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甘言に注意せよ!?腸の為に、お酢を飲むことなかれ!の計

おや、あれに見えるは腸飛(ちょうひ)殿。

何やら楽しそうに兵たちと盛り上がっておりますな。

甕に入った液体を、小さな柄杓で掬っては飲み干しているようです。

飲み干すたびに周りで見ている者たちが笑っていますな。

どこからか、腸飛殿が良い酒でも手に入れたのでしょうか。

腸飛殿は、兵たちとも分け隔てなく付き合い、自ら酒を振る舞う度量があるため好かれており、信も厚い。

将として、兵たちの信を集めるは時に軍略・計略よりも大事な事。

そのための酒であれば、多少の騒ぎも咎めるような事ではありませんな。

もちろん、飲みすぎなければですがね。

とはいえ、最近は肌寒くなってきました故、酒でも飲んで体を温めたいところ。おあつらえ向きに、月まで出ております。

我々もご相伴に預かるとしますか、我が君。

・・・

腸飛殿、我が君と、私にもそれを一杯頂けないでしょうか。

ムッ?やめておいた方がいいですと?

兵には振る舞えど、我が君には振る舞えないと?

なんと、情けない!

腸飛殿ともあろう者が、主君たる我が君へ出し惜しみをするなど・・・。

ましてや、我が君は腸飛殿とは梨園の誓を立てて、盃を交わした仲。

兄弟の長兄である我が君に、そのような言い方をするとは。

え?そこまで言うなら飲めと?なんだか気に入らない物言いですが・・・

まぁいいでしょう。素直に出していただければいいのです。

あぁ、ありがとうございます。では・・・

グビッ


ゲボッ!!!

ゲホッゲホッこれゲホッは、ゲホッゲホッゲホッ!?


・・・ハァハァハァ、やっと、息が、整って、きました。

我が君も、息も絶え絶え。

腸飛殿!

なにゆえ「酢」などを回し飲みしておったのですか。

なになに、腸の為に大事な「短鎖脂肪」を取る為に、手っ取り早い方法は無いかと探したところ、酢酸、つまりお酢を飲めばいいのではないかと噂で聞いたと。

そこで、町から酢をかき集めてきて、兵と共に飲もうとしたが、あまりうまい物ではないし、どうもむせてしまう。ただ我慢して飲んでは面白くないから、誰が吐き出せずに飲み込めるかという勝負をしていた。と・・・。


この、愚か者!


短鎖脂肪酸は酢酸、酪酸、プロビオン酸の総称です。

確かにお酢を飲めば、短鎖脂肪酸を腸内細菌に作ってもらうまでも無く、それらの酸を取り入れる事はできましょう。

しかし、酢酸は血液中に取り込まれた後、すぐに分解されてしまうのです。

つまり、お酢が腸内にもたらす効果は一時的かつ限定的なのです。

一方、腸の中に食物繊維があり続ければ、腸内細菌はその間ずっと短鎖脂肪酸を作り続けてくれるのです。

この方が、ずっと効果的かつ持続性があると言えましょう。

そして何より、

多量を口に含むこの飲み方、しかも、吐き出さないように我慢するというのは、愚の骨頂。なぜなら、歯に大きな影響を及ぼすからです!

少量のお酢であれば唾液で中和されますが、多量の酢を口に入れると、歯は酸に晒されます。

酸に晒された歯は柔らかくなりその組織が酸に侵食されてボロボロになってしまうかもしれないのです。

これを「酸蝕歯(さんしょくし)」と言います。

そんなことも知らずに、大事な兵と自らの歯を大きな危険に晒すとは!

腸の健康のために、健康な歯を犠牲に差し出すようなものです!

言うまでも無く歯がダメになってしまうと、食を変えざるを得ません。

食物繊維とは繊維と名の付いているように、どうしても噛み切って食べる必要がある物が多いのです。

腸の健康を保つため、積極的に食物繊維を摂る。

いや、食物繊維だけではありません。

健康に必要なのは、健康な歯であると言っても過言ではありません。


巷に流れる甘言(かんげん)。

これを飲めば、問題ない。これを食べれば痩せられる。

断言しましょう!そんな甘い事は無いのです!


真に肝要なのは、

バランスの良い食事、適度な運動、適切な腸活、十分な睡眠なのです。

決して、楽して健康になどなれません。

まずは、足りないモノを自覚する。そしてそれを補う。

そこからなのです。

わかりましたか?わかりましたね。

ではさぁ、腸飛殿も兵たちも顔をあげて、涙をぬぐいなさい。

あなたたちはもう、何も知らない人では無いのです。

今回の事からも、多くを学んだはず。

我らは真の健康を目指す、志を同じくした同士なのですから。

次は私が、いい酒を振る舞いましょう。


今日の軍議は、ここまで。

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