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見上げる瞳

初めて教壇に立った日から、激務が続いた。連日の教材研究、部活指導、事務処理など、教師の仕事はとにかくハード。2週間ほどたったとき、くたくたで仕事から帰りテレビをつけた。何となく見ていた番組が面白くて、ゲラゲラと笑ってしまった。その瞬間、笑い声が一人暮らしの広い家に響きわたり、笑っている自分に気付いてハッとした。

「え。今。俺笑ってた。」

急に一人でいることが寂しくなってしまった。大学の時も一人暮らしだったから、慣れているはずだったが、同僚以外に誰も知り合いのいないちいさな街での一人暮らしだったからだろうか。

そこで、気分転換をするために、休日にとなり街に出かけることにした。JRで1時間ほど揺られ、となり街についた私は、目的もなくヒトの流れがあるアーケード街を歩いた。しばらくして、白いモフモフが跳ねるお店を見つけ吸い寄せらるように入った。消臭スプレーの匂いと、獣臭がツンとくる。そう、ここはペットショップである。キャンキャン、ハアハアと私を出迎える白いモフモフ。思わず頭をポンポン撫でた。

その中に、オシッコ吸収のマットに横たわり、遠くを見つめる犬がいた。毛色がオレンジのポメラニアンだった。

私が近づいても目で追うだけで、あまり、関心を示してくれなかった。「どうせ俺なんか」という思いがうるうるした瞳からうかがえる。店員によると、8ヶ月のオスで売れ残りということだった。お尻の毛が少しうんちで汚れていた。頭を撫でると、思い腰をあげ、かすかに尻尾をふった。幸い病気はなさそうだ。店員は売れ残りだからブリーダーに引き取りをおねがいしているという。

「この子、もらいます。」

店員はもっとリアクションの大きい子を進めてきたが、私にはこの子しか見えなかった。何か自分の姿と重なるようなところがあったからだろうか。すぐに初任給を全額おろして買い、寂しい部屋に連れて帰って来た。家に入れると、クンクンしながら、うわめづかいで私をみたり、家の中を無駄に歩き回り、初めての家に戸惑っていた。この家と住人の私が危険ではないと判断したのか、あぐらの中にちょこんと座った。

寂しかった私も彼のおかげで、充実した毎日を送ることができた。

彼は停留睾丸の持ち主で、9歳のとき、セルトリ細胞腫を発症。睾丸が腹部で腫れ上がったので、すぐに動物病院につれていき摘出。幸い、精菅断端には腫瘍細胞の所見が見られなかった。14歳で星になり、おおよそ平均寿命を全うした。彼には色々救われた。今でも夢を見ることがある。

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いつもありがとうございます。私は高校の先生、妻は専業主婦です。妻は保育士資格をいかして保育所を開設したいようです。安心して子どもを預け、子どもの成長をあたたかく見守る保育所を開設するために、支援をお願いいたします。