夢心地、理想は何処に此処に〜星乃珈琲店〜
ケーキは素敵だ。
パフェは無敵だ。
見た目の可愛らしさ、味の美味しさ、構成による物語性…色々な要因があるだろうが、一瞬の儚さというのもまた、あの魅惑の根源にあるところだと思う。
いつまでも眺めていたい。けれど「今」が1番美味しい。その葛藤の末に食べてしまう。ワクワクしながら選んだ「自分の」が消えてしまう喪失感。その穴に、幸福感が溶け出して、喪失の余韻と混じりあってなんとも言えぬ奥深さになる。人生を凝縮したようなその感覚を求めて、我々は寿命の短い生菓子を求め続けてしまうのかも、なんて。
とはいえ、もうちょっと長く楽しめる焼き菓子とかだってやっぱり凄く、とても大変に美味しいのよ。
結局美味しいものは美味しくて幸せ。正義。希望と夢。それ以外の理屈なんて何も要らないよな、という気もする。
何はともあれ、その時は、時間も微妙だったし、お昼スイーツは食べた後だったし、何故かワインボトル一本分近く飲んだ後でほろ酔いだったし、ケーキとの一瞬の出会いと別れを味わい尽くすだけの体力が無かった。
コーヒーと、少しづつ摘んで楽しめる焼き菓子を。
星乃珈琲
自家製焼菓子のセット
良いなあ。
こういう焼菓子の詰め合わせみたいなセットは、丸福珈琲店の「はいからさん」がお気に入り。
お気に入りというか、それしか知らなんだ。
星野珈琲にもあったのか。
これからは積極的に使ってこ!!
それにしてもなんとまあ、可愛い。
別にケーキと変わらんボリューム感な気もするけど、ケーキよりも罪悪感が軽い気もするのはなんでだ。気がするから、きっとゼロキロカロリー。信じればなんとやらだ。恐怖の体重測定の日程が決まってしまった…ああぁx。。。
なんとなく全部かためのカリッとサクッとをイメージしていたのだけど、おやおや案外これは、フワリ、ホワホワ、モッフリ。なんとも柔らかな。優しく、大きな手で包み込まれるような温かみのある柔らかさだ。
レーズンサンドは王道派。
バター香るクッキーとラム酒のホワッと香るレーズン。芳ばしさに染み渡る甘さ。長く続く余韻は、時が立っても想像するだけで蘇ってくる。芳醇な空気が漂ってくる。
ダックワーズは特に柔らかく、中にはコーヒー風味のクリームかな。アーモンドプードルな甘さの中に沈み込む静かなほろ苦さにうっとりする。
メレンゲ姉妹はこれまた、なんとなんと可愛らしく。
ピンクと白。
サクッと表面が割れた瞬間にホロッとサラサラと消えていく。これも王道的な、それでいて飾らない律儀でしっかり安定した安心するシンプルな美味しさ。
冒険のようなドキドキ感とは違う。
「知ってる」をちゃんと理想通りに目の前に再現される。レーズンサンドと聞いて想起するのは、ダックワーズに求めるのは、メレンゲのあるべき姿は。王道はひとつじゃない。色々な理想の形がある。でも食べた後、そうそうこれが正解だと思える、自分の中でピースがカチリと当てはまったような感覚。
うつらうつら夢心地。
ズレた違和感がないからこそ、夢と現実の合間で美味しいをイメージして。
どんな時でも食べたくなるような、理想はどんなものだろう。