少しの踏み台、滲むのは感傷
幾つの日が経ったのか、相変わらずの泥を胸に塗りたくって、今日は少しいつもより重い。
雨上がりのアスファルト、煌々と降り注ぐ陽の光は少し寒い足元をほんのりと暖め、少しばかりの慈悲をくれる。寝坊の主人を待つ線路は気だるそうに黒光る。
こんな日でもやはり音楽は聴きたくない。僕の上澄みは音楽が好きだと過信してその形を装っているが事実一人では、一人の生活の中では何も聞かない。人に障られて、人波に当てられてナチュラルハイを患った午後、夕方、その帰り道惰性で聴くのが常だ。
どうやったって認められない。信じられない。どんなに考えたって僕の知りうる感動を得られない。過去に得た感動を今想起できない。おかしい。僕のしってるものじゃない。あの時、あの瞬間は心が昂るんだ。昂るんだ。昂るんだ。 昂った気がするんだ。重い重い重い思い重い。面倒くさい。変わらない。
変わらぬ思いの僕を差し置いてイヤフォンは胸ポケットで今か今かと役目を待っている。5年ほど前に試聴を重ね、値段と対談を繰り返し、素人目ながらも納得して購入した彼は今も現役で働いている。仕事相手が悪かったな。ひたすら無為に使われて可哀想に。
どうにも今日は天気がいいらしい。変な気を起こしたのか午前にも関わらず私はイヤフォンを耳に差した。胸にこびりついた泥はより収縮力を高め、胃が締まって気持ち悪い。不快だ。
流す音楽は夏に取り残されたあなたを救う歌。僕とは一切繋がりのない世界だ。、、歌詞が流れていく、 流れていく、、、
眼前に広がるのは古ぼけたホームと少しばかりいい天気。
なんでだろうか。
解けていく。
しぐれていく。
少しばかり揺らいでいる。
分からない。
僕にはもう。
信じるのか、
信じないのか。
心に穴が空いた。
そんな風に感じた。
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