夢の果て
ご無沙汰しております。
もう今年はこればっかりなのだけれどね、何度も書こうとしては挫折していた。なんだか上手くまとまらなくて…そうしているうちに、段々と言葉が怖くなってくる。
素敵な言葉に出会う恐怖。
言葉に重さを乗せられない不甲斐なさともどかしさ。
嫉妬。羨望。焦燥。
我々は同じ単語を知っている筈なのに、どうして連なる文章はこんなにも違う姿を見せるのか。
単なる音の羅列。それでハッとして立ち止まってしまうような美しい旋律を描ける人は魔法使いではなかろうか、なんて思ってしまう。私もそんな人になりたかった。
さてそんなこんな言葉というものに翻弄されながら、最近ずっと考えている絶望がある。このまま果てとなるのか、あるいは終わりに見せかけた希望なのかは分からないけれど。
私は方向音痴だ。それは紛うことなき事実なのだが、困ることはそれほど無い。
目的地があるのならスマホで調べればなんとか行けないこともない。ゴールを決めないのであれば、行き当たりばったり足が赴くままに進んで迷子を満喫するのも結構楽しい。
迷子であることは私にとって特別なことではなくて、むしろ少しワクワクするくらいのことで。だから、ふわふわフラフラ夢うつつに流されて、いつの間にか死の樹海なんかに迷い込んでいたって私はきっと気が付かない。
今が、多分、そう。
人生の迷子ってやつ。
叶えたい夢があった。
あの頃は届かない世界が眩しくて苦しかったけれど、手を伸ばす先があるってなんて幸せなことだろうと今は考えてしまう。
夢は叶った。叶ってしまった。
お花屋さんになりたい。
野球選手になりたい。
警察官になりたい。
無邪気に語られる子供の夢は、その先どこに向かうのだろう。
大好きなことを通して、皆の笑顔を見たい?
ごめん、私の心はそんなに綺麗じゃない。
他人様のことより、自分が大切なんだ。
行きたい場所は「ココ」だった。
夢に溺れて幸せハッピー♪今が死ぬまで続いて欲しい。そんな風に、願いの先に到達できた人は笑って言えるものなのだろうか。私には無理だった。
目まぐるしく変わっていく流れの中で立ち止まるって、実は凄く痛い。
若さを言い訳に出来なくなっていく年齢。
自分よりも歳下の人が次々に結婚や出産を祝われ、あるいは強い功績を残す。
増えていく親の病気、近付く死。
目指したのは確かにこの場所で、目指したいのもやっぱりきっと同じような場所で。それなのに動かないことが辛くて、けれど怠慢な私が動けるだけの理由がなくて。
幸せなはずなのに、すぐ先の未来が怖くてたまらない。しんどかった過去を原動力にしてきたせいで、ずっとあの頃に囚われている。どうしようもなくて泣きながら、結局夢の中に逃げ込んで朝になって果てしない後悔を抱えながら仕事に行く。そんな毎日が続く。
何か変えなくちゃ、変わらなくちゃと思ってるんだけど、停滞に甘えている。
変わらずに、変えられずに、
動けないもどかしさを深さに向けて。
今まで以上に美味しいものを求めている。
今日という日が無駄じゃなかった。
その一言を自分に刻むために、美味しいものを求め続けている。
不純な動機でごめん。
黒いカステラって凄くない?結構なボリューム感。1切れと言うには分厚くて、フォークを入れようとすると…お、おおう…カステラってしっとりとかモッチリを目指しがちなので、結構簡単にヘコむのが主流だけど、この黒い塊は、容易には銀の刃を通さない。とはいえ固いわけでもなく…弾力、かな。モチモチともまた違うけれど。そして黒いからといって変な味も無いし、むしろくせがない。奥からじんわり膨らむような甘さが際立つ、余計な要素が混じらない。フワッとしたクリームとも深めの珈琲とも相性良い。
イースターとハロウィン、1個はこういうの買いたくなるんだよね。今年は和光のチョコレートにしました。見上げてくる感じ、目の左右違い。めちゃんこ可愛い。
ディズニーランドに遊びに言った時にまで、こういう特別なデザートを1人で食べるようになってしまった。さすがにこれは寂しさもあったけれど仕方がなかった。一緒に行った家族が、「自分は食べたいのないけど貴方は絶対美味しいの食べて。1人でも食べてきて、待ってるから」なんて無茶ぶりをするから…。
歪さの証明みたいでやっぱり少し悲しかったけれど、それはそれとして美味しくて普通に思い切り存分に楽しんだ自分もいるわけで。こういう受け入れ方は時の流れと重ねてきた経験だなと感慨深くなったりして。
自分の食体験を振り返ると、まあでも、動けないなんて言いつつゼロベースではないよなと自信は湧いてくる。
本当は分かってるんだ。
世界を広げるために海外に行きたくて、その為には英語の勉強が必要だ。
旅行や食体験をより豊かにするために文化や歴史を知りたい。
好きを形にするために写真やデザインを学びたい。
世界の解像度を高める為に言葉を繋げる魔法を習得して、それでいつか本を書けたらいいな。
いや…うん?本当に。
思ったよりもやりたいことが鮮明につらつら出てきてびっくりした。あるじゃん、やりたいこと。ねえ私?
きっとやりたいことは分かるけどその理由が見えなくて1歩が踏み出せない頑張れない、だから出来なくて落ち込む、の悪循環なんだな。
大丈夫、ここまで理想がまだあるなら、
あと少し。何かの拍子にふっと頑張れるようになるんじゃないかな。
それまでは、美味しいものを食べよう。