【公演回顧】2024年(令和6年)猿若祭二月大歌舞伎 / 三月大歌舞伎


2024年(令和6年)2月15日(木) 十八世中村勘三郎十三回忌追善 猿若祭二月大歌舞伎 夜の部より(幕見)

歌舞伎座で初めて幕見席を利用。想像より遥かに見やすく、高いところなればこそうかがい知れる要素もあり、楽しめた。

猿若江戸の初櫓

400年前の1624年2月15日が、初世勘三郎が江戸で初めて幕府の許しのもと小屋の櫓を上げた「江戸歌舞伎発祥の日」とのこと。節目の日に初世勘三郎の故実から創案された舞踊を鑑賞できて嬉しかった。

義経千本桜〜すし屋

歌舞伎でなかったら噴飯ものの荒唐無稽な不条理全開のプロット。
今回の出演者は割とナチュラルな芝居を心掛けていた印象。
こういう出し物は大げさになるほど「歌舞伎的」様式感を出さないと逆に見る側が冷める。

追善公演が充実するかは対象者の息子や孫の進境の度合いで決まる。
その点、今回の猿若祭は見ごたえあった。

2024年(令和6年)3月4日(月) 三月大歌舞伎 昼の部

1. 菅原伝授手習鑑より寺子屋

以前記したように超苦手演目。名作とされるゆえんもさっぱりわからない。
むちゃくちゃな話で通底する価値観は現代の観客の心に響くのだろうか。
ずっと食わず嫌いの愛之助が思いのほかよかったのは収穫。

2. 四世中村雀右衛門十三回忌追善狂言 傾城道成寺

四世雀右衛門は生前海外まで名の知られた名女形。その追善としては寂しい内容。息子2人、とりわけ大谷友右衛門がパッとしないのが原因だろう。

3. 元禄忠臣蔵より御浜御殿綱豊卿

仁左衛門の題名役がすべて。喜寿を迎えてなお芝居に潤いがある。
口跡の奥行きもさすが。日頃印象の薄い孝太郎が好演。

2024年(令和6年)3月24日(日)三月大歌舞伎 夜の部

時事通信メールマガジンの読者懸賞に当選。ペア1等席で筋書、イヤホンガイド、売店のお買物券付き。こんな至れり尽くせりの鑑賞はもちろん初体験。御覧の通りの良席である。

1.通し狂言 伊勢音頭恋寝刃

古典歌舞伎のならいで見どころは多彩なれど、劇作としては支離滅裂。
今回、イヤホンガイドの助けを借り、しかも歌舞伎座では通常カットされる「太々講」を含む上演ゆえ、伏線が分かってまだよかったが「油屋」「奥庭」だけ予備知識なしに見たら、下世話な廓刃傷噺に無理やり忠義性を絡めた変な芝居だと感じるだろう。
ただ、本演目の当代雀右衛門は抑制美が冴えていた。また、前半にチョイ役で登場の又五郎の演技は滋味豊か。

2.六歌仙容彩 喜撰

歌舞伎の興行はよくできていて、重い演目の後には観客が気分よく帰れるもので打ち出す。
舞踊の名手松緑が下半身主導による押し引き自在の技を披露し、梅枝が透明感のある艶で応える。後半はベテランから眞秀まで世代を超えた群舞で愉しい時間。

今回初めてイヤホンガイドを利用し、演目の背景、歌舞伎ならではの見せ方の特徴や用語など改めて学ぶことが多かった。皆様も一度お試しあれ。

※文中敬称略

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