『日本語文法演習 時間を表す表現 -テンス・アスペクト-』庵功雄・清水佳子
現代日本語の時間を表す表現を日本語非ネイティブの人に教えるための本。実は、結構無意識に使っているけれど、時間の表現は複雑だということが分かった。古語で言えば「き・けり・つ・ぬ・たり・り」などが現代語では「た」の一語なので、その一語で色々な時制を表さなければならない。そこまでは分かっていたが、この本ではさらに「する」「した」の違い、「している」「していた」の違い、「している」の用法(進行中、結果残存、思考、繰り返し、経験・記録、完了、反事実)について、また、他の微妙な表現の違いについて述べられている。とにかく「している」の多様さには驚いた。そんな複雑な思考をしながら自分は話していたのか、と思うばかりだ。しかも、問題を解いてみると、ネイティブのくせに結構間違うのが嫌。時間が経って忘れた頃にまた解いてみたい。
以下は自分のためのメモである。(要約)
〈大部分の動詞の「する」の形は未来を表す。現在を表すには「している」の形。
存在、状態、近く、可能に関わる動詞は「する」の形で現在を表す。「している」の形は無い。〉P4
「する」は未来、というのが目からウロコ。存在、状態の動詞は現在進行形が無いというのは英文法だが、英語の動詞の方が見分けやすい。日本語はに身に沁みすぎているからだろう。
〈「する」には出来事が完了していないことを表す用法がある。「する」が普通未来を表すのもそれが終結していないことであるためである。
「する」には属性やくり返しを表す用法もある。この用法は「している」にもあるが「している」の方が一時的というニュアンスが強い。〉P5
英文法でも一番難しいのは「現在形」。ほとんどの英語教師が、日本語文法の知識が不十分なまま英文法を教えるので、どこか説明が上手くいかないのだと思う。
〈「~と思う」「~と考える」の主語は1人称である。
「~と思っている」「~と考えている」の主語は1人称3人称のどちらも可能だが、「~」の部分に意志を表す形(「~(よ)う」)や願望(「~したい」)を表す形が来るときは、文中に描かれている主語の人物になる。〉P36
これも無意識に使い分けているが、重要な論点だ。特に短歌の場合は主語を書かないことが多いから、より事態は複雑だ。
〈この橋は20年前から壊れている。(結果残存)→今も壊れている。
この橋は20年前に壊れている。(経験・記録)→今は壊れていない。〉P43
経験・記録と進行中は違うし、経験・記録と結果残存も違う。これも無意識に使い分けている。
〈時間があれば、その映画を見る(つもりだ)。(通常の条件)
時間があれば、その映画を見ている。(現在の反事実)〉P45
古典語は「あらば」(未然形)と「あれば」(已然形)で使い分けるところが、現代語では「見る」と「見ている」で使い分けるということか。
〈(「~ところだ」の)「ところ」のように、具体的な意味を持たず、文法的な役割を果たすだけになっている名詞を形式名詞と言います。形式名詞には、「ところ」の他に「の、こと、はず、わけ、よう」などがあります。〉P74
これらも頻出。「の」が「ん」になるとか言われれば全部分かるのに、言われてないことが多過ぎ。小学校から日本語文法を習うべきだろう。
スリーエーネットワーク 2003.2. 定価:本体1300円+税