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偏頭痛の記憶-藤沢周「オレンジ・アンド・タール」

偏頭痛持ちである。大学生になって随分とその頻度は減ったものの、中高生時代月に一度はやってくる酷い偏頭痛に悩まされていた。
冒頭に出てくる偏頭痛の表現がいやにリアルで、あの感覚が蘇ってくる。

-視野の端っこに小さなノイズの塊が見え始め
-このセンキアンテンがだんだん大きくなって、どこを見ても番組の終わったテレビ画面なノイズに世界が覆われると、今度は頭の右か左かどっちかが異常に痛くなってきて、吐き気がしてくるのだ
-頭の右奥に脈を打つような痛みの塊ができ始めて、そこから声が聞こえてくる。

ああ思い出した。頭をかち割るような痛みと、頭の奥から聞こえてくる色んな声、知らない声、懐かしい声、大きな声、耳元で囁いてくる声。ガチャガチャに頭の中で鳴り響いて、現実の如何なる音や光も受け付けなくなる。
ようやく保健室に行き着きベッドに横たわり寝付けたと思っても、頭の中で1:2:√3の三角形と1:1:√2の三角形がぐるぐる周りだし、三角関数の計算を始めたりしてくる。国立西洋美術館にある大きなキュビズムの絵みたいな世界の夢の中で、いろんなものが大きくなったり小さくなったり巻き込まれたり離れていったりしている。

この本では他にも、
縦に横に切って今度は切り方が気になってくるような考えてる時の感触とか(これは今も)、
頭の中にある宇宙が狭くて、ものすげぇ真っ白い光が頭の中で炸裂してキレちゃう感情とか(キレた時私は怒るより泣いちゃうのだけど)、
なんだか苦しくて恥ずかしくて仕舞い込んで蓋を閉じてた中学高校の記憶が一気に蘇って、うわああこの感覚ぅ!ってなる読書体験でした。あんまりにも私の感覚がそこに書き表されていて逃げたくなるぐらい。

でもそんな痛みも辛さも恥ずかしさも、思い出して抱きしめてみたら愛おしくってたまらなくなってくる。

オンライン授業で、そもそも4年だから授業も少なくて、バイトも無くて、時間が有り余ってる今、こうやって超咀嚼しながらいろんな本を読み漁ることができているので少し記録に残します
読書感想文というより、私の青春の?思い出。

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