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#227【劇評・賛】シネマ歌舞伎『連獅子・らくだ』

今日もお読みくださってありがとうございます!
最近、劇評続きではありますが、なんかそういう気分ですみません。
母とシネマ歌舞伎『連獅子・らくだ』を観てきました!

連獅子→らくだ と書いてありますが、実際には らくだ→連獅子 の順で放映されました。

らくだ

落語がもとの演目。
数年前、市川中車(香川照之)さんが歌舞伎座で演じたのを観に行きました。
シネマ歌舞伎では、故・中村勘三郎さんが紙屑買久六、故・坂東三津五郎さんが手斧目半次。名演技が楽しめます。

勘三郎さんのとぼけた久六が、歌舞伎らしい大げささもありながらリアルでした。弱くて臆病で小さくて人間らしくて面白くて愛らしい。
三津五郎さんの半次は何かというと刺青を見せてすごむやくざ者。
でも意外と、久六の言うことに耳を傾けます。言葉が通じる悪役。

同じ日本語を使っていても通じ合えない、これだけコミュニケーションツールが発達しても通じ合えない、現代にはない「他人に対する基本的な信頼」を感じました。
現実の人間は話通じない奴は通じない。

久六と半次の仕組んだ、死人のカンカンノウにおびえて転げまわる坂東彌十郎さんの家主女房おいくがめちゃくちゃよかった。
玄関の数段をクルクル転げながら落ちるところなんか勘三郎さんちょっと笑っちゃってたけど、毎回あれやってたらどこか痛めそう……。

中村屋の名お弟子さん、故・小山三さんも出演されていて中村屋ファン必見です!

連獅子

親獅子を中村勘三郎さん、仔獅子を実の息子である勘九郎さん、七之助さんが踊った舞台を映画監督山田洋二さんが映画化。しかも、舞台稽古を撮影したとのことで、普段の公演では見ることができないアングルからも観られます。

今や勘太郎さんや長三郎さんを仔獅子に親獅子を演じている勘九郎さんが演じる仔獅子なんてもう映像でしか見られません。

2007年の制作ということで、勘九郎さん・七之助さんは20代後半。仔獅子を演じるのも初めてではありません。
力強く、安定した、見事なパフォーマンス。

でも、今年2月に猿若祭で長三郎さん10歳の仔獅子を2回も見てしまったくらたには、この、「20代後半」の「力強く」「安定した」というところに、ものたりなさを感じてしまった……。
それくらい、長三郎さんの、10歳ならではの、みずみずしい生命力、ひたむきさ、全力さが素晴らしかったのです。
↓ 長三郎さんの仔獅子レポはこちら ↓

そうそう、2月当時読み漁った長三郎さんの連獅子の評で一番素晴らしいとくらたが思って印象的だったのが、アメブロの「戯場国の幸運なる旅人」さんのこちらの文章です。

長三郎さんの様子は

溢れるあどけなさの中にきっぱりと決まろうとする鋭さ、追求・闘いがあって、それがとても見物人としては面白く感じました。

「きっぱりと決まろうとする闘い」………なんと的確で端的で美しい言葉選び!!
こういう文章が書きたい!!

……と、シネマ歌舞伎連獅子の話に戻すと、手に持った獅子頭の髪の扱いは、今年2月の勘九郎さんが一番素晴らしかったと思いました。勘三郎さんの獅子頭も、髪でお顔が見えない時間が長かったような……。

今思ったけど、連獅子って親から子へ引き継いでいくものだから、演じられる人が限られるなあ……。
くらたが観たのは、中村屋(勘三郎・勘九郎・七之助、勘太郎・長三郎)、澤瀉屋(市川猿之助、團子)、観たことはないけれどやっているのを知っているのは、音羽屋(尾上菊之助、丑之助)。

こうなると映像で残していただいて、かつての名優の演技を観られること、それをお安く観られるのはありがたいことです。(ちなみに、シネマ歌舞伎よりも幕見のほうが安いですので幕見はホントにお得!!です!)

たくさん見比べて違いを楽しめるのも、シネマ歌舞伎様さまだと思うのでした。

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