本好きが集まるバーをはじめた話⑥ 当日準備編
①〜⑤はこちらにまとめました!
エデン横浜に向かう途中、バニラアイスを買った。今日のオリジナルドリンクに欠かせない材料だ。
結局、オリジナルドリンクを作ったのはあの試作の時だけだった。あとはぶっつけ本番になるけど大丈夫かしら…という気持ちと、まあ何とかなるでしょの気持ちがせめぎ合っている。
オープンの20分ほど前にお店に着くと、オーナーのさちこさんがドアを開けて出迎えてくれた。
さちこさんとは打ち合わせでお話していた仲だったので、さほど緊張せずに2人でオープンまでの準備をはじめた。
お店の外と中の黒板に、今日のイベントについて書く。黒板に文字を書くのは実に4年半ぶりだった。教師をしていた頃は毎日のように黒板に文字を書き、生徒たちとたくさん対話をして、笑って楽しい時間だった。
今日のイベントも、そんなふうにお客さんと楽しくいろんな話をして、笑って終われたらいいなぁと思いながら、黒板を完成させた。
オープンの時間まであと少しだけ時間があったので、私はやっぱり気がかりだったオリジナルドリンクを作らせてもらうことにした。今作っておけばオープンしてからSNSに載せる写真としても使えるので作っておいて正解だったとおもう。
そして18時。上手くできるのか緊張する私。時間が来ても、まだお客さんは現れなかった。でもオープンしたよ!とSNSに投稿したり、さちこさんと色々とお話していたおかげで緊張は和らいでいった。
そういえば。私は自分の重たいリュックサックから荷物を取り出す。それは、今日のために持ってきた本たちだった。
もしお客さんと話題が続かなくなってしまった…なんてことがあったときのために、最近読んだ本を数冊持ってきていたのだった。
それを、お客さんたちが自由に読むことができるようにカウンターの後ろにあるボックス席に並べた。さちこさんも本が好きなのだそうで、私の持ってきた本に興味を示してくれて、色々とおすすめをさせてもらった。
さちこさんは普段からお料理関連のお仕事をフリーでされているとのことだったので、まず写真の左から2番目の『私を空腹にしないほうがいい』という、くどうれいんさんが書かれた本をおすすめした。
いや、わたしからすすめた、というより、このタイトルにさちこさんが惹かれたようで、すごく笑ってくれていたので、くどうれいんさんが歌人であることや、どんな本なのかをざっくり話してみた、というのが正しい。
さちこさんも気に入ってくれたようで、こんなツイートをしてくれた。
私が勧めた本を、目の前にいる人が気に入ってくれるというのは、すごく嬉しいことだなぁ。なんてベタなことを考えながら、私はその他の本も意気揚々とおすすめしていた。
さちこさんは子ども食堂のお手伝いもしているということを聞いたので、同じく子ども食堂を運営しているおばあちゃんの素敵な言葉と笑顔、そして美味しそうなごはんの写真やレシピをおさめた『ちゃんと食べとる?』というエッセイ本もおすすめした。
さちこさんはその場でその本を読んでくれていたが、どうですか?と話しかけると優しい笑顔で涙目になっていた。
私もその本を読んだときは、心がじんわりと温かくなって涙でうるうるとしてしまったので、当時の私と同じような反応をするさちこさんを見て『ああ、やっぱりこの本は素晴らしい本なんだ、読めて良かったな』とじーんとしてしまった。
そうして和気あいあいと過ごすこと30分。最初のお客さんがやってきてくれた。
私の一日店長タイムの始まりだ。
つづく
次回は、お客さんたちとの交流について書いていきます〜