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コミュニティ時代の消費行動モデル「CoLoTASS(コロタス)」を提唱します

かつて、SNSの普及により消費者の購買における意思決定プロセスは劇的に変化しました。もはや企業からの一方的な情報発信だけでは消費者の心を動かすことは難しくなっています。さらに最近では、消費者は単なる個人としてではなく、コミュニティの一員として行動するようになってきました。

その結果、従来のAIDMAやAISASといった消費行動モデルでは捉えきれない、コミュニティを介した新たな購買プロセスが生まれています。そこで本記事では、この新しい時代の消費行動を表す「CoLoTASS(コロタス)」モデルを提唱します。

CoLoTASSは、コミュニティ内でのコミュニケーションから始まり、メンバー同士のロイヤリティ向上、他のメンバーの行動による購買の後押し、そして体験の共有と共感へと至る循環的なプロセスを表現しています。

なぜ今コミュニティが重要なのか?CoLoTASSモデルが示す6つのステージとは?そして、このモデルを活用してビジネスをどう変革できるのか?詳しく解説していきます。

マーケティングに携わる方はもちろん、コミュニティマネージャーの方、そして消費者心理に興味のある全ての方にとって、示唆に富む内容になっているかと思います。

本記事を読んでコミュニティ時代の新たな消費行動モデル「CoLoTASS」を知ることで、現代のマーケティングやコミュニティがどのように変化してきているのかを捉え直すキッカケになれば嬉しいです!それではいきましょう!




これまでの消費行動モデル

マーケティング業界では、数多くの消費行動モデルが提唱され、長年にわたり重要な役割を果たしてきました。これらのモデルは企業が消費者の意思決定プロセスを理解し、効果的なマーケティング戦略を立案するための指針となってきたのです。

代表的な消費行動モデルの一つに「AIDMA」があります。これは「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の頭文字を取ったもので、消費者が商品を認知してから購入に至るまでの心理的プロセスを表現しています。このモデルはマス広告が主流だった時代に特に有効とされ、多くの企業のマーケティング戦略の基礎となりました。

マス広告時代の消費行動モデル「AIDMA」

しかし、インターネットの普及に伴い消費者の情報収集方法や購買行動が大きく変化しました。この変化に対応して生まれたのが「AISAS」モデルです。「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Search(検索)」「Action(行動)」「Share(共有)」の流れを表現しており、特に「検索」と「共有」の要素が加わったことで、デジタル時代の消費行動をより適切に描写しています。

インターネット時代の消費行動モデル「AISAS」

さらに最近では、ソーシャルメディアの影響力の増大を反映した「ULSSAS」モデルも注目を集めています。これは「UGC(ユーザー生成コンテンツ)」「Like(いいね)」「Search1(ソーシャルメディア検索)」「Search2(ネット検索)」「Action(行動)」「Spread(拡散)」の各段階を表現しており、ソーシャルメディアを介した消費行動をより詳細に捉えています。

ソーシャルメディア時代の消費行動モデル「ULSSAS」

しかしながら、これらのモデルにも限界があります。最も顕著な点は、コミュニティの観点が欠けていることです。現代の消費者は、単に情報を受け取り、検索し、購入するだけの存在ではありません。彼らは様々なコミュニティに属し、そこでの相互作用が購買決定に大きな影響を与えています。

例えば、製品レビューを読むだけでなく、コミュニティ内で他のメンバーと交流したり、自身の経験を共有したりすることが日常的に行われています。また、ブランドコミュニティに所属することで、単なる消費者以上の存在になり、ブランドとの強い絆を形成することもあります。

これらの複雑な相互作用や感情的なつながりは、従来のモデルでは十分に説明することができません。コミュニティ内での信頼関係の構築、ロイヤリティの醸成、そして共感の広がりといった要素が、現代の消費行動において極めて重要な役割を果たしているのです。

したがって、新たな消費行動モデルには、このコミュニティの視点を組み込む必要があります。消費者を孤立した個人としてではなく、コミュニティの一員として捉えそのダイナミクスを理解することが、今後のマーケティング戦略の鍵となるでしょう。

次章では、これらの課題に対応する新たなモデル「CoLoTASS」を提案し、コミュニティ時代の消費行動をより適切に表現する方法を探っていきます。


消費行動モデル「CoLoTASS(コロタス)」

現代の消費行動は、従来のモデルでは捉えきれないほど複雑化しています。これまで提唱された消費行動モデルで説明できる部分も多いのですが、特にコミュニティの影響力が増大する中で、新たな消費行動モデルが必要とされています。そこで提案するのが「CoLoTASS(コロタス)」モデルです。このモデルは、コミュニティを中心とした消費者の行動プロセスを6つのステージで表現しています。

コミュニティ時代の消費行動モデル「CoLoTASS」
  • Co:Communication in Community
    →コミュニティ内でのコミュニケーション

  • Lo:Loyalty
    →メンバーのロイヤリティ向上

  • T:Trigger
    →他メンバーの熱量や言動による購買の後押し

  • A:Action
    →コミュニティ関連商材の購買行動

  • S:Share
    →コミュニティ内外での共有

  • S:Sympathy
    →共有された意見や感想への共感の発生

前提として、CoLoTASSという消費行動モデルは企業やブランドが何らかのコミュニティを運営していることを前提としています。そのため、コミュニティそのものをどうやって立ち上げ盛り上げるのか、という点についてはこのモデルのフォーカスからは外してあります。そちらに興味がある方はこの記事も含まれている Commune Community Lab というnoteマガジンの他の記事をぜひ読んでみてください!

