『現代短歌』2024年3月号
①「新人類は今」特集にエッセイ+10首で参加いたしました。
隠された川があるから踊るひと放たれていく爪の先から 川本千栄
〈「川本さんはまさに新人類って感じだね」と年上の同僚から言われたことがある(…)〉
②井辻朱美「ファンタジーと歌舞伎」
〈ファンタジーはいつのまにか想像から体験となっている。(…)物語は歌舞伎仕様に脱皮した。(…)そうなると、歌舞伎に縁がなかった若い観客も牽引されてくる。歌舞伎の持つ異様さ、荒唐無稽、誇張された舞踊やしぐさは、いまや新しい暴力的な様式であり、世界観であり、まさに神事(かみごと)のファンタジーなのだ。〉
このエッセイすごく面白かった。伝統で居るだけではだめで、時代の新しいエッセンスを取り入れることで新しい伝統に生まれ変わる。短歌にも共通することではないかと思った。
③あのころのバッグを今は子が提げてバブル二世つておやぢギャグかよ 藤野早苗 世代的に感慨深い一首。エッセイも良かった。私は地方で公務員、バブルに関係無いと思っていたが、藤野のエッセイで目が覚めた感じ。時代に関わりが無いなんて簡単には言えないのだ。
④林和清〈いま思うと「新人類」だったわたしたちは、そのあと「旧人類」になったわけではなく、「新人類」のまま年を取り老人になったのだ、ということではないだろうか。〉
これもよく分かる。そしてどんな他の「わたしたち」もトコロテン式に上の世代になっていく。
⑤栗木京子評論「彼らを束ねないで」
〈果敢な表記で話題を呼んだ二人(加藤治郎・荻原裕幸)は、次第に表記の斬新さを視覚的なものから聴覚的なものへとシフトさせてゆく。すなわちオノマトペ(音の響き)へと力点が移動する。〉
とてもいい評論。ライトバース、ニューウェーブについて、技法的なものも、時代の中で果たした役割も明確に論じている。とてもフェアな視点で書かれていることに感銘を受けた。
一読をお勧めします。
2024.3.17. Twitterより編集再掲