世間知らずの転職活動・フリー編 その19
JCLのヒアリングも終わり、Z社の川原社長との面談へ向かった。待ち合わせ場所の下北駅には、川原社長と怪しげな木本常務が2人で待っていて、連れて行かれた焼肉屋で、さらに怪しげな話をされるのであった。
前回はこちらです
契約なんてららら パート2
木本常務に何をやりたいか?と聞かれ、これからやりたいことを話すことになった。
私:『そうですね。今までCOBOLのエンジニアしかやってなくて、今回、転職にあたりJavaで開発ができる会社を探していたのです。ただ、なかなか難しい現実もあって、個人事業主として今回のプロジェクトに参画することにしました。』
川原:「うん。なるほど。」
私:『まずはJavaの開発に携わって基礎を固めつつ、WEB系の開発を数多くこなしていきたいと考えています。」
この怪しい2人にどこまで話して良いのか?
正直戸惑いながら、個人事業主として仕事をしていく上で、必要最小限の情報を控えめに話した。
木本:「いいねー。でもね、うちに来たら、もっといい経験できるよ!ね、社長」
川原:「うんうん。そうそう。うちに来たらね。」
私:『えぇ・・・。なにか具体的なものがあったりするのでしょうか?』
木本:「そりゃね。Javaの案件、たくさんあるよ。ねぇ、社長」
川原:「うんうん。そうそう。Javaの案件ね。」
私:『そうなんですね。。。』
2人と話してるが、営業の上田さんのことは責めていたけど、Z社のこととして誤ってもくれないし、案件についても具体的な話は一切してくれない。本当にそんな案件あるのかなぁ?と話せば話すにつれて、不信感が募っていった。
事業部長?
木本:「そう。でもね。佐藤さんには、もっといい案件がいいと思うよ。」
私:「え?どんな案件ですか?」
木本:「飯田専務も佐藤さんは仕事ができるって言ってたから、もっとね、いい案件を任せたいんだよ。」
本当に飯田専務がそう言ったのか疑いながら耳を傾けた。
木本:「佐藤さんはね、もうJavaだけじゃなくて、プロマネをやってもらいたいんだよ。プロマネ。ねぇ、社長?」
川原:「そうそう。プロマネの案件ね。」
私:『はい・・・。』
木本:「プロマネの案件もうちはたくさんあるから、そのうちの一つをお願いしたいと思ってるよ。」
結局、具体的な話にはならないんだなぁ。と思いながらビールを飲んだ。
木本:「あ!そうだ。社長、あれもお願いしちゃったらどうでしょう?あれですよ?」
川原:「ん?なに?どれ?」
2人で目を合わせ、ああ、あれか、とうなずきあった。
木本:「新しい事業部をね、今度、作るから。そこの事業部長をやってもらったらいいと思うんだよ。ねぇ、社長?」
川原:「そうそう。事業部長。佐藤さんならできるよ。きっと。」
「え?」と心の中で驚愕した。
だって、さっき、1時間ほど前に会って、まだ、仕事の話もまともにしてないのに。。。
会社の事業部長なんて、何を根拠にできるとおもったんだ?この人たちは。
と、不信感だけが心の中で広がった。
私:『あ、ありがとうございます。うれしいですが、そんな重要な役割できるかどうか分からないので。。。考えさせてもらって良いですか?」
木本:「そうだよね。急に言われても困るよね。次の契約までに考えてもらえれば良いから!ねぇ?社長?」
川原:「うん。そうだね。次の契約までに考えてもらえればいいよ。」
この後、他愛のない会話となり、約2時間の焼肉屋での打ち合わせは終わった。
このZ社あっての上田さん・・・というのが納得できた打ち合わせであった。
「もう遅いから、明日、飯田専務に電話してみよう。」と、川原社長、木本常務にどうやって断ろうかと考えながら、帰路についた。
次の体制へ
次の日、会社に着いて、まず大川さんに昨日のことを伝えた。
大川:「まぁ、それは、怪しいね。でもすごいね、会ってすぐなのに事業部長になれるなんて。」
私:『いやぁ、本当にそうなんだよね。話せば話すほど、具体的な話から遠くなっちゃうし、どんどん不安になっていってさ。」
大川:「そうだよね。いったい事業部長になって何をやらそうとしてるのやら?」
