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『花汲める』vol.1

眩さが遠くを見する食卓に子は時にして敢えて幼く 後藤英治 下句に惹かれた。未来がはるかに明るく見えるような食卓。子は自分がその食卓の中心であることを知っているからか敢えて幼く振る舞って見せる。そうすることで、ますます遠くの景色や時間が広がるのだ。

遠浅の言葉の海を沈むにはひとりで歩いて行かなくてはね 仲内ひより 浅い言葉がどこまでも続いていて深い思惟に至れない。言葉の海に溺れたい気持ちがあるのだが、会話ではなく一人の思考で、深めて沈み込みたい。歌意はこう取ったが、視覚的な像も強く結ぶ歌だ。

おもうことぽつりぱつりと地にあった沙羅の花だときみが云うまで 江戸雪 自分の思考がぽつぽつと地面に落ちていた。見えないはずのものが見えている。あれは私の思いだ、と眺めていたが、沙羅の花だと君に言われた。花のように落ちている心。とても不思議な感覚。

2023.11.17.~18. Twitterより編集再掲

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