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ペットは糠床

糠床を飼っている。
茄子や胡瓜、大根や人参、茗荷などを漬ける。低温で長い時間漬けたものが好きだから、野菜室で2日漬ける。一度に2日分漬けて、半分は翌日のために取っておく。

糠床との出会いは小学校6年生の時だ。海外に長期旅行にいく祖父母から糠床を預かった。それは祖父が2〜30年使い続けている糠床で、祖父母の家を訪れる度「おこおこ食べな」とよく浸かった糠漬けを食卓に並べてくれていた。預かった時期が丁度夏休みだったものだから、私は糠床をテーマに自由研究をした。漬ける時間や温度を変えて、よりおいしい糠漬けを目指して考察なんかをした。ちなみに冒頭に触れた漬け方が行き着いたベストである。糠床の研究はなんと県の代表にまで選ばれて、糠床は私の黄金期を象徴しているといっても過言ではない。

その夏休みが終わると、糠床はすっかり祖父母に返してしまってそれ以来しばらく糠床を触る機会は無かったのだけれど、去年偶然無印良品の「発酵ぬかどこ」に出会った。これは糠床が入った袋に野菜を入れて冷蔵庫に入れておくだけ、毎日のかき混ぜもいらないという代物で、出会った瞬間昔の糠床へのパッションが蘇ってしまいすぐ購入したのだった。
毎日、自家製のおいしい漬物が食卓に並ぶ幸せ!糠床に足し糠をしたり鷹の爪を入れたり卵の殻を入れたり、まさしく手塩にかけた糠床はどんどん愛おしくなってくる。私はさらに琺瑯の糠床用容器まで買い与えてしまって、我が家の糠床は野菜室に不動の地位を手に入れた。

もはやペットである。私がお世話をしなければならない。2日にいっぺん空気を抜くためにかき混ぜ、水抜きをしたり、足し糠やからしを与えたり、甲斐甲斐しく世話をする。手をかければかけるだけ、時が経てばたつだけ味に深みが出ておいしい漬物を漬けてくれる。なんてかわいいやつなんだ。糠床にメロメロ。

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