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1.「そうだ、離婚しよう」
「そうだ、離婚しよう」
ストーンと、スカーンとそう思った。
今まで何度か、やっていけるんだろうかと不安に思ったこともあったし、実際上の子を妊娠中のひと悶着でもうダメかもとも思った。
でもこんなにスッキリ爽快に答えが出るなんて。
配偶者が風俗嬢とプレイしてる動画を見ているのに、怒りや悲しみや絶望ではなくて、秋の京都旅のポスターを見て「そうだ、京都に行こう」と思うくらい清々しく離婚を決意した。
初めてではなかった。
そう、上の子妊娠中のひと悶着とはこのことだった。
それまでスマホをチェックしようなんて思ったことも無かったのに、特に怪しいこともなかったのに、なぜかその時私はスマホを盗み見た。
そして見つけた。風俗に通っている証拠を。
すごくショックだった。
私には絶対に言わないようなことを囁いて、ものすごく積極的で。
惨めで悲しくて辛かった。
風俗は絶対に嫌だと言って結婚したのに。
お腹の子と一緒に消えたいと思った。
でもそれはできない。
それならと、泳がせて徹底的に証拠をつかんだ。
向こうは平謝り。
やり直したい、一生許してもらえなくていい、3人で暮らしたい。
私も悪いところがあったのかもしれないと私は相手の希望を叶えた。
ただし、一生忘れないし、今後事あるごとに責められる覚悟はあるのかを確認して。
そして私は双子(その時はまだ判明してなかった)の妊婦健診で性病にかかっていると判明したのだ。ついでに同じウィルスが原因である子宮頸がんの疑いまで。(そして心拍がふたつあることも、この時に判明した。)
病名を言ってもピンとこなかったみたいなので、努めて冷静にこれは性病であると告げた。
馬鹿な私は相手の、「あれ以降は絶対行ってない、ウィルスが残ってたんだ。本当に申し訳ない」の言葉を信じた。
5人家族になることに専念することにしたのだった。
そのためにはこれ以上追及すべきではないと思った。
何より、双子と自分の命ひついての不安が大きすぎた。
終わってみれば結果的に信じていてよかった。
理由は・・・またいずれ。
双子出産後は、晴れない疑惑を抱えていたせいもありよく衝突した。
今振り返ると心の奥で思っていたのかもしれない。
「何か出てきたら今度こそ絶対許さない」
決定的な何かが欲しかったのかもしれない。
そういう気持ちでまた管理の甘いスマホを見た。
一発で出てきた。
それが冒頭。
全てウソ。
まだ通っていた。
私に性病をうつしてガン手前にまでしといてのうのうと家族の理想を語っていた。
そして妊娠中も双子の心配も私の再発の心配もすることなく、家族のために仕事をしているといいながらせっせとお気に入りの嬢をご指名していたのだ。
怒りはなかった。
むしろ視界がクリアになった気さえした。
ただ一言、「そうだ、離婚しよう」
その言葉がスコーンと、スカーンと私に入ってきたのだった。
それからの私はただ一点、有利な離婚を進めることに身も心も費やすことになるのだ。