CoLoTASSという消費行動モデルは「Co:Communication in Community」から始まります。消費者はコミュニティ内でのコミュニケーションを通じて、商品やサービスに関する情報を得たり、意見を交換したりします。この段階で、消費者は単なる情報の受け手ではなく、積極的な参加者となります。

次に「Lo:Loyalty」のステージに移ります。コミュニティ内での継続的な交流を通じて、メンバーはブランドやコミュニティ自体に対するロイヤリティを高めていきます。このロイヤリティは、単なる製品への愛着を超えた、より深い感情的つながりを意味します。

T:Trigger」は、他のメンバーの熱量や言動が購買の後押しとなる段階です。コミュニティ内の信頼できるメンバーの推奨や体験談が、購買の決定的なきっかけとなることが多々あります。これは、従来の広告よりも強力な影響力を持つ可能性があります。

A:Action」は実際の購買行動を示します。しかし、ここでの購買は単なる商品の入手ではありません。コミュニティに関連する商材を購入することで、メンバーはコミュニティへの帰属意識をさらに強めることにもなるのです。

購入後の「S:Share」は、体験をコミュニティ内外で共有する段階です。ロイヤリティの高まったコミュニティのなかでは特に、この共有行動はかつてないほど容易になっています。メンバーは自身の体験を共有することで他のコミュニティメンバーに貢献し、先述の「T:Trigger」としての影響を与え、同時に承認欲求も満たします。

最後の「S:Sympathy」は、共有された意見や感想への共感が生まれる段階です。この共感は、他のコミュニティメンバーを起点とした新たなコミュニケーションのきっかけとなり、サイクルが再び「Co:Communication in Community」から始まります。

CoLoTASSモデルの特徴は、この循環的なプロセスにあります。線形モデルとは異なり、各ステージが相互に影響し合い、継続的な消費行動のサイクルを形成します。このサイクルは時間が経つほどに強化されていくため、コミュニティを長期的に運営するメリットが見て取れます。

このモデルは、マーケターやコミュニティマネージャーに新たな視点を提供します。例えば、単に商品の宣伝に注力するのではなく、コミュニティ内のコミュニケーションを活性化させる施策が重要になるかもしれません。また、ロイヤリティを高めるための長期的な戦略や、共有を推奨する文化や施策の重要性も浮き彫りになります。

CoLoTASSモデルは、コミュニティを中心とした現代の消費行動をより適切に捉え、効果的なマーケティング戦略の立案に寄与する可能性を秘めています。このモデルを活用することで、より深い消費者理解と効果的なコミュニティ運営が実現できるでしょう。


おわりに

本記事では、コミュニティ時代における新たな消費行動モデル「CoLoTASS(コロタス)」を提唱しました。このモデルは、従来の線形的な消費行動モデルを超えて、コミュニティを中心とした循環的なプロセスを描き出しています。

CoLoTASSモデルの特徴は、コミュニティ内でのコミュニケーションから始まり、ロイヤリティの醸成、他メンバーからの影響、購買行動、体験の共有、そして共感の発生という6つのステージを通じて、消費行動を包括的に捉えようとしている点にあります。これにより、現代のデジタル社会におけるコミュニティの重要性と、そこでの相互作用が消費行動に与える影響を明確に示しています。

しかしながら、CoLoTASSはまだ提唱されたばかりのモデルです。理論的な枠組みとしては面白いものだと思いますが、実際のマーケティングやコミュニティ運営の現場でどれほどの有効性を持つのか、まだ検証の余地があります。このモデルが真に価値あるものとなるかどうかは、今後の実践と検証にかかっています。

そのため、このモデルを単なる理論として捉えるのではなく、実際のビジネスシーンでの適用を通じて、その有効性を検討していく必要があります。マーケターやコミュニティマネージャーの方々には、このモデルを自身の業務に当てはめ、その結果を共有していただくことで、モデルの改善や精緻化につながる可能性があります。

もしかしたら、CoLoTASSモデルの真の価値はそれが引き起こす議論や新たな視点にあるかもしれません。このモデルを出発点として、コミュニティを中心とした消費行動について、より深い洞察や新たな発見が生まれたら嬉しいですね。

コミュニティを中心とした消費行動の理解は、今後のビジネスにおいてますます重要になってくるでしょう。CoLoTASSモデルがその一助となり、より効果的なマーケティング戦略の立案や、豊かなコミュニティ体験の創出につながることを願っています。



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黒田悠介@ Commune Community Lab 所長
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