に稲さんは突然

「女は男のように好き勝手できないからねえ。」
「受け入れちゃいなさい、何も考えずに」

と言います。
真弓さんの美声で真弓さんが言わなさそうなことをおっしゃる!

はる役の石田ゆり子さんも今まで「呪いから自由になった女性」を演じてきた方です

これがまた配役の妙というかストレス軽減措置というか、そういう経歴をお持ちのお二方だからこそ、ゴリッゴリの旧世代の価値観を演じても、役者と役がくっつきすぎず嫌な感じがしないのかなと思いました。
寅子がそれでも対話を求めていくに足る人物象として造形されている。

このシーンでは、何の話か具体的に言わない稲さんのアドバイスに対して寅子は「そう……なんですかね」と敬意を持ちつつも懐疑を示す一方、花江ちゃんが「なあに?どういうこと?」と聞いているのもうまい演出だと思いました。

この時点の花江ちゃんは旧世代の価値観をナチュラルインストールして「結婚=幸せ」に疑いを持っていないので、そもそも稲さんが何を言っているのかわからない。
ということはきっと、寅子がはっきりと話題に出していないのに稲さんが察して上記の助言をくれたのでしょうね。
稲さんも見聞色の覇気の使い手なんでしょうか。
まあ場合によってはクソバイス……とも言えるかもしれません。

レッツゴー異界!法律の世界へ

さて寅子は、法曹を目指して夜学に通う優三さんのためのお弁当作りが間に合わず、後から届けに行くことになります。
これこそ、ザ・母の不在!
完璧なる母の統治下ではそんなことは起きない。

そこで寅子が耳にした民法の授業では、

婚姻状態にある女性は無能力者

と語られていました。
初めて法に触れ、そこでの女性の扱われ方を知り、「はて?はて?はてはてはて……?」となってしまう寅子なのでした。
「婚姻状態にある女性は無能力者」ってなんかステータス異常みたいですね。「婚約をステータス異常みたいに言わないでッ」って何のマンガだったかな……『3月のライオン』だったかな。

あの、家庭内で万事を完璧に管理し、支配し、何人にも異論を許さない母はるが法的には「無能力者」だなんて意味がわからーん!

第3回に続きます!

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