気候変動による温暖化で積雪量は減っているのか?
例年ですと、この時期には月山や鳥海山で山スキーを楽しんでいるはずなのですが、皆さん同様、stay home, 登山自粛でストレスが溜まってきているところです。
先日、私が所属している山岳会の会報誌が届き、長年のモヤモヤがはれて少しスッキリしました。
「山に振る雪はどうなるのだろうか - 上高地に降る雪の量は増えている?」大町市立山岳博物館館長 鈴木啓助さんの記事を興味深く読ませていただきました。
近年、雪不足でスキー場の経営が厳しくなっているニュースをよく目にします。しかしながら、私のように毎春、東北の山に出かけるバックカントリースキーヤーにとっては、積雪量が減っているという実感はありません。
月山の麓、志津温泉(標高623m)では最大積雪深が5mを越えることも
2018年2月8日撮影
降雪量について漠然と思っていたことが、科学的調査データに基づいて解説されています。結論から先に言うと、近年の暖冬傾向で標高の低い場所にある観測データは少雪になっていますが、冬季の降水量に変化は少ないので、標高の高い山岳地帯では積雪量に大きな変化はない。ということがわかります。
緯度も標高も高い青森県の酸ヶ湯(標高890m)のアメダスによると積雪量は上昇傾向であり、上高地・大正池(標高1490m)でも大きな差異は認められません。
槍・穂高に積もった雪は、沢筋を埋め、一部は梓川に流れ込みます。大正池における月平均降水量と梓川の月平均流量の値は年々変動に有意な増減傾向は認められない、と結論付けています。
大正池右岸より岳沢を望む 2017年4月30日撮影
スイスのスキー場は標高2000m以上に立地しているところが多く、日本の標高の低いスキー場のように雪不足が原因で経営に苦労することはありません。ツェルマットやグリンデルワルト等、麓のリゾート地での積雪量は少なくなっていますが、少雪は除雪費用の節約になっているとさえいわれ、スキー場の経営は標高の違いによる立地によって明暗がついています。
参考資料
日本山岳会「山」2020年4月号