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過去と今と未来とお菓子

うん、本当は分かってる。
半年間ずっと悩んできた、今も毎日悩み続けていることに結論は出ているんだ。

あと半年で会社を辞める。


仕事がつまらない?
-ううん、10年近く夢に描き続けたことだった。この仕事じゃないと得られなかった沢山の経験があって、きっとこの先も様々な刺激を楽しめるのだろう。忙しいけど、それ以上に楽しいよ、間違いない。

人間関係が上手くいっていない?
-いいや、私は会社の人たちのこと、とても好きだ。なんだろうな、輪の中に居ても大丈夫な安心感がある。学生の頃は、何をもって自分と言えるのか分からなくて、誰かに嫌われないことが重要で、人に合わせようとするほど自分の輪郭が曖昧になって気持ち悪くて嫌いになった。今もまあ色々なことに自信はないのだけれど、それでも「これが私だぜ」ってものが確かにあって。それって自分らしさを今の環境が肯定してくれたからだって思ってる。


でも、だから、
今に甘んじてこの先もずっと「今」が続くって信じてなんとなく働き続けるのは違う。時間は進む。自分を取り巻く環境って残酷に変化していくから、ちゃんと考えて決めないと絶対に後悔する。

私は、なんで何のために働いているんだろう。


父は、典型的に仕事仕事な仕事人間だった。仕事人としてはまあそれなりに認められていたんだろう、社長とか会長とかにまでなって…けれど幸せそうな父を私は見たことがない。

母は生涯専業主婦だ、働いた経験はほぼ皆無。それでも、仕事で生きてきた父よりもずっと裕福だ。自由に使える時間もあって、とても幸せな人生だったといつも言っている。

そういう環境だったから、地位やお金というやつは私の働く理由としてそれほど重要じゃない。そもそもお金を稼ぐことを第一目標にするのなら、給料は決して高くないしサビ残わりと酷いし、絶対さっさと転職すべきだ。

そんな実利的な要素を除けば、働く理由なんて「やりがい」ただこれに尽きる。それが承認欲求だったり社会貢献だったりは色々あるだろうけどさ。

時々考えるんだ。
隣で一生懸命働いているこの人は、たとえば宝くじで3億円当たっても同じように一生懸命この場所で働くのだろうか。
もしも会社の業績が傾いてほぼ無給みたいな状態になっても会社の信念に共感して尽くせるのかな。

犠牲にすることも沢山ある。
実家は遠いから、それほど頻繁には帰れない。なんて言っているうちに社会人になってから一度も祖父母に会えないまま皆死んでしまった。このまま仕事を続けるのなら、父にもきっと永遠に会わないことになる。母は今はこっちに会いに来てくれているけれど、年齢的にそれも厳しくなってきた。いつか、私は改めて仕事か母か優先の選択を迫られる。

本を読む時間がない。料理をする時間がない。やりたい勉強をする時間がない。旅行に行く時間がない、海外なんてもってのほか。
そういうことを全部諦めて、今の仕事を続けて。けれど勝手な人事異動だってあるでしょう?今の職場より行きたいところなんて無くて、じゃあそれから他の生き方を探したって、年齢的に今よりも沢山制限があるはずだ。

それでも、それでも、過去の夢に縋って今の仕事を続けるのか。


ずっと考えてる。
結論はもう出ている、だからもう考えなきゃいいのに、でもずっと考えている。続けてきた人間関係への未練かな。


こういうことで悩んでいることを、上司との面談で話すつもりだった。
それなのに出てくる言葉は「仕事楽しいです!人間関係もめっちゃ良好!!健康状態も良し!!!これからも前向きに頑張ります!!!!」
いやいやいや、、、自分からペラペラ出てくる薄っぺらい言葉に呆れる。本気で辞めようというその時、本当に言えるのだろうか。
私も同期ももう半分は辞めたけれど、どうやって話を切り出したんだろう。


お菓子が好きだ。
心を壊したと思っていたあの頃の私を救ってくれたのは確かにお菓子だった。生き方に迷う日々に軸を示してくれるのは、人生に大切だと思えるページを増やして救い続けてくれるのは、いつだってお菓子だ。


ウイスキーとチョコレートを合わせること。

そもそもチョコレートが美味しいよってこと。
チョコレートが大好きで、推しチョコはコレだって言えること。

パフェの楽しさ。
ちょっと特別なイベントにも沢山参加してきた。

ワイナリーに行って特徴あるワインのテイスティングして。

ぶどう園でシャインマスカットを積んだりさ。

その採れたてシャインマスカットをその場で使ったパフェを食べたり…そんな体験した人、なかなかいないはず。

なんだこのパフェ???って異次元に思える人も多いだろう。

上に珈琲豆の形したティラミスケーキが乗ってる、高級なゲイシャを使用したパフェとか…、うん、私も訳分からん。

構成の複雑さよ…

こういうイラスト描けるようになりたいな、なんて。

花、花、花。スイーツである。食という名の体験。

食という名の芸術。

人に勧めてもらったお店に行って…

歩いた土地のこと、心を動かした景色の美しさ、覚えてる。

あの時、どういう気持ちでそのお店を選んだっけとか。
隣の席の人、今から講演会をやる前のひと時にこのお店に来たんだなとか、角席にいた人、私の好きな本読んでたなとか。
覚えてる。スイーツと一緒に、色々な思い出が連なっている。

高揚感とか、お店の人との会話とか。

ささやかな嬉しさとか。

ふと見た景色に心が揺らいだ。

続く道にワクワクした。

全部、私だけの体験だ、記憶だ。
もう「自分が何なのか分からない」なんて、「自分の人生は薄っぺらだった」なんて泣かなくていい、否定しなくていいんだよ。

もう、明日が楽しみだって言えるでしょう?世界の色が綺麗だなって思えるでしょう?

どちらかと言えばお菓子は好きな方だから…趣味と言っとこ♪くらいよりも私の言う「好き」は少し重い。
今生きているのも、これから生きていけるのも、きっとお菓子のおかげだから。


今の仕事は確かに望んだ形だけれど、これからも好きで居続けるためには少し、違う。自分の会社の商品だけを世の中に届けたいのではないし、私には全然知識が足りなくて、でも時間と精神的に今以上にワークに傾けていく働き方では得たいものを得るための余裕が無くて。

好きだけど、押しつぶされて折れてしまう自分が目に見える。本当は本当にやりたいこと、なんとなくだけど見えているんだ。
人生が7回くらいあるなら1度くらい仕事に人生尽くしてみても良いけどさ、残念ながら1度しかないからねえ。だから結論はいつだって同じだ。

それでもウジウジぐるぐる悩んで悩み続けてしまうのは何なのか…なんだろうね。

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