古野淳(ふるのきよし)

東北、信州で登山を楽しみながら、民俗学、縄文文化を追っかけてます。

古野淳(ふるのきよし)

東北、信州で登山を楽しみながら、民俗学、縄文文化を追っかけてます。

最近の記事

新野の盂蘭盆と雪まつり

新野の盆踊り 2023年(令和5)8月26日、長野県下伊那郡阿南町新野の盂蘭盆会を見学。 1998年(平成10)12月16日、国の重要無形民俗文化財に指定され、2022年(令和4)11月30日、ユネスコ無形文化遺産に登録されました。 新野の盆踊りは室町時代末期、仏を供養し、先祖の霊を祀る盆踊りとして定着しましたが、仏教伝来前の純神道の形が伝承されており、祖霊を迎え送る盆踊りの原型と言われています。 8月14日、15日と、24日の午後9時から踊りはじめ、笛や太鼓を使わず

    • 破戒とロシア文学

      丸の内TOEIで、映画『破戒』をみてきました。 原作:島崎藤村 監督:前田和男 脚本:加藤正人、木田紀夫 音楽:かみむら周平 キャスト: 瀬川丑松(被差別部落出身の教員)=間宮祥太郎 お志保(下宿先の士族出身の女性)=石井杏奈 土屋銀之助(同僚教師)=矢本悠馬 猪子蓮太郎(被差別部落出身の思想家)=眞島秀和 蓮華寺住職(女癖の悪い住職)=竹中直人 奥様(蓮華寺住職の妻)=小林綾子 丑松の父=田中要次 風間敬之進(士族出身の老教員 恩給がもらえる半年前にアル中で退職 お志保は

      • 誓いの休暇

        ソ連映画、グレゴーリ・チュフライ監督『誓いの休暇』。 1973年小6の時、淀川長治さんの日曜映画劇場を家族で見ました。子供の頃にみた映画の中では一番印象に残っています。ロシア人にとっても60歳以上の人であれば今でもベスト3の映画に入るほどの作品だそうです。ウクライナ戦争で思い出し、DVDをヤフオクで買って再び観ることができました。 『誓いの休暇』は、1959年ソ連時代の映画で、フルシチョフが独裁者スターリンを批判した時代、いっときの自由な空気感が名作を生んだと言われていま

        • 河童

           2022年6月5日、上高地ウェストン祭は3年ぶりの一般開催となりました。このNOTEも2年ぶり再開です。 例年だとニリンソウでいっぱいなのですが、今年は半月ほど早く、すでに散ってしまっていて残念。 焼岳は噴火レベル2で上高地側の登山道は閉鎖されていました。 今年の講演者は平出和也さん。ピオレドール受賞3回のアルパインクライマーは地元、富士見町出身。コロナで2年、待ちに待った講演が実施されました。学生時代は陸上で全国上位の成績をおさめていましたが、途中から、他人と競争す

          デス・ゾーン

          発売と同時に一気読み。 「栗城は何者なのか」 ももやもやしたものが喉に引っかかった小骨のようだったが、その不快感から少し逃れた感はある、が読み終わってもいまだ栗城氏は謎の男である。 これは栗城氏の登山を描いたヒーロー物語ではない。筆者は報道の人間として、「彼はいったい何を考えているのか」、理解不能の「エベレスト劇場」を取材し続ける葛藤を描いている。その筆者の心の変化が実に興味深い。 2020年第8回「開高健ノンフィクション賞」受賞作。帯に書かれた言葉が印象的。 彼に

          三体

          2015年3月6日、冬富士登山中に3個の太陽が現れました。『幻日』です。珍しい気象現象ですが、ほんとうに太陽が3個出たらと想像してみます。 それは温暖化なんてものでなく、灼熱の大地となり、溶鉱炉のような地表で人類は一瞬のうちに蒸発してしまう。 ところが、3個の太陽は不規則な軌道をたどり、太陽の出ない暗黒、極寒の気候が長く続く時期もある。 その世界では、3個の太陽は人類が解決できない物理法則の問題を抱えます。 宇宙空間で同質量の物体が等間隔に並んだ場合、その軌道はカオス

          ピオレドールとアルピニズム

          平出さん、中島さん、ピオレドール受賞おめでとう! 2020年8月10日(日本時間22:00)、2019年の登山51隊のノミネートリストから日本の登山隊が選出されました。 2019年夏、平出和也氏=中島健郎氏がパキスタン・カラコルム山群のラカポシ(7,788m)に未踏の南面ルートから挑んだ登山です。 フンザよりラカポシ7,788m(2000年8月1日撮影) ラカポシの山名は、地元ギルギッド・ドゥマニ地方で「雲の生まれる山」「雲の首飾り」の意味。 6月3日 日本〜イスラ

          ピオレドールとアルピニズム

          岩手は疫病とどう向きあってきたか 疫病との闘いの歴史をたどる

          岩手県は、5月2日現在、全国で唯一新型コロナウイルスの感染者を出していません。 そんな岩手でも、江戸時代、天明の大飢饉(1782-1788)では餓死者40,000人に対して、疫病によって23,000人が亡くなったといいます。 致死率が高く、特効薬のなかったコレラは「虎列刺」と書き、明治15年(1882)、関東地方の流行から、釜石港に停泊した他県の船から感染者が次々と見つかり、沿岸を中心に感染が広がっていきました。 江戸幕府から送られた「対処法」のお触書(暴瀉病予防書)に

          岩手は疫病とどう向きあってきたか 疫病との闘いの歴史をたどる

          気候変動による温暖化で積雪量は減っているのか?

