豊かさとは何かと聞かれたらこの店を紹介すれば良い
【コロナ禍】などという
愚にもつかない言葉が
飛び交うようになってもう大分経つ。
それを理由にした公演中止・延期、
幾多の後ろ向きな連絡を受けてきた。
そんな最中に仕事の依頼をしてきてくれた
貴重な方も存在する。
「ラジオに出てくれませんか」
あの時の喜び、ご依頼主様に
ちゃんと伝わってたかな。
そんな方が最近、第二の人生を
実にその人らしくスタートした。
K-mix・静岡FM放送。
沼津に生まれ、中学生の頃には
夜中にこっそり枕元に置いたラジオに
聞き耳を立てるのが習慣の
ラジオリスナーだった私には
FM=K-mixみたいな存在。
そのラジオ局で長らく番組制作に
携わってこられた、久保田克敏氏。
私をラジオの世界に引っ張り込んでくれた、
もうそれだけで人生の大恩人。
おかげさまで現在も毎週日曜、
『もにゃと朝橘』というレギュラー番組を
勤めさせて頂いている。
久保田さんの30数年に渡る仕事に
リスナーとしては触れてきたけど、
仕事で関わるようになったのは
上述の通りコロナ騒ぎが始まってからなので
ごく最近のこと。
何度かお話させて頂いて思ったのは
(うわー自分と似てるなこの人)
という。
一から十まできちんと説明したいところ、
でも皆まで言わずともな人が好きな感じ、
他にも色々。本当に色々。
ご本人に言ったことは無い、はず。
そんな久保田さんから唐突に、
でもわりと前もって、
しかもかなり平静なテンションで
K-mixを退社するご報告を受けた。
2021年末、静岡のライブハウス・UHU
で聴いたんだったかな。
そして次に何をするか、
そのために必要な一つ一つの
パーツの意味・理由、
それが自分と繋がった数奇なご縁について
じっくり丁寧に説明してくれた。
同じ報告を受けた他の関係者の皆様は
どういう風にそれを聴いて
どういうリアクションをしたんだろう。
私は久保田さんとほぼ同じ
まっ平らなテンションで普通に聴き、
内容に異論をはさむ余地が何も無いので
「特に違和感は無いですね」
とだけ答えた記憶。
だってそう思ったんだもん。
番組制作と全く同じように
自分の中で設計図書いて、
自分の手持ちのパーツの中から
それに必要なものを順番に選んで
組み立てる作業。
その精度が極めて高い。
そういう人の周りには
良いパーツが集まるんだね。
図面はパーツが欲しい、
パーツは図面が無いと何も分からない。
色と形みたいなもんで。
そんな歌あったな。
「もっとラジオのこと教えてほしいのに!」
「久保田さんが居ないと寂しいです!」
とか言えばまだ可愛げがあったのかな。
そういうセリフ、うち仕入れてないもので…。
そういう感情的なことや打算的なことより
違和感の無さ、久保田さんの仕事に対する
根本的な部分での一貫性が
とても良いものに思えたので
そういうリアクションだった、というのが
あの日あの時あの場所であんなだった理由です。
本日、4月9日土曜日。良い陽気。
そんな久保田さんの新拠点、
古書の街として有名な
東京都千代田区神田神保町に
まもなくオープンするその名も
「かふぇあたらくしあ」
プレオープンのご招待いただき
ありがたく伺うことに。
このお花出してるSTARMARIEこそ
久保田さんが愛してやまないお嬢様方五人による
ファンタジーユニットです。チェックしてみてください。
まず一杯目、お店の名がついた「あたらくしあブレンド」。
これから入って良かったというスッキリ感。
石田三成が豊臣秀吉に最初に出したお茶も
多分こういう感じ。
そしてまた良い器だこと。
それと一緒に頂いたのがベリーたっぷり乗せレアチーズケーキ。
あまり公表してないので
多分うちのかみさんくらいしか知らないと思うけど
ケーキ類の中ではチーズケーキが一番好き。
何故公表しないかと言うと
その情報に需要があると思えないから。
さておきこのレアチーズケーキは美味い。
甘さを控えてるという後ろ向きな表現より
これ以上甘さは必要ない、みたいな作り方。
二杯目、ブラジル・サマンバイア(シングルオリジン)
産地や生産者など、
身元が確かなコーヒー、ということ、だそうで。
こっちはさっきより深煎りで
個人的な好みはこっち。
そして次のお供はピスタチオ。
公表してないんだけどピスタチオ好きでして。
高校生の頃食べ過ぎてニキビ激増して
それでも懲りずに食べてたくらい。
ニキビってある日突然消えるんだね。
今悩んでる若者も大丈夫。多分。
コーヒーをどこから仕入れて
ナッツはどこの物でとか、
ここに全部書いても良いけど
それはもうすべて、お店で確認してください。
全てこれに書いてあります。
これ、お品書きです。
32ページあります。
一杯目のコーヒーを頼んで出てくるまでに
読み終えることができませんでした。
あの日口頭で延々と説明されたことが
全て文書化されてました。
最初からこれ配って歩けば
もうちょい報告が
楽だったんじゃないの久保田さん。
ご来店の際は必ず全部読んでください。
お作法として。
知らずに漠然と味わう店じゃないです。
知って理性的に喜んでから五感で
それを感覚的に確かめるんです。
この喫茶店は三本の柱で
形成されています。
一つはコーヒー。
あと二つは「クラシック音楽」
そして「蓄音機」
