2001年公開の「千年女優」がめちゃくちゃ良かった件
現実と虚構がに入り交じる女優の半生
「千年女優、見に行かない?」
唐突に嫁に誘われて、千年女優という映画を見に行くことになった。
私は普段アマゾンプライムでアニメは見るが過去作は、話題になった作品や知り合いからオススメされた作品くらいしか見ない。
正直どんなストーリーかも知らず、評判も知らなかったが、近くの映画館でリバイバル上映をするらしいとのことで、嫁に連れられるがまま見に行くことにした。
そして見終わった感想。
すごすぎる・・・なんだこの作品は・・・
ネタバレのない範囲で、ストーリー紹介。
伝説の大女優・藤原千代子の一生を、現実と過去のが入り混じるインタビューを通じて、彼女の秘められし過去を辿る。
ストーリーにしてしまえばたったこれだけだが、(実際90分という短い映画だが)この90分いたるところで、終始驚愕しっぱなしだった。
この作品の監督、今敏は、PefectBlueや、パプリカ、妄想代理人など、虚構が現実に与え、現実と虚構が入り交じる作品が多い。(ちなみに私は妄想代理人しか見ていない)
この作品も、主人公の千代子が出てくるシーンは、作品の中の現実(といってもそれも”フィクションなのだが”)に起きた過去なのか、千代子が女優として演じている作品のなのか、それともインタビューを通して語られる脚色された”現実”なのか、その境がわからない演出がされる。
いま見ている映像は現実なのか虚構なのか、それが常に気になり、何気ない映像でも常に舐め回すように映像を見ながら確認する必要がある。どんなシーンでも集中して見る必要がある映画なのだ。
だが、90分と作品自体は短いので、まったく苦にならなかったし、虚構部分だとわかった時にツッコミを入れてくれる明るい雰囲気がまた良い。
(この辺は妄想代理人などとは違う点)
作品の構造が奥深すぎる(若干のネタバレあり)
先程も書いたように、この作品は、現実と虚構が入り混じり、何が本当で何が女優としての演技なのかがわからない、常にだまし絵を見せられているような作品だ。
「現実の過去」と思ってみていた映像が、実際には千代子が演じた映画の一コマであったり、映画の一コマと思われるシーンに「現実の人間」が出てきたりと頭が終始混乱させられる。
そして、それが現実か虚構なのかどちらであるかが分かる度に、「騙された~」となる。現実なのか虚構なのかがわからないように視聴者騙すという仕掛けを、女優という「人を騙す」職業を使って行うこの構造にシビれたね(唐突なタメ語)。
そして、この「現実だと思っていたら虚構だった、騙された~」となることで、いかに千代子が、女優として優秀であったかを、作品の構造を使って表現するその仕掛けがすげー!って感じる。
いい脚本はセリフですべてを説明しない、ということだと思うが、この作品は作品の構造を使って説明するという常軌を逸したやり方で表現している。
凄すぎ。。。
(ちなみに、推しの子の最近の話とかもこれに近い構造になってきていますね、凄いイイよね(唐突な語彙消失))
ただ、本当にこの作品が並外れて優れいていると感じるのは、千代子の表情の表現だ。
表情を通してキャラクターの心情を表現する、これがお芝居の基本だ。
だが、この作品ではその一枚上を行く必要がある。
なぜなら、千代子の表情は、それとも千代子のリアルな表情なのか、作品内の虚構としての演技としての表情なのか。その2つを書き分けなければいけない。
「表情の演技をする表情」と「本当の気持ちに沿ったリアルな表情」、この2つをアニメーションで書き分けるというのは素人の私が想像しても容易いものではないことは想像出来る。
だが、この作品はそれが出来てるのだ。
この記事を書いていていまだに言語化出来ないが、だが見ているとどちらの表情なのかが、なぜか分かるのだ。
しかも、違いがわからないシーンであっても、それが逆に「千代子がいかに名女優だったかを裏付けるもの」であるかが伝わる。
ちょっと凄すぎないか・・・。
アニメーション評論で、作画が良い、悪いという言葉を最近はよく聞くが、
本当の作画の良さというのは、絵の綺麗さ、パースの正しさでは決してなく、「作品の伝えたいメッセージを汲み取った上でそれに見合った最適な絵を提供しているか?」ではないか?
と思ったりもした。
本当に凄い作品に出会ってしまったなあと感じる、あっという間の一時間半だった。
終わり方もとってもスッキリする後味のよい終わり方で、文句なしの100点の映画だった。誘ってくれた妻には感謝しかない。
映画の感想でここまで長い文章を書いたのは始めてだが、それぐらいの価値のある作品です!
2週間の期間限定上映なので、ぜひ映画館で見よう!!