私:『どうやって断ろうか考えてるよ。』
事業部長、プロジェクトマネージャー、何々の責任者。大きな肩書を語れば、すごいと思う人が世の中にいるのだろう。そうやって大きな話をして、なびく人をたくさん集めてるんだろうなZ社は。と思いながら、大川さんと笑い話として終わらせた。
大川:「飯田専務には、直接連絡して話した方がいいよ。きっと、Z社よりは悪くはならないと思うよ。」
私:『うん。そうだね。』
飯田専務もどこまで本当のことを言っているか分からないけど、憎めない何かがあった。信用しても良いと思わせる人柄?いや人柄ではないな。憎めない何かがあったのだった。
大川:「あ、そういえば、課金サブシステムのヒアリングは明日らしいよ。一通りのサブシステムをやって、一番最後らしい。赤井さんと我々の3人だって。」
私:『あ、そうなんだ。昨日のJCLのヒアリングも時間がかかったからね。他のサブシステムもそれなりにかかるんじゃないかな?』
大川:「うん。それで、結果的に最終的な体制が決まるらしいよ。Fシステムの社員が責任者でついて、赤井さんも我々もその下につくことになるみたい。」
Fシステムがしっかりとコントロールできる体制になっていくようだった。今まで、Tシステムが雇っていたSE部隊がそれぞれのサブシステムで個別に動いていたから、誰かがしっかりと纏められる体制とするのは正しいと思った。
大川:「赤井さんは、この先仕事どうなるんだろう?って焦っていたけど」
「笑」
大川:「でも、12月末の納品を目指すところは変わらないみたいだから、雰囲気、Tシステムの立花さんたちも、そこまで残りそうな感じだよね。」
そうか。
そうであれば、薩田さんもまだ残っているんだな。よかった。
でも、町田遊軍はどうなるんだろう???
町田さんのことが気になりながら部屋を出た。
安心していいから
電話ができるところに移動して、飯田専務に電話をかけた。
飯田専務は速攻で電話に出てくれた。
飯田:「あ、おはよう!で?昨日どうだった?」
飯田専務には、昨日Z社の川原さんに会うなんて一言も言ってないけど・・・。
きっと、大川さんが伝えてくれてたんだろう。と思いながら、そんなことも、おかまいなしに「昨日どうだった?」って、飯田専務もよほど気になっていたのだろう。
私:「はい。川原社長と木本常務にお会いしまして・・・」
昨日、2人にあって、焼肉屋に行ったこと。Z社に誘われたこと。そして、事業部長やプロマネをやらないか?と言われたこと。そして、信用していいのかどうか、正直悩んでること、を伝えた。
飯田:「いくらか言ったか?川原たちは?」
私:『いえ。そういうのは全然。』
飯田:「カッカッカッ!お前また騙されるぞ。」
私:『え?』
飯田:「Z社は上田も辞めたけど、あいつについていた技術者も一緒にいなくなったから、あの2人は焦って、引き留めしてるんだよ。だから、美味しい話ばかりしてるんだぞ。」
まぁ、経緯はともかく、そのような雰囲気は2人から感じていた。
飯田:「だから、まぁ、佐藤さんが、それでも事業部長とか、そういうのに興味があれば、選ぶのは自分だから、それはいいけどさ。」
私:『は、はい。』
飯田:「まぁ、Z社がダメだったらうちがあるから。うちも立ち上げたばっかりだけど、Z社よりかはマシだと思うぞ。なんかあったら、うちでどうにかしてやるから、気が向いたら連絡しろよ。な?」
そう言って、飯田専務は電話を切った。
Z社の川原社長、木本常務、I社の飯田専務、会社の規模や、やっている仕事は大して変わらないだろう。しかし、飯田専務との電話でもらった言葉は、ひとつの安心感となって、次の契約をどことするか?ということを決めるために必要な言葉だったように思えた。
契約のことは、しっかり考えて進めよう。
まずは目の前の、年末までのプロジェクトの成功を考えなければ、と、年末に向け忙しさを増すであろうプロジェクトへ戻ったのだった。
つづく
※この物語は経験をベースにしたセミフィクションです。
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