ありましたよ凄いのが。
見切れてるのがご店主、
左下にはガーベラ。
店内を優しく彩っております。
そのガーベラにもちゃんと意味があります。
1926年製のクレデンザ蓄音機、というそうです。
蓄音機の音、ちゃんと聴くのは
生まれて初めての経験でした。
音の優しさ温かさ、何とも言えない
深い味わい。
これはもう、説明のしようがないというか
言葉で伝えるものではないので
是非店内でお楽しみください。
にしてもまあ手間がかかる。
ご店主が一枚のレコードを手に取って
それがどういう時代の誰による作品か
きちんと説明してから置く。
針を確かめたり竹針ならカットしたり
横のハンドルをぐるぐるしたり、
その間も主の口は解説を紡ぎ続ける。
そして慎重に慎重に針を盤に乗せると
ゆっくり音楽が流れてくる。
これホントに、流れるという動詞が
ぴったりだと思った。
デジタルな機材では再現できない。
感覚的なことなのでこれも
実際確かめて下さいとしか。
曲が流れるとご店主は
邪魔にならないようにという配慮なのか
店の隅に音も無く移動する。
一曲終わるとまた音も無く蓄音機に駆け寄り
置く時とは対照的に
わりと無造作な感じに針をどかして
レコードを裏返したり他のに換えたり
針いじったりまたぐるぐるやったり
解説もどこかで散々やってきたのかってくらい
立て板に水。
で、またそっと針を置く。
曲流れる。久保田さんすみっコぐらし。
曲終わる久保田さんやってくる、
また上記作業の繰り返し。
義理の父が今、那須の山中に住んでいる。
2月に一家でお邪魔したんだけど、
リビングに薪ストーブがある。
これが実に暖かい。
暖房とは比べ物にならない。
ところがこれがまあ手がかかる。
煙が家の中に入らないよう
上手にやらないと大変なことになるとか。
実際になっちゃったことあるらしい。
また薪だから頻繁に
くべないといけない。
スイッチ入れてほっとけばいい
電化製品とはわけが違う。
そしてこの薪の確保が
本当に大変そうだった。
実の息子、私にとっての義兄が
それを称して「薪に追われる生活」
と言ってたとか。
手間だけ見れば正にその通りだと思うが
いざ薪ストーブを目の当りにしたら
その何とも言えない魅力に
すっかり取りつかれた。
何もせず、じっと眺めていたいような。
今日、蓄音機を前にして
またあの感覚に支配された。
これだけ物があふれる現代に、
誰しもが手に入れることができるわけでないモノ。
手間だけでなく広さとか物理的な課題もあるし
特に蓄音機は希少性という観点からも
そうそうお目にかかれる代物じゃない。
「一家に一台」という発想とは正反対の存在。
そんなモノと同じ空間で過ごせる体験というのは
真の豊かさの象徴ではないかと思う。
時間泥棒。もちろん賛辞。
ホントは小一時間滞在してお暇しようと
思って出かけた。
せっかちな性分なので
カフェでゆっくりは苦手。
まさかご店主に促されるまで
あの場に居続けられるとは
我ながら驚いた。
お土産にテイクアウト用のコーヒーまで。
紅茶のティーバッグみたいに
抽出するタイプらしい。
これもお店で買えるそうです。
お店のインスタをまずは眺めてみてください。
今日、内装を写真に撮らなかったのは
私がへたくそに撮ったやつ見るより
お店のインスタ見る方がよほど良いからです。
あたらくしあ、というのは
「心が平静な状態であること」を意味する
ギリシャ語だそうです。
これも公表してなかったんですけど
今日一日、何故か虫の居所が悪く
心がささくれてたんです。
「かふぇあたらくしあ」で過ごしたら
綺麗に治りました。
店名から何から全て久保田さんの目論見そのまま。
かないませんな。
「当たり前のことをさも凄いことのようにやる人より、
凄いことをさも当たり前のようにやるのが
本当に凄い人」なんだと
同業の先輩から言われたことがあります。
久保田さんもそういう人。
4月12日(火)オープン。
場所は千代田区神田神保町2‐12‐4エスペランサ神田神保町Ⅲ・B1階
地下鉄神保町駅「A4出口」から歩いてすぐです。
火~金…11:00~20:00
土日…11:00~17:00
月曜と第三日曜がお休みだそうです。
それと蓄音機ですが、
上述の通り手間かかりまくりなので
コーヒー淹れながら蓄音機回すわけにもいかず。
ですので毎月1回土曜の夜に
蓄音機を堪能するイベントを開催するそうです。
是非蓄音機沼に全身で浸ってください。
ブログとか始めた頃、よく言われたもんです。
「あんな長文読みたくないよ」
「長くて読めない」
「もう少し短くならないの?」
ならないのよ。
しかも長いと思ってないのよ当人。
そして今日もまた、
そう言われそうなものを書いてしまった。
でもこれを読んでほしい
たった一人のお方は多分苦も無く読んでくれる。
だってあの人からくるメール、
私と同じかそれ以上に長いもの。
次はちゃんと客として行きます。
いつか妻にも行ってもらいます。
そして久保田さんの奥様に
「言っても聞かない夫の扱い方」
をレクチャーして頂きたく。
私のこと恐妻家みたいにいつも言うけど
かみさんに頭上がらないとこも
私と似てますよね?久保田さん。
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