わからないの踏み外し

 一つの月を重ねその間怠惰を貪った。
 駄食を貪った
 惰眠を貪った 
 無駄の髄まで貪った。

 この身を刺す陽光はいささか機嫌が悪いようで執拗に私の活力を欲しがっている。なくなく舗装路に影を落とし、少しばかり生き血を吸うことを許す。

 要らないのは無駄。
 必要なのは充実した時の流れ。

 いつの時からか己の存在を否定できるまでに知恵を蓄えた私たちはどうも生き辛いらしい。

 この人生に早く結びを送りたい私と。
 他人に縋ってただ無為に織り続ける臆病な私と。
 理想を饒舌に語るだけの
 リボンの端と端を掴むことすらできない現実。

 一生を抱えて明日を進むのは難しい。
 記憶に新しいのは割れんばかりの蝉時雨と腹を向け転がる空っぽのひぐらし。

 とろとろと駆けていく。どうにも窮屈なトンネルが目の前に。縛られているものがあまりにも壮大で。時と歌とこの空と。命と。どれも落としてはいけない。果たして光の先まで抜けられるだろうか。

 滲む遠くの月をなぞって。

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