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ペットは糠床

糠床を飼っている。 茄子や胡瓜、大根や人参、茗荷などを漬ける。低温で長い時間漬けたものが好きだから、野菜室で2日漬ける。一度に2日分漬けて、半分は翌日のために取っておく。 糠床との出会いは小学校6年生の時だ。海外に長期旅行にいく祖父母から糠床を預かった。それは祖父が2〜30年使い続けている糠床で、祖父母の家を訪れる度「おこおこ食べな」とよく浸かった糠漬けを食卓に並べてくれていた。預かった時期が丁度夏休みだったものだから、私は糠床をテーマに自由研究をした。漬ける時間や温度を変

    • 就活と自分-朝井リョウ「何者」

      以下は読書感想文のフリをした私の就活と、自分の性格の悩みです。 ・観察者ぶって、ありのままかっこわるい生身の自分で勝負できないこと ・夢を追うフリを理由に、就活がうまくいかない保険をかけていること ・留学経験やバイト経験をまるで鎧のようにかぶっていて自分自身の意見がないこと ・自分が考えていることを自分の日記の枠をでて、こうやってnoteやTwitterの裏垢に公開してどこかの誰かに認めてもらおうとしていること これはそんな私を戒める為の小説なのではないかと思った。自分の

      • 偏頭痛の記憶-藤沢周「オレンジ・アンド・タール」

        偏頭痛持ちである。大学生になって随分とその頻度は減ったものの、中高生時代月に一度はやってくる酷い偏頭痛に悩まされていた。 冒頭に出てくる偏頭痛の表現がいやにリアルで、あの感覚が蘇ってくる。 -視野の端っこに小さなノイズの塊が見え始め -このセンキアンテンがだんだん大きくなって、どこを見ても番組の終わったテレビ画面なノイズに世界が覆われると、今度は頭の右か左かどっちかが異常に痛くなってきて、吐き気がしてくるのだ -頭の右奥に脈を打つような痛みの塊ができ始めて、そこから声が

        • 迷子への憧れ-小川洋子「約束された移動」

          幼い頃、迷子になるのが夢だった。ショッピングモール、スーパー、駐車場、スキーゲレンデ、海水浴場。親と繋いだ手が離れた瞬間、私は迷子になるべく棚や車の影、人々の群れに溶け込んだ。 迷子になることが好きなのは、きっと、大きくなってからも変わっていない。勉強に行き詰まると予備校のあった街をふらふらと漂い、自分がどこにいるのか分からないほど遠くまで歩いて行った。留学先のプラハでもあてもなく歩きまわり、複雑に絡まる路地に迷い込んだ。 誰かに見つけて欲しい。もしかしたらそんな承認欲求がも

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