          例年ですと、この時期には月山や鳥海山で山スキーを楽しんでいるはずなのですが、皆さん同様、stay home, 登山自粛でストレスが溜まってきているところです。 先日、私が所属している山岳会の会報誌が届き、長年のモヤモヤがはれて少しスッキリしました。 「山に振る雪はどうなるのだろうか - 上高地に降る雪の量は増えている?」大町市立山岳博物館館長 鈴木啓助さんの記事を興味深く読ませていただきました。 近年、雪不足でスキー場の経営が厳しくなっているニュースをよく目にします。し

          気候変動による温暖化で積雪量は減っているのか?

          リーダーシップとフォロワーシップ

          年末から年始にかけて、大きなニュースが2つ飛び込んできて驚いた。元日産自動車CEOカルロス・ゴーン氏の国外逃亡と、トランプ大統領のイラン・スレイマニ司令官殺害。 大富豪と最大権力を持った大統領のお話で、我々の生活とは縁遠い世界とはいえ、不安、不平感、怒り、妬み、恨みといった感情を抱く。人類の誕生から現代まで繰りかえされるホモサピエンスの心の問題を少し考えてみた。 イスラエルの歴史学者、ユヴェル・ノア・ハラリ著「21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考」(河

          リーダーシップとフォロワーシップ

          上高地の主「常さ」こと、内野常次郎

          「喜作新道 ある北アルプス哀史」 山本茂美著より 「常さ」と兄貴分「喜作」山案内人の経歴  1918年(大正7)8月、英国人エルウィン氏と北鎌尾根および槍ヶ岳方面へ  1916年(大正5)、1924年(大正13)頃、秩父宮殿下を案内  1925年(大正14)頃、明神池付近より、河童橋付近へ移転  1931年(昭和6)秋から飛騨の金木戸川へ移転  1932年(昭和7)7月、上高地復帰 丸西の裏の小屋へ定め、以降上高地を転々  1949年(昭和24)11月1日、出生地の中尾

          上高地の主「常さ」こと、内野常次郎

          絹のザイル

          2019年11月30日、学習院輔仁会山岳部創立100周年記念会に招かれ、ガラスケースに絹のザイルを見つけました。 ザイルに付けられた荷札に「大正十四年、アルバータ登山に使用した綱(絹製)」と書かれています。 マウント・アルバータ初登頂 1925年(大正14)7月21日、L槇有恒、橋本静一、早川種三、三田幸夫、岡部長量、波多野正信の六人および案内役の3人で、当時未踏であったカナディアンロッキーのアルバータ山3619mの初登頂に成功しました。 1923年(大正12)暮れ、槇

          フーがきた

          我が家に3匹目のネコがやってきました。三毛♀で名前を「フーリー」と申します。 訳ありの子で、ちょっと前までご近所の八千草薫さんちの子でした。主を失って我が家にやってきた忘れがたみ。チョモ♂とキンタ♂と仲良くできるか、ゲージの中と外とで目下お見合い中。 八千草さんはご主人の谷口千吉監督を2007年に亡くされて、一人暮らしでした。ワンチャンはお手伝いさんが引き取り北海道へ。写真は24年前です。1995年遠征の直後で真っ黒い顔をしています。ご主人83才、奥さま64才の時で、やっ

          アーネスト・サトウの黒部横断、針ノ木峠越えと有峰伝説

          アーネスト・サトウ著『一外交官の見た明治維新』上・下(岩波文庫) Ernest Mason Satow  “A Diplomat in Japan” 1921年(大正10)  アーネスト・サトウ(1843-1929)は18歳のとき図書館で『*エルギン卿のシナ、日本への使節記』という絵草紙ふうの日本紹介本を読んだのがきっかけで外交官を目指すことになりました。外交官試験に首席合格し初任給は年俸 200ポンド(約500両)。 清国勤務を経て、憧れの日本へ1862年(文久2)9月

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          アルプス一万尺

          9月14日-15日、「アルプス一万尺」の歌で有名な小槍に3人で登ってきました。1万尺=3,030mですが、GPSだと3,060m前後を表示。 敬老の日を含む3連休は好天が予想されていたので、大槍は上の写真のように大渋滞で早々にギブアップ。小槍の取りつきまでは槍ヶ岳山荘のヘリポート裏手より脆いルンゼのトラバースから始まります。帰路に使おうと2本のステンレス・アンカーにクイック・ドローを残置しましたが、帰りに見ると新しい方がしっかり盗まれていました。 先行は2パーティ7人、後

          地球温暖化と古気候学

          気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、科学的知見による「地球温暖化」は決定的に明確なもので、人類の活動が直接的に関与していることに疑いをはさむ余地はないといえます。 20 世紀に地球の平均気温が約 0.74℃上昇したのに対し(IPCC, 2007),東京の年平均気温は、100 年あたり(統計期間: 1876-2011 年)2.47℃上昇したことが報告されています(東京管区気象台ほか, 2012)。 生まれてこの数十年間、実感として気温は上がっており、台風や高